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泣きそうです!最高でした… 儚いな〜って…わたしあまりわかりませんけど、なんかすごかったです! これからも頑張ってください!
しるこさんお誕生日おめでとうございます!
《📦》
夢を見ている。
目の前にいるのは兄さんみたいな人。
ナイフを持った彼が僕に近づき、言う。
「一緒に死のう…?」
「っ……!!!」
何も言えない僕の胸にナイフの柄を押し付けられる。
「刺して…お願い。」
そう言いつつ彼はもう一つナイフを出して僕に刃を向ける。
「……」
「ねぇ刺して。」
刺す理由が今の僕にはわからない。
「ねぇ!!!なんで刺してくれないの?!」
理由もないのに殺すなんてできっこない。
「…じゃあもういいよ。」
目の前で血が吹き飛ぶ。
彼が自分の腹を刺した。
「っ…!!!ははははっ…。」
僕の顔を見て笑い、そしてふと笑いが消える。
「ごめん…ね。……たろ、」
腹から血を流しながら勢いよく僕に向かってナイフを突く。
「………!!!」
________________
《📦》
体に衝撃が走り目を覚ます。
「痛っ……」
ベッドから転がり落ちていた。
心臓がバクバクいっている。
ひんやりした床が顔を冷やす。
「はこたろー大丈夫?ごはんできてるよ!」
兄さんの声がドア越しに聞こえる。
「うん大丈夫。今行く。」
ドアノブを回して引くと兄さんが目の前にいた。
既視感、というよりデジャブのような…。
兄さんとの距離感。身長差。匂い。
夢と同じ。
不意に怖くなって後退りした。
「はこ、たろ?」
目の前の兄さんは暖かい顔をしている。
いつもなら安心できる顔。
でも、なぜか怖い。
「どしたの。」
「…ごめん。ちょっと後で…、」
ドアを閉めようとする。
「ちょっと待って…!!」
兄さんが僕の手を掴む。
「具合悪いの?なんかあったら言ってよね?」
怖い。
「なんもないから…」
「じゃあなんでっ?」
「兄さんには関係な……」
強く抱きしめられる。
「顔、すごい真っ青。足も震えてる。
なにもないとは思えない。」
「…………」
「嫌じゃ無かったら。いつでも言える時に話しにおいで。」
くしゃっと僕の頭を撫でる。
「今日はゆっくり休みなね。」
「…うん。」
暖かい体温が離れドアがゆっくり閉まる。
急に足の力が抜けて床にべたっと座る。
怖かった。殺されるはずないのに。
どうしても夢と重ねてしまう。
きっと兄さんを傷つけただろうな。
今日は兄さんに会える気がしない。
部屋にいよう。
《🐶》
どうしよう。あれから何時間か経つのに
はこたろーが部屋から出てこない。
きっとご飯食べてないだろうな。
具合悪いのかな、やっぱり。
お節介かもしれないけど、もう一回声かけて
みようかな…。
「はこたろー?ドア前にご飯置いておくから食べたくなったら部屋で食べていいからね。」
返事がない。仕方ないか。帰ろう。
「………うん。」
返事が来た。何か言ってくれないか待つ。
「……………………………」
なにも無かった。
「俺部屋にいるからね。」
「………………うん。」
ご飯を置いてから部屋に戻る。
とりあえずはこたろーの声が聴けて安心した。
あとははこたろーが自分のタイミングで俺に
話してくれれば嬉しいんだけど。
ゆっくり待とう。
《📦》
兄さんが来てくれた。でも部屋から出たら
きっと兄さんをまた傷つける。
お昼近くになってお腹は減っていたけど
兄さんを傷つけまいと部屋に篭っていた。
兄さんが部屋に戻ったのを確認してドアを
少し開けた。
少食な僕を思ってご飯が小盛りで盛ってある。
「兄さん…ありがとう。」
こそっと呟いてご飯をもらった。
本人には言ったことなんて一度もないけど、
僕の兄はいい兄だと思ってる。
言わないけど。
午後は動画の編集をしていた。
兄さんたちの楽しそうな声を聞きながら無言で
テロップを入れる。
夜が怖い。頭はそれしか考えられない。
寝たくない。またあの夢を見たらどうしよう。
毎晩寝るたび繰り返されたら。
僕は兄さんにずっと顔向けできずにこの部屋に
ずっと引き篭もりだ。
そうだ。だったら寝なければいいんだ。
夢も見ずに済む。今の僕にはそれしかない。
パソコンの電源を落としてため息をつく。
長時間パソコンと向き合っていたせいか
目が痛い。机にうつ伏せて目を閉じる。
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「……せばいいんでしょ。」
「そうだよ。」
「それが………の本望なら、いいよ」
「うん。ありがとう。」
またナイフを握っていた。
捨てようと思っても体が動かない。
「でも、怖い。」
「大丈夫。俺も刺してあげるから。」
「ほんと、に?」
「うん。一緒に行こう。」
「………と一緒に、。」
手の震えがない。自分は迷ってない。
目を瞑ってナイフを前に突き出す。
目の前の人が明るい声で
「ありがとう」
と言う。
目を開けた直後、その人は包丁を手に取り
僕に向ける。
また、殺されるんだ。
全身がぞわぞわする感覚が蘇る。
「どうか、一緒に……。」
思ってもいない言葉が口から出る。
あたりが急に薄暗くなって誰かが後ろから
僕の肩に手を置く。
驚いて振り返ると、ーーーーーーーーーーーー
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《📦》
「わああああああああっ!!!!!」
椅子から転げ落ちた。
見上げると毛布を持った兄さんがびっくりして
こっちを見ていた。
おそらく寝ていた僕にかけようとしてくれていたのだろう。
「はぁっ…はぁっ…、、」
驚いて呼吸が追いつかない。
「はっ…はこたろー、??」
正直、背骨がすごく痛い。
「兄、さん…」
「………大丈夫?」
兄さんの優しさに涙が溢れた。
「っ…!!!ぅぅっ…、」
「へっ!?はこたろー?!ど、どした!」
兄さんが僕の背中に毛布をかけて抱きしめる。
「なんか嫌な夢でも見てたの?」
「……!!」
「今日の朝もそれで?」
こくっと頷く。
「よかったら…落ち着いたら話してくれない?
ご飯までまだ時間あるから。」
「うん。」
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「そうだったんだ。辛かったでしょ。」
「うんっ、、」
涙でぐしょぐしょになって兄さんが見えない。
「大丈夫だよ。はこたろーのことずーっと大事にするから。命を無駄にしたりしないよ。」
「………」
「はこたろーは大事だからね。
命に変えても守る。」
それじゃあダメだ。
「駄目っ…一緒に、一緒に生きるっ!!!」
兄さんにしがみついて叫ぶ。
「わかったよ。そうだね。
一緒に生きよう。約束する。」
言葉はもう出ない。
必死に頷いて咽び泣くことしかできなかった。
そんな僕でも兄さんは優しく背中を
撫でてくれた。
兄さんは約束してくれた。
でも人生はどう転がるかなんてわからない。
このまま実況者として死ぬことは無いだろう。
まだわからないけど。どちらにせよ、
仮に約束を兄さんが果たしてくれた時、
僕と兄さんは一緒にいたことになる。
どちらかが先に死ねば、お互い最後まで一緒に生きることは不可能ってことだ。
一緒に死ぬには、
夢と同じことをする必要があって…
まぁ、こんな無責任で子供じみた約束。
2人ともすぐに忘れてしまうだろうな。