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夏休み明けの教室には、
特別試験の結果に対するさまざまな感情が渦巻いていた。
Dクラスは大きな成果を得たわけではなかった。
それでも、無人島での経験はクラス全体に確かな変化をもたらしていた。
堀北さんは以前よりも少しだけ周囲を頼るようになり、
桔梗ちゃんは相変わらず明るくクラスを和ませている。
そしてひなは、
あの日、甲板で交わした綾小路くんの言葉を胸に、
これまでより少しだけ自信を持って学校生活を送れるようになっていた。
昼休み。
ひなが一人で廊下を歩いていると、
前方からゆっくりと歩いてくる少女の姿が見えた。
小柄な体。
透き通るような白い髪。
気品に満ちた佇まい。
思わず、ひなは足を止める。
相手もまた、驚いたように目を見開いていた。
「……これは驚きですわ」
柔らかな声でそう告げたのは、
Aクラスのリーダー、坂柳有栖だった。
「あなた……私にそっくりですわね」
ひなは思わず自分の髪に触れた。
確かに、
鏡を見ているような不思議な感覚だった。
ただし、坂柳さんの方がどこか気高く、
揺るぎない自信をまとっている。
「ひなさん、とおっしゃいましたわね」
「ど、どうして名前を……?」
坂柳さんは小さく微笑む。
「気になる方の情報を調べるのは、当然のことですわ」
その言葉に、ひなの胸は少しだけどきりとした。
だが坂柳さんの瞳には、
敵意というより純粋な興味が宿っていた。
「あなたはとても興味深い存在です」
「私が……?」
「ええ。見た目だけでなく、綾小路清隆くんの近くにいるという点でも」
ひなの頬が熱くなる。
その瞬間。
「何をしている」
背後から聞こえた低い声。
振り向くと、
綾小路くんが立っていた。
坂柳さんはくすりと笑う。
「お迎えですのね」
「たまたまだ」
「ふふ。そういうことにしておきましょう」
坂柳さんは優雅に一礼すると、
去り際にひなへ向かって静かに告げた。
「あなたともっとお話ししてみたいですわ」
坂柳さんが去ったあと、
ひなはまだ少し混乱していた。
「びっくりした……」
「ああ」
綾小路くんは短く答えたあと、
ひなの白い髪をそっと見つめる。
「確かに、よく似ている」
「そうかな?」
「だが」
彼は少しだけ間を置いた。
「俺にとって特別なのは、お前だけだ」
一瞬、時間が止まったように感じた。
「……っ」
顔が一気に熱くなる。
綾小路くんはいつもの無表情のまま、
まるで当たり前のことを口にしただけのように前を向く。
その背中を見つめながら、
ひなの胸は幸せでいっぱいになっていた。
自分に似た少女と出会っても、
綾小路くんにとって大切なのは自分だと言ってくれた。
その事実が、
何よりも嬉しかった。
新たな出会いと、
変わらない想い。
ひなの青春は、
これからさらに大きく動き始めようとしていた。