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君が逃げる理由を、僕が壊す。

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君が逃げる理由を、僕が壊す。

10 - 第10話 支配という名の幸福

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2025年06月15日

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「はい……今日も、大学行ってきます……悠真の、言う通りに」

玄関を出る瞬間まで、晴人はスマホに向かって小さく呟いた。

部屋には誰もいない。それでも、悠真の監視の気配は常に肌の下に染み込んでいる。


家の中のすべてにはカメラ。GPSは肌に貼り付けたパッチ型の装置で常時確認。

でもそれより、晴人が一番恐れているのは――


悠真に「嫌われること」だった。



◆ 大学という“表面の自由”


晴人は毎日大学に通っている。

けれど、目も口も、もう自由ではない。


「誰とも目を合わせるな」

「女と話すときは録音を送れ」

「昼は下着をつけない。忘れたら、指にマジックで“×”と書け」


悠真から与えられた「日常ルール」は、晴人にとってすでに空気のような存在だった。

誰かと話すときは、悠真の言葉が脳裏に響く。


(それ以上話すな。笑うな。うなずくな)


指示はなくても、身体が勝手に反応する。

授業中、ふとスマホが震えた。


【命令:トイレへ行け。触って確かめろ。俺の言葉だけで、どれだけ濡れてるか】


言われなくても、下着はつけていない。

席を立ち、顔を伏せてトイレへ駆け込む。



◆ 服従の中毒


個室の中、扉を閉め、指を這わせる。

びくり、と腰が跳ねた。


「……あっ、ん……っ」


言葉ひとつでここまで。

悠真の声が、命令が、もう脳の奥にまで根を張っている。


(俺……どうしてこんな……でも……幸せなんだ)


スマホに送られた音声メッセージが届く。


『いい子だね、晴人。従順なだけじゃなくて、ちゃんと欲しがってる顔になった』


音を聞くだけで、心臓が痙攣するほど脈打つ。

晴人は、口元を押さえて震えながら呟いた。


「悠真の声……好き……好き……全部、俺の中にあるの……」



◆ 他人との断絶


講義が終わり、ゼミ仲間のひとりが声をかけてきた。


「久しぶりに、カフェでも行かない? 最近いつも一人だよね」


「……あ、ごめん。ちょっと、帰らなきゃ」


言った瞬間、晴人は自分の言葉の“調子”に不安を覚える。

帰宅後、悠真に送ったボイス報告で、案の定言われた。


『断る声が柔らかすぎた。興味があるように聞こえた。』


『どうすればよかった? 言ってみて。』


「……いきません、って強く……もっと無愛想に……冷たく……」


『それでいい。君には俺だけでいい。』


報告のたびに、晴人の中で「判断する力」が消えていく。

何を着て、何を食べ、どう返事すればいいか。全部悠真に聞かないと動けない。



◆ 夜の“報酬”


帰宅後の夜。

膝をつき、リードをつけられてベッドサイドで待機する晴人。


「……おかえりなさい、悠真」


「ただいま、僕の犬。今日もよくできたね」


優しく微笑まれた瞬間、涙が出そうになる。


「俺……今日、全部頑張った。目も合わせなかったし、カフェも断ったし、昼は……」


「うん、分かってるよ。全部監視してた」


にこやかなその声に、全身が痺れるように反応する。

悠真の手が頬を撫でただけで、晴人の股間はもう熱くなっていた。


「ねえ、晴人。君が自分で判断したこと、今週あった?」


「……ない。全部……悠真に、聞いた。そうじゃないと不安になるの」


「じゃあ、これも命令だよ。口を開けて、“僕のもの”って言って」


「……僕のもの、悠真のもの。俺、全部、悠真の犬……モノ……ペット……」


「よく言えました。……可愛いね、晴人」



◆ 快楽と支配の境界線が消えていく


服を脱がされ、ベッドに縛られながら、晴人は何も考えていない。

ただ、快楽を得ているのではない。

悦ばせていることが快楽になっているのだ。


「お前の心も、体も、全部俺の言葉で動く。それが嬉しい?」


「嬉しい……命令されるのが一番気持ちいい……俺、もう、悠真のしか知らない……」


「よかったね。これが“幸せ”なんだよ、晴人」


深く、深く、貫かれるたびに、晴人は微笑む。


自分で考えなくていい。自分で決めなくていい。

悠真に支配されるだけで、生きていける。


それが、晴人にとっての――真実の愛になっていた。


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