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rdgtでケーキバースです。処女作(大嘘)なので温かい目で見てくださると嬉しいです。
※nmmnなので流出厳禁!
※ご本人様とは何の関係もありません。
※コメントしてくださる方は伏せ字徹底お願いします(伏せ字していないコメントは消させていただきます。ご了承ください)。
※微量のグロ描写注意!
今回は「ケーキ」と「フォーク」が当たり前に存在する世界です。
ケーキ→血や体液、肉がとても甘くなる。先天性だったり後天性だったりする。
フォーク→ケーキを食べることでしか味を感じなくなる。こちらも先天性だったり後天性だったりする。
―――――――――
ぐちつぼは目の前の物から目を逸らした。
目の前に据えられた食物を横目で見て、また目をそらす。前は美味しいと口に運ぶことのできたそれが、今は精巧な粘土細工にしか見えない。
一言で言えば、味がしないのであった。
意を決して震える手で箸を持ち上げ、そうっと一欠片食材を掴み気合で口に突っ込んで咀嚼する。やはり味のしないガムを再び噛んでいるような、そんな味だった。歯ざわりや食感は残っているがだけに、更に気持ち悪さが増す。
「…オ゙ェ゙ッ」
ぐるりと胃がひっくり返り、どうにかして腹に収めたものが堰を切って溢れ出す。ベチャベチャと耳をふさぎたくなる様な音が狭い部屋に響き、落ちた吐瀉物には涙と唾液でベタベタになった自分の顔が映った。
「…はは、マジっぽいな」
ある初夏の昼。
フォークであると理解した瞬間であった。
―――――――――
フォークであるとわかってしまった以上、もういつも通りに過ごすことはできない。
フォークはケーキを食べる。そのせいで殺人事件が起きることもある。前までは怖いなぁ、くらいでとどまっていたアレの加害者になる可能性があるわけだ。
自分の手が血まみれになっていて、その目の前に人の死体があったら…なんて想像するだけでも吐き気が込み上げる。外に出ない。マスクをする。人混みを避ける。それくらいしかできることはなかった。
よりにもよって食材が切れたその日、それは起きた。
味のしないそれを身体に叩き込むのは嫌だった。だが、空腹のままでいてケーキを襲ってしまうのも嫌だ。形式的に口に運び、大量の水で流し込む。それだけでも多少は満たされるが、やはり深層的なところで欲求が溜まり、それから目を逸らす。そんな毎日だった。
のろのろと道を歩きコンビニへたどり着く。ケーキに合わないことを願いながら買い物を済ませ、人気の少ない道を選んで歩いていると、ふっと甘い香りがした。間違いない、ケーキの匂いだ。
察知してしまったがゆえに本能的に溢れてくるよだれをどうにかして飲み込み、小走りにその場から逃げ出そうとしたその時。
後ろから声がかかった。
「あれ?ぐちつぼじゃん」
聞き覚えのある緩慢な声。振り返ると、見慣れた青色が立っていた。
「…らっだぁ?」
「どうしたのこんなところで。人気もないところなのに」
怪訝そうな顔でこちらを見るらっだぁ。だが、今注目すべきはそこではない。甘い匂いがするのだ。らっだぁから。
ケーキというのは多くは後天性であり、フォークに捕食されて初めて発覚することが多いらしい。つまり今、甘い匂いを漂わせながらこちらへ近づいてくるらっだぁは格好の獲物でしかないわけで。
「なんでもない…けど」
「ふーん」
ノロノロと後退りするぐちつぼに違和感を覚えたのか、訝しげな目でらっだぁは言葉を発した。ぐちつぼの背に冷や汗が伝う。 まずい、非常にまずい。
匂いに耐えきれなくなったのか、マスクで隠した口元から少し液体が垂れる。瞳孔が開いているのが嫌でもわかる。
「ちょ、ぐちつぼ大丈夫?なんか顔色悪いよ?」
近づいてきてそうっと手のひらをおでこにあててくるらっだぁ。するりとずれ落ちたマフラーから覗く白い首筋から目が離せなくなる。
もしここに歯を突き立てたらどうなるだろう。赤い血が流れ出るのだろうか。それからはどんな味がするのだろうか。魅せられたように深く深く息を吸うと、唾液を誘出させるその匂いがたまらない。どうにか残っている理性と強靭な食欲が争い始める。
「…ぐちつぼ?」
俯くぐちつぼをらっだぁが覗き込む。竜胆色の瞳に瞳孔の開ききった、顔色の悪い自分が映る。飴細工を眺めているようだ。
「ぉいし、そぅ…?」
「え?」
腕を乱暴に掴む。痛そうに顔を歪めるらっだぁを無視してマフラーを引き剥がすと、綺麗な砂糖細工が見えた。
ギリギリで繋ぎ止めていた理性の切れる音がした。
大口を開けて、ぐちつぼは目の前のご馳走に齧り付いた。
―――――――――
遠くで聞こえるクラクションが終了の鐘のようだった。
ぐちつぼはぺろりと口の端を舐め、身体を起こす。久しぶりに感じる味はやはり甘美だった。目の前の食い散らかされたケーキからはジャムが流れ出ていた。たくさんの歯型が付いてあちこちに飛び散っているジャムがどれほど食い散らかしたのかがわかる。飢えたライオンが目の前の肉を食べ尽くしたような、満たされた感覚でぐちつぼは喉奥に残った物を飲み込んだ。
ふと、横に落っこちているレジ袋に目が行った。中からサンドイッチやおにぎりがこぼれ落ちている。
「…らっだぁ?」
髪から垂れた液体がぽたりと落ち、赤い染みを作り出した。今自分の食べ尽くしたものは何なのか理解すると同時に気持ち悪さが込み上げる。一向に現れない吐き気が、目の前に倒れる人物がどれほど美味しいケーキだったのかを示していた。
たらりと垂れた涎がまた食材を食べることを促してくる。
虚ろな瞳がぐちつぼを睨みつけている気がした。
―――――――――
ぐちつぼはらっだぁを家に運び込むことにした。
幸いなことにらっだぁは生きていた。気絶したらしい。
気絶して、目が覚めたら自分を食べた人物の家に運び込まれていた、なんて恐怖もいいところだが気の動転していたぐちつぼにはこれくらいの処置しか思いつかなかった。運び込んでから「あれ、不味くないかこれ?」となったが、血まみれの男が同じく血まみれの男を運び込んで店やホテルに来るなんて店員からすれば恐怖でしか無いから大丈夫だ、と問答をしながらぐるぐると部屋の中を歩く。さながら檻に閉じ込められた熊のようだ。
ベットには包帯や絆創膏の貼られたらっだぁが寝ている。生きているのか死んでいるのか怪しいが、幸いなことに呼吸音が聞こえるのが救いだ。自分の噛み跡やらっだぁの涙の後が目に入る度に心が痛む。自分でやっておきながら一体何をしているのだろう。
「生きてるよな、これ…」
「生きてるが?」
風が発生しそうなほどの速度でぐちつぼは振り向いた。瞬間風速50m、ニュースに取り上げられそうなほどだ。
ひどくやつれたらっだぁの顔がこちらを見つめていた。貧血なのか顔色は悪く、眠たいのか青い目が細められている。ぐちつぼはそばに駆け寄り、そっと顔を見上げた。
「らっだぁ」
「なに?」
いつもと変わらない声や表情。それがぐちつぼからすれば恐ろしかった。自分を食い散らかした捕食者を、怯えるわけでもなく突き放すわけでもなく慈愛の目で見つめている。
「あの、その…ご、めん。許さなくてもいいから」
許さなくてもいい、というのはぐちつぼからの誠心誠意の謝罪だった。今すぐ死んでくれと言われれば多分死ねるくらいには追い詰められている。涙目でごめん、と繰り返すぐちつぼの頭に手が置かれた。
「…?」
「いいよ、大丈夫だから。もう謝らないで」
らっだぁは信じられないほど穏やかな顔だった。もしその気になれば食べ尽くされてしまうかもしれないというのに、目の前の者に命を握られているというのに、だ。
「なんで」
「ん?」
「なんで、俺、食べたのに」
ぐちつぼはあかさらまに挙動不審になりながららっだぁを見上げた。なにかやらかした子供が怒られることに恐怖しているような、そんな表情だ。
「俺はさ、」
「?」
「好きな人に食べられるなら本望だから」
そう言うと、らっだぁはぐちつぼを抱きしめた。
らっだぁは幼くして捕食される側だった。何度命に関わる事があったのかすらわからない。食べられることを待つしかできないケーキは、食べられても良いと思える人に食べてもらうことを望んでいた。
今相手が何を言ったか理解し、実質的な告白に顔を赤くしながら、ぐちつぼは抱き返す。
「…俺、も?好き、です」
らっだぁは驚いた顔をしてから、ふふ、と笑った。
―――――――――
正直バッドエンドにするかどうかで小一時間悩みました。食べられるエンドも美しいんだッ…この手が…この手(ハピエン厨)が勝手にッ…
展開が駆け足すぎるのでもっと長く書けるように頑張りたいです。
ケーキバース、素晴らしいのですが物によってはとんでもグロとかバットエンドが転がりまくっているので地雷の方はご注意を…
リクエストくれると喜びます。