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そんな事を考えている内に、周囲に蔓延り捲っていたモンスター達は姿を消し去っていた。
殆どは百を超える御一行に喰われてしまい、残った数少ない生存者、いや生存モンスもどこかへ逃げ去ってしまっていたようだ。
当初、百から二百と予想していたズィナミの想像を越えて、万を数えるほどウジャウジャ居た魔物がすっかり消え去ったのである、奇跡、そう呼んでも全然差し支えない事だろう。
通常、魔物が消えれば彼等に由来して立ち込めていた魔力、生命力は瞬時に霧散する。
魂が地上でブラフマンに再構成されるか、アートマンとして依り代を得るまでヘルヘイムで待機するかのどちらかなので、これはあらゆる命の共通項、謂わば不文律である。
だと言うのに、多くのモンスターが絶命したにも拘らず、この場の暴力的な魔力は消失しては居なかった。
アスタロトが展開した『反射』の効果は魔力に対しても有効な様で、レイブは勿論、整列を強制されたままのメンバーも特段の影響を受けては居ない。
キャス・パリーグとカゲトに関して言えば寧ろ痩せ続けているようにも見える。
反してレイブの前に立つアスタロトは体が薄っすらと透け始めている。
無表情のまま自分の両手に視線を落とした彼は、自ら張った結界を変形させて自身を『反射』の効果外に置いた様で、その瞬間に透けていた全身は元の濃さを取り戻す。
アスタロトは、周囲の魔力を取り込むように大きく深呼吸をした後、レイブに向けて言う。
『魔力が濃くなったとは言え、やはり地上で顕現し続ける事は難しいようだ』
「は、はあ」
『時間が無い故本題だ、レイブ、お前達も気が付いているかも知れんが、このままでは遠からず人間は絶滅してしまうだろう』
そんな予想はこの時代に生きる全てのニンゲンがしていただろうが、はっきりと宣言されればやはり驚いてしまうのは仕方ないだろう。
レイブは表情を引き攣らせながら聞き返す。
「そうなんですか…… 神様、どうにか助からないんでしょうか?」
アスタロトは無表情のまま僅かに首を捻りながら答える。
『ふむ、モンスターや魔力から逃げ続け、魔獣の血と竜の鱗に頼り、魔術師の技術や無辜の魔力に依って生き延びる…… その手段は失われつつあるのだ、お前自身とうに気が付いているのではないか?』
レイブは真剣な表情をやや沈痛な物に変えて言う。
「……はい、俺やペトラ、ギレスラ、それにラマスや弟子たちに起こった変化、ですよね?」
『その通りだ、魔術師の中にはお前達同様、無辜の魔力を失った者が増え始めている…… 今この瞬間にも人類は生き残る術を喪失し始めているのだよ』
「………………ぐすっ!」
涙ぐむレイブに対して、アスタロトは表情を一変させて、再びニヒルな笑みを浮かべながら言葉を続ける。
『とは言え、なに悲観するばかりでも無いぞ、お前達に起きた変化は悪い事ではない、決してな! お前達スリーマンセルにはこの魔神アスタロトが、他の者達の中にも我程ではないが強力な悪魔がその身を宿しつつあるのだからな』
「え、神様と同じ悪魔が? ど、どう言う事ですか?」