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放課後のチャイムは、やけに静かに響いた。
🍍「……やっと終わった」
椅子に深くもたれかかって、俺は小さく息を吐いた。
初日なのに、情報量が多すぎる。
👑「なっちゃん、今日どうする?」
みことが鞄を持ちながら振り返る。
🍍「……帰る」
正直、今日は人と話す気力がもう残ってない。
楽しかったはずなのに、頭が疲れてる。
🌸「俺も帰ろっかな〜」
らんが伸びをしながら言う。
🍍「じゃあ一緒に――」
そこまで言いかけた時。
📢「なつ」
低くて落ち着いた声が、後ろから聞こえた。
……嫌な予感がした。
ゆっくり振り返ると、
そこにいたのは―――やっぱり、いるまだった。
教室に残っていたのは、俺と、いるまだけ。
らんとみことは先に出ていってしまっていた。
気づかなかった。完全に。
🍍(あいつら置いてきやがって)
🍍「……なに?」
声が、少し硬くなる。
📢「B組の担任に呼ばれててさ。今終わった」
🍍「ふーん」
それだけ言って、鞄を持ち直す。
なのに―――
なぜか、足が止まった。
📢「今日さ」
いるまが続ける。
📢「ちょっと話さない?」
🍍(……なんで)
断る理由はある。
でも、断る勇気がない。
🍍「……少しだけ」
そう言うと、
いるまは安心したように、ほんの一瞬だけ目を細めた。
それが、妙に胸に引っかかった。
⸻
放課後の教室は、昼とは別世界だった。
夕方の光が窓から差し込んで、
机と椅子の影が長く伸びている。
教室には、俺といるまの二人だけ。
🍍(気まず……)
でも、静かすぎて、
心臓の音まで聞こえそうだった。
📢「今日、疲れたでしょ」
いるまが言った。
🍍「……まあちょっと」
📢「人多いの、得意じゃなさそう」
🍍「……勝手に決めつけないで」
ちょっと拗ねた言い方になってしまう。
すると、いるまは笑った。
📢「ごめん笑でも、当たってるじゃん」
🍍「……」
何も言えなくなる。
📢「なつってさ」
いるまは俺の机に軽く腰掛けて、
視線を合わせてくる。
📢「表情、分かりやすいよ」
🍍「……は?」
📢「すぐ顔に出る」
🍍「出てない!」
📢「出てるw」
即答された。
📢「かわ――」
🍍「言うな!///」
食い気味に遮ると、
いるまは肩を揺らして笑った。
🍍(なんなんだ、この人……)
からかってるのに、
嫌じゃないのが一番困る。
⸻
しばらく、他愛もない話をした。
中学の話。
好きな食べ物。
アニメの話。
📢「ホラー苦手なんだ」
🍍「ほんとに無理。絶対無理」
📢「俺は割と好き」
🍍「……最悪w」
そう言うと、
いるまはわざと俺の方に顔を近づけた。
📢「じゃあ、守ってやるよ?」
🍍「……っ!」
一瞬、呼吸を忘れた。
📢「冗談www」
すぐに距離を戻す。
でも―――
その一瞬が、やけに心に残った。
🍍(やめて……)
これ以上、近づかないでほしい。
なのに。
📢「なつ」
急に、真剣な声になる。
📢「俺さ」
胸が、ぎゅっと縮まる。
🍍「……?」
📢「お前と話せてよかった」
🍍「……それだけ?」
思わず聞いてしまった。
📢「それだけ、って?」
🍍「……いや、なんでもない」
しまった、と思った。
でも、いるまは少しだけ黙ってから、
ゆっくり口を開いた。
📢「……なつと、仲良くなりたい」
その言葉は、
冗談でも、軽口でもなかった。
📢「俺、人に踏み込むの、あんまり得意じゃないんだけど」
視線を逸らしながら、そう言う。
📢「なつには……なんか、話しかけたくなった」
🍍(なに、それ)
心臓が、うるさくなる。
🍍「……らん、いるじゃん」
思わず、口から出た。
📢「らん?」
🍍「……仲、良さそうだし」
その瞬間。
いるまの表情が、少しだけ曇った。
📢「……そう見える?」
🍍「見える」
らんは誰にでもくっつく。
いるまにも、きっとそうだ。
📢「俺は――」
言いかけて、
いるまは言葉を飲み込んだ。
📢「……いや、なんでもない」
その沈黙が、逆に不安を煽る。
🍍(やっぱり……)
🍍(いるまは、らんが好きなんだ)
そう思った瞬間、
胸の奥が、ちくっと痛んだ。
⸻
帰り際。
昇降口まで一緒に歩く。
距離は、昼よりも近いのに、
気持ちは、どこか遠くなった気がした。
📢「また、明日」
いるまが言う。
🍍「……うん」
靴を履き替えながら、
いるまがふと立ち止まった。
📢「なつ」
🍍「なに」
📢「無理しなくていいから」
🍍「……は?」
📢「一人で溜め込むタイプでしょ」
図星すぎて、何も言えない。
📢「頼っていい」
そう言って、
俺の頭に、そっと手を置いた。
一瞬。
ほんの一瞬。
🍍「……っ!」
振り払う前に、手は離れていた。
📢「じゃ」
それだけ言って、
いるまは先に歩いていった。
夕焼けの中で、
その背中を見送る。
🍍(ずるい……///)
優しくて。
距離が近くて。
でも、核心は見せなくて。
俺は、
自分の胸を押さえながら思った。
🍍(きっと、いるまはらんが好き)
🍍(だから、これ以上期待しちゃダメだ)
でも―――
もう遅かった。
放課後の教室で縮まった距離は、
簡単には戻らないところまで、近づいてしまっていた。