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「もうあんな夜は来ないように」
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深夜。人気のない住宅街。
🩷「なぁ、こんな時間に外出るの久しぶりじゃね?」
勇斗がポケットに手を突っ込みながら笑う。隣を歩く柔太朗は、少し眠そうに目を細めていた。
🤍「うん…なんか落ち着くよね。夜って」
街灯の明かりがぽつぽつと続く静かな道。人の気配はなく、二人の足音だけが響いていた。
そのとき――
コツ、コツ、コツ……
🩷「……え?」
勇斗が立ち止まる。
🤍「今、なんか聞こえた?」
柔太朗も足を止めて振り返る。
🤍「足音…?後ろから…」
さっきまで静かだった道に、確かにもう一つの足音が混じっていた。
でも――振り返った瞬間には、誰もいない。
🩷「気のせいじゃね?」
勇斗がそう言いかけた、その時。
――ザッ
すぐ後ろで何かが動いた気配。
🩷「っ、誰――」
振り向こうとした勇斗の視界の端で、柔太朗の体がぐらりと揺れた。
🩷「……え?」
次の瞬間、柔太朗がその場に崩れ落ちる。
🩷「柔太朗!?」
慌てて駆け寄る勇斗。
見ると、柔太朗の服がじわっと赤く滲んでいく。
🤍「……は、やと……」
弱く名前を呼ぶ声。
🩷「しゃべんな!大丈夫、大丈夫だから
…!」
勇斗の声が震える。周りを見渡しても、もう誰の姿もない。
さっきの足音の主は、まるで最初からいなかったかのように消えていた。
🩷「なんで…なんでだよ…!」
勇斗はスマホを震える手で取り出す。
🩷「もしもし!救急です!人が…友達が倒れてて…!」
必死に状況を伝えながら、柔太朗の手を強く握る。
🩷「寝るなよ、柔太朗。絶対、寝んな」
🤍「……勇斗……こわい……」
🩷「大丈夫。俺いるから。絶対助かる」
その言葉は、自分に言い聞かせているようでもあった。
⸻
数十分後。
救急車のサイレンが夜の街に響く。
ストレッチャーに乗せられた柔太朗が運ばれていく。
👨⚕️「ご家族の方ですか!?」
🩷「違います!でも一緒にいました!俺も行きます!」
勇斗はそのまま救急車に乗り込んだ。
⸻
病院。
長い待ち時間。
何もできず、ただ座っている勇斗。
頭の中には、さっきの光景が何度もよぎる。
🩷(俺が…気づいてれば…)
拳を強く握る。
🩷「……くそ…」
そのとき。
ガチャ、と扉が開く。
医者が出てきた。
👨⚕️「処置は終わりました。命に別状はありません」
🩷「……っ、ほんとですか!?」
一気に力が抜ける勇斗。
👨⚕️「ただ、しばらくは安静が必要です」
🩷「……よかった……」
その場に崩れそうになりながら、勇斗は涙をこらえた。
⸻
翌朝。
病室。
ベッドの上で眠る柔太朗の手を、そっと握る勇斗。
🩷「……ほんと、バカ」
小さく呟く。
🩷「勝手にいなくなるなよ」
そのとき、柔太朗の指がかすかに動いた。
🤍「……ん……」
🩷「柔太朗!?」
ゆっくりと目を開ける。
🤍「……勇斗……?」
🩷「っ……!」
思わず抱きしめそうになるのをこらえる。
🩷「生きててよかった……ほんとに」
柔太朗はまだぼんやりしながらも、少し笑った。
🤍「……泣いてる?」
🩷「泣いてねぇし」
即答するけど、声は完全に震えていた。
⸻
その事件の犯人は結局すぐには見つからなかった。
でも――
あの夜をきっかけに、二人の関係は少し変わった。
何気ない時間の大切さを、強く感じるようになったから。
帰り道。
勇斗は、前よりも少しだけ柔太朗の近くを歩く。
まるで守るみたいに。
🩷「……なぁ」
🤍「ん?」
🩷「今度は昼に出かけよーぜ」
🤍「うん、絶対そっちがいい」
二人は顔を見合わせて、少し笑った。
もう、あんな夜は来ないように――と願いながら。
𝑒𝑛𝑑
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