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第一章
〜編入生〜
第1話
「私に何か用ですか?」
私は、黒髪黒目の十三歳くらいの男の子を見上げながらフッと不敵な笑みを浮かべた。
私の桃色の髪が秋風に吹かれてなびいている。
私の異世界転生する前は……
「ちょっと? どこに行くんですか?」
私は、そう言って名前の分からない誰かの背中を追っていた。
女性で、凄い強い。私が勝てた事無いくらいに。
いや、私は弱いから……勝てないのは必然なんだけど……それでも、その誰かが百戦錬磨の無双剣士というのは覚えてる。
その前もある。
日本と呼ばれる所で、寝たきりの十五歳。だった。
その時に死んだ気がする。
そして、現在。
「名前は?」
黒髪黒目の男の子は、私の前でしゃがみながら優しく話しかけてきた。
「……分かりませんよ。名付けられてないと思います」
「え?」
男の子が出したのは、疑問符の嵐だ。
「気付いたらこんな所に……あ、でも私を連れ出そうなんて考えないでくださいね」
「は?」
男の子が出したのは呆けた声だった。
「それと、間違っても街にははいれませんから。よろしくお願いします」
「え、ぇ……?」
口をパクパクさせて……理解が追いついてないみたい。
「血濡れてますから。私」
ふふっ、と不敵な笑みを浮かべた。
「……私、一人で良いんです。誰かと一緒にいると、何が起こっても不思議では無いので」
私はさっき倒したちょっとしたドラゴンに背を向けて、去ろうとした。
だけど、手を掴まれた。
……いや、掴まったのはわざとだし、敵意も無さそうだし……
「君、一緒に来ない?」
え? なぜに?
「話、聞いてました?」
「うん。でもさ、俺の仲間も優しいし、強いよ。君とまではいかないけど……でも、見捨てられないな」
……だからっ、人といるのは。
「……ごめんなさい。私、やっぱり一人が良いんです。私の誰にも関係無い事情を巻き込みたくないんです」
本音をぶつけてやった。
「そ、そっか……でも、どちらにせよ、俺の考えは変わらないよ」
「え?」
「だって、それは、我儘じゃん。何かに対しての。だったら、僕も我儘言う」
屁理屈か。
「我儘言うのは良いですけど……きっと、無理ですから」
「やる前に、無理って――」とこの人が言いかけた時、何かの気配がして、身構えた。
三秒後。やっとこの人も気づいた。
前方に二人、後方から一人。
奥で構えてる一人。
「……俺の仲間だよ」
「え?」
じゃあ、無駄な争いは避けられるか。
「取り敢えず、私は帰ります。仕事も溜まってるので」
そう言って、私は空間魔法の応用で家へ転移した。
「ふぅ……危なかったぁ……」
家の中は、質素。無駄は無い。
あ、一つ無駄というのならば……
「おーい。ウィザード。俺だ」
「勝手に開けてください」
はぁ。とため息を吐きながら、扉の前で立った。
少し、間が空いてから扉が開くや否や「魔法学校に、編入しな……」という、面倒事が聞こえたので扉を閉じた。
「おーい。お前、俺と一緒に処刑されるぞ〜!」
「はぁぁ!?」
私はまた勢い良く、扉を開けてしまった。
「それで、私は年齢を改ざんして、魔力も偽装して……しかも、学校長――教皇様公認かぁ……」
私は、目の前に座ったクソ男。もとい、ルイスという男を睨んだ。
「そうなんだよな……ウィザードに殺されそうだから断ろうと思ったけど……中々なものでね。断ったら、教皇様に、殺されちゃうなぁ……」
一つの資料を私とルイスの間に挟まれた傷だらけの机に置いた。
……刺客侵入。毒盛り。
その二種類の事件について……ココにあるので十件。他を合わせれば……かなりの数があるな……
「そこで、偽名を使って入り込んでくれ。って、教皇様からの命令だ」
「……逆らえないわね。これでどう?」
私は、十五歳の体になり、服を平民がよく着てるような服に着替え、容姿もガラリと変えた。
……勿論、見た目だけじゃなくて、魔力、ステータスまでね。
名前は……今世のは知らないし。
「ってかさ、私が街に入って大丈夫なわけ?」
「あぁ。教皇様公認だ」
「かぁ……ったく」
「あ、その口癖も直して。淑女に……」と言いかけた所で「淑女教育受けた人に謝りなさ〜いっ!」と水魔法で髪の毛をぐしゃぐしゃにしてやった。
秋風が窓から入り込んで頬を撫でた。
「……いいわ。やってやる。目的は?」
「この事件の原因解明と、犯人を捕まえろ。死人がゼロになるように」
「……生き返らせちゃだ――」と言いかけた所で拳骨が振ってきた。
痛ってぇな……
「魔法は、常識の範囲内で。バレなければ何でもいいみたいだけど……生き返らせるのと、記憶の改ざんは駄目だ」
「はぁい……」
プクーと頬を膨らませて、元の七歳くらいの体に戻った。
ったく……
こいつ……ルイスは私の前世を二つとも知っている。
「ターゲットは?」
「教皇様の一人息子だ」
ルイスはそう言って、資料の横に写真を添えた。
上野文
8,419
新城かいり
190
#🍌☃️
コメント
1件
うわ、第1話からもうすごく引き込まれました!主人公の「一人で良い」ってスタンスと、でもルイスに巻き込まれていく流れが絶妙で…特に「血濡れてますから。私」って台詞、不敵でカッコよかったです。年齢を自在に変えられるのも面白いし、教皇様の一人息子がターゲットって展開、続きが気になりすぎます!こはるさんの会話のテンポ、すごく好きです🌷