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記憶──サイド ミヤビ
キリ、違うの。
私が言いたかったのは、キリは私みたいになって欲しくないってことだったのに。
真っ直ぐで、しっかりとした我を持っていて、何も恐れない、私の自慢の妹。
キリは気付いていない。それがどんなに素晴らしい強みなのかを。
私には無いものを全て持っていて、私が捨ててしまったものをまだ抱えていて、少しだけ羨ましかった。キリに憧れていたの。
キリは知らないでしょう?私が高校生のとき、どんな生活をしていたのか。いつも誰かのいいなりで、悪口を言われて、怪我を増やすのが当たり前の毎日で。それを心配させないように両親に隠して。
どんなに努力しても、誰も認めてくれない。性格も頭の良さも関係なく“殺人犯の娘のくせに”って言われ続けて。
もう死にたいって、何度も何度も思った。その度に両親の顔が頭をよぎって、死ねなかった。
キリが産まれた日、本当に限界だったの。踏切の中へ飛び込もうとしたの。その直前に、あなたが産まれたって教えてもらった。
死のうと思えば、いつでも死ねる。でも、生きることは死んだら出来ない。
だから、もう少しだけ頑張ろうと思えたのはキリのおかげなの。私が今ここで生きていけるのはキリのおかげなの。
キリが思っているほど、私は強い人間じゃない。
私は、弱いから逃げてしまった。キリは私より強くて立派だから、私みたいな人にはならない。
お願い。
キリはキリのままで生きていて。