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屋敷に戻り、私は自室のソファに深々と腰を下ろした。
絹のクッションが身体を沈めるが、心は一向に落ち着かない。
目の前には、借りてきた猫……ならぬ、神妙な顔をして並んで立つルカとセシルの姿。
「いい、二人とも。今日のあれは……執事として、いえ、人として一線を越えすぎよ!私がどれだけ困惑したか、分かっているの!?」
精一杯の威厳を振り絞り、声を荒らげて叱り飛ばす。
主としての絶対的な拒絶を示さなければ、彼らの暴走は止まらないと思ったからだ。
けれど、私の期待は脆くも崩れ去る。
二人は反省の色を見せるどころか
むしろ熱を帯びた、獲物を射抜くような瞳で私をじっと見つめ返してきたのだ。
「……でも、アリア様。あの避難小屋で、とっても可愛らしい声を漏らしていましたよね?」
ルカが、喉の奥で低く笑うような響きを含ませて言った。
「…ええ。あれは拒絶ではなく、私たちを求める甘い蜜のような吐息でした。……私たちの熱に、あなたは確かに絆されていた。図星、ではありませんか?」
セシルが追い打ちをかけるように、眼鏡を指先でクイと押し上げながら囁く。
「っ!? な、何を言ってるの……!」
ドクン、と心臓が大きく跳ね上がる。図星を突かれ、顔が火が出るほど熱くなるのが分かった。
あの薄暗い密室で感じた、抗いがたい熱量と
背徳的な快感。それを思い出しただけで、揃えていた膝が微かに震えた。
「それにね、選べるわけないじゃない! ルカもセシルも、私にとってかけがえのない、大事な二人なのに……!」
「仲良くしてほしいのに、隙あらば喧嘩ばかりして、私のこと困らせて……! もう、二人なんて知らないから……っ!!」
言葉に詰まり、感情が溢れ出す。
視界がじわりと熱い膜に覆われ、滲んでいく。
彼らの愛があまりに重く、鋭く
私一人では受け止めきれないほどの質量を持っていることが、怖くて、そして切なかった。
ポロリと一筋の涙が頬を伝い、絨毯に落ちた瞬間。
二人の顔色が、氷を当てられたように豹変した。
「アリア様!? 泣かないで、ごめんなさい!」
「……っ、申し訳ありません、アリア様。あなたを泣かせるつもりなど、毛頭なかったのですが…」
狼狽した二人が同時に駆け寄り、私を支えようと手を伸ばす。
けれど、その勢いがあまりに強く
重心を失った私は、背後のふかふかなベッドへと背中から押し倒される形になってしまった。
「あ……」
沈み込むマットレス。
仰向けに倒れた私の左右を、即座にルカとセシルの腕が塞ぐ。
逃げ場のない、白く甘い香りのする完全な密室。
「……アリア様。僕たちのこと、同じくらい愛してくれてるんですよね?なら、僕たちの『わがまま』も、半分は聞いてくれますよね?」
ルカが、私の右手を羽交い締めにし
縋るような、決して離さないという執念を秘めた瞳で覗き込んでくる。
「……ならば。私たちのこの溢れる愛も、等しく、公平に受け止めていただけますね?」
セシルが、私の左手首を優しく、けれど骨の感触を確かめるように押さえつける。
「な、何を───」
「伝えますから。言葉よりも、もっと確実な方法で。僕たちの、本当の気持ちを」
「……しっかり、全身で受け止めてください。あなたが愛してくれた、私たちの全てを」
二人の声が重なり、耳元で和音のように響く。
直後、右からはルカの荒っぽく激しい、熱を孕んだキスが。
左からはセシルの冷静を装いながらも狂おしい情熱を秘めた
冷たいキスが、同時に私の頬、こめかみ、耳元
そして無防備な首筋へと降り注いだ。
「んっ……ぁ、♡や……っ!」
左右から交互に、あるいは重なり合うように繰り返される愛の印
ルカの荒い吐息が肌を焼き、セシルの緻密で執拗な愛撫が神経を逆撫でする。
一週間もの「禁止令」で溜まりに溜まった二人の執着は
決壊したダムのように私の防波堤を易々と飲み込んでいく。
「ふぁ……あ、ぁっ…♡」
熱い。脳の芯がとろとろに溶かされ、積み上げてきた理性が真っ白な空白へと塗り潰されていく。
乱れたドレスの隙間から、彼らの高い体温が容赦なく滑り込み、私は抗う術を持たなかった。
先ほどまで涙で濡れていた瞳は
いつしか蕩けるような快感に潤み、トロンと力なく虚空を彷徨う。
「……いいお顔です、アリア様。もっと、もっと乱れてください」
「…もっと、僕たちの名前を呼んで。アリア様…僕だけを……っ」
もはや、どちらがどちらの頬にキスを落としているのかも分からない。
ただ、二人の執事が捧げる狂おしいほどの愛の渦の中で、私はただ、甘い喘ぎ声を漏らしながら
彼らが仕掛けた蜜のような罠に翻弄され続けるしかなかった。