TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

タイトル、作家名、タグで検索

テラーノベル(Teller Novel)
この世で一番欲しいプレゼント

この世で一番欲しいプレゼント

「この世で一番欲しいプレゼント」のメインビジュアル

6

主の誕生日プレゼント5

♥

70

2024年03月06日

シェアするシェアする
報告する

(リーシア様の助言で、私の誕生日に二年連続で私物を奪い、プレゼントを贈ることで、好意を伝えたつもりなのでしょう。そして両想いを強固にするために、南方にある寂れた古城の管理を私に任せ、名前を変えたアンドレア様がアシスタントをするという)

「伯母様以外、南方に知り合いはいないが、念のために髪を染めるのと、瞳はカラーコンタクトで誤魔化す。目元にホクロでもつければ完璧か」

「どうでしょうね」

告げられた姿がイマイチ想像できなくて、曖昧な返事をした。

「……ここまで考えた俺を、カールは好きになってくれないのか?」

アンドレア様は構ってほしい子どもが母親にする感じで、私の手をゆらゆら左右に揺らし、強引に注目させる。私はそれに導かれるように目の前に座り、力なく首を横に振った。

「なんでだよ! 俺がしたくない見合いをしてたときに、悲しそうな目で見ていたじゃないか」

「私ではなく、アンドレア様に相応しい身分の方とご一緒になったほうが、きっと幸せに――」

思ったことを口にした瞬間、アンドレア様は眉をひそめて、チッと舌打ちをする。

「おまえの物差しで、そんなことを決めつけるな。カールじゃなきゃ幸せになれないんだよ、俺は!」

「アンドレア様……」

「おまえに窘められて、凹むくらいに叱られて、たまに褒められなきゃ、俺は生きてる意味はない」

掴んでいる手を引っ張られた勢いをそのままに、アンドレア様の胸の中に抱きしめられてしまった。

「俺はカールが好きなんだ。俺がこれだけ気持ちを伝えているのに、どうして素直になってくれないんだ」

「しかし――」

薄闇の中で上半身は熱いぬくもりを、鼻腔にアンドレア様の香りを感じて、胸が痛いくらいに締めつけられる。

「今の俺は貴族じゃなく、ただの男に成り下がってる。そんな俺がおまえとともにありたいと豪語しているのが、気に食わないのか?」

「…………」

(アンドレア様が心の内をお伝えしてくださるたびに、傷ついた私の心が癒され、沈んでしまったところから、どんどん浮上していく)

アンドレア様の胸元から、恐るおそる顔をあげた。蝋燭の淡い光に照らされた彼の面差しが、とても悲しげに見える。目に映るそのお顔を、なんとかして笑顔にしたくて――。

「私はアンドレア様をお慕いいたして…んッ!」

唐突に唇を塞がれたせいで、続きを言うことができない。しかも、くちづけが深いものに変化していく。

「んんっ……ぁっ」

後頭部の髪を手荒に掴み、逃げられないように施されたせいで、アンドレア様の激しいくちづけを受け続けた。まるで彼の想いを示すようなキスに、呼吸がままならなくてとても苦しい。

苦しい中でも求められる幸せを感じることができて、みずから唇を押しつける。するとそれを合図にして、アンドレア様の顔が遠のいた。

「アンドレア様からのプレゼント、とても嬉しいです」

「なにを言ってるんだ。俺はおまえから、プレゼントをもらってないぞ」

「それって――」

言いかけて瞬間的にすべてを悟り、顔全部が熱を持ったことで、赤くなるのがわかった。

loading

この作品はいかがでしたか?

70

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
;