テラーノベル
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——最悪だ。
目を覚ました瞬間、そう思った。
いや、正確には。
目を覚ます前から、なんかおかしかった。
体が重い。いや、軽い?
感覚が変で、うまく力が入らない。
吉田 ……ん……
声を出したつもりだった。
でも。
吉田 にゃ
吉田 ……は?
終わった。
完全に終わった。
今の、どう聞いても猫だった。
吉田 ……いやいやいや
慌てて起き上がろうとして——転がる。
吉田 ん”にゃっ!?
バランスが取れない。体が小さい。ていう
か。
視界が低すぎる。
恐る恐る、自分の手を見る。
丸い。小さい。毛がある。
……肉球。
吉田 ……にゃぁぁあぁあぁぁ!?
理解したくない現実を、理解してしまった。
俺、猫になってる。
意味が分からない。
昨日、普通に帰って、普通に寝て——
……あ。
吉田 ……飯
思い出す。
昨日。
佐野くんと、飯に行った。
それだけだ。
それだけなのに。
なんで翌日、猫になってんの。
吉田 いや意味わかんねぇって……!
叫んだつもりが、
吉田 にゃ、にゃあ……!
全部台無し。
落ち着け。落ち着け俺。
状況を整理しろ。
まずここどこ。
ゆっくり顔を上げて、周りを見る。
見覚えのある家具。
シンプルな部屋。
昨日、ちらっと見た記憶。
吉田 ……は?
嫌な予感がする。
いやもうしてる。
確信に近い。
吉田 ……ここ
声が震える。
というか鳴き声が震える。
でも関係ない。
これは間違いなく——
勇斗の家 。
吉田 にゃぁぁあぁあぁぁぁ!?
終わりだって言ってんだろ!!!!!
なんで!?なんで俺ここにいんの!?
しかも猫で!?
意味わかんねぇって!!!!
パニックでその場をぐるぐる回る。
落ち着けない。無理。
とにかくここから出るべき?
いやでも外出たらどうなる?野良猫?詰み
では?
ていうか。
——勇斗に見つかったらどうする。
吉田 ……っ
想像しただけで固まる。
無理。無理無理無理。
絶対無理。
こんなの、どう説明すんの。
説明できるわけないだろ。
俺、猫です。元人間です。とか?
通報されるわ。
いやその前に、普通に追い出されるかもし
れない。
それは——
吉田 ……やだ
ぽつりと漏れる。
思ったより、強い感情だった。
離れたくない。
この家から。
この人から。
吉田 ……にゃ
小さく鳴く。
その時。
ガチャ。
吉田 ……っ!
心臓が跳ねる。
来た。
来た来た来た来た来た。
足音。近づいてくる。
逃げなきゃ。
でも、どこに?
体が勝手に動く。
ソファの影に潜り込む。
息を潜める。
無理。無理すぎる。
ドアが開く音。
佐野 ……ただいま
低い声。
昨日、すぐ隣で聞いた声。
それだけで、胸がぎゅっとなる。
佐野 ……ん?
足音が止まる。
佐野 なんか……いる?
気づいた。
終わった。
完全に終わった。
ゆっくり、足音が近づいてくる。
逃げ場なんてない。
影から、少しだけ顔を出す。
目が合った。
佐野 ……は
勇斗が、少しだけ驚いた顔をする。
そりゃそうだ。
いきなり猫いたらびびるだろ。
佐野 ……どっから入った?
冷静かよ。
いや今それどころじゃない。
吉田 にゃ……
終わってる。
ほんと終わってる。
勇斗は少しだけ眉をひそめて——
でも、すぐにしゃがみ込んだ。
佐野 ……迷い猫?
近い。
顔がいい。
無理。
逃げたいのに、動けない。
手が伸びてくる。
吉田 ……っ
びくっと体が跳ねる。
佐野 そんな警戒すんなって
小さく笑う声。
そのまま、そっと頭に触れられる。
——撫でられた。
吉田 ……あ
変な声が出る。
あったかい。
優しい。
昨日と同じ距離。
なのに、全然違う。
佐野 ……ほんと猫だな
ぽつりと呟かれる。
その言葉に、心臓がまた跳ねた。
佐野 ……なあ
優しく撫でながら。
佐野 今日だけ、いていいぞ
その一言で。
全部、どうでもよくなりそうになる。
吉田 にゃ……
小さく鳴く。
——だめだ。
これ。
絶対、離れられなくなる。
コメント
5件
あれまぁ、かわいいにゃんこだにぇ?🥺💗💞 ぼくちんがかってあげまちゅよ?🥺☝️💫はーとこっちおいでー?🐱 10万円あげたらきてくれるかなぁー?🐱💓

あ"あ"あ"あ"あ"ッッッッッッ!!!!!!! かわいい!!!!!!くっっっっっそかわいい!!!!!!!!さすがに助かった