コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……それで本当に来てくれたんだね」
夕日に染まった空の下で待っていた僕に対して沙耶架さんは開口一番こう言った。
「はい、約束しましたから」
僕は彼女の言葉に対し即答してみせる。
確かに少しだけ怖かったけど、それでも行くべきだと思ったのだ。
「そっかぁ。じゃあさっそくだけど本題に入ろうかな。単刀直入に言うよ? キミにはこの学校から出ていって欲しいんだよね」
「えっと、それってどういうことですか?」
僕は突然の申し出に戸惑ってしまった。
そもそもなんで沙耶架さんはこの学校に居るんだろうか? 彼女は転校生なので別の高校へ通っているはずなのに。
「ああごめん。まずそこから説明しないといけなかったね。実はウチの両親が仕事の都合で海外へ行くことになったんだけどさ。でもそうなると私が一人暮らしすることになるじゃん? まだ中学生だし流石に一人で暮らすのは厳しいと思って親戚の家にお世話になることにしたんだよ。そうしたら今度はそこに弟が居座っちゃってさ。私としては今すぐ追い出したいんだけど両親からは仲良くするように言われてるし。それで仕方なく我慢することにしたの。だってこれ以上ゴネてたら本当に追い出されちゃうかもしれないもん」
「あの、全然意味が分かりません」
あまりにも突拍子もない話だったので、理解するのに時間がかかってしまった。
「うん、そうだよね。順を追って説明するよ。私の弟の名前は天宮秋人っていう名前なんだけどさ。アイツって昔から何を考えているのかよく分かんないヤツでね。昔はもっと大人しかった気がするんだけど最近は妙に反抗的で口答えしてくるようになって困ってるんだ。しかも私のことを姉ちゃんなんて呼ぶようになったせいでますます調子に乗ってきてるみたいでさ。もうウザいったらないの。それに成績優秀だしスポーツ万能だし顔も良いし身長も高いし運動神経抜群なのに友達もいないんだよ? 信じられる?」
「えっと……それってもしかしてブラコンですか?」
「違う! 別に弟だから好きなんじゃなくて弟のことが好きだから弟に構うだけであって私はシスコンじゃない!」
「そ、そうなんですか」
「そうだよ! とにかく私は弟が好きだけど恋愛対象としては見てないし、そもそも私が好きなタイプは年上のお兄さんとか渋いおじさんみたいな感じなんだから。だから私は全然ノーマルだってば!」
「わ、分かりました」
今更ではあるがここはとある高校の一教室である。
そこで一人の女子生徒を相手にしながら話を聞いていたのだが、彼女の名前は姫野沙耶架と言い、見た目こそ普通の女子高生といった風貌をしているものの実際はかなり特殊な人物らしい。
というのも彼女は普通ではない理由でこの学校に入学してきた変わり者だと噂されており、その理由とは『自分は天才である』と思い込んでいることにあった。
そして事実として彼女には学力テストや模試の結果などで全国トップクラスの成績を叩き出すほどの実力があり、その評判もあって教師陣からも一目置かれている存在になっている。
しかしその一方で彼女自身の性格は非常に気難しく、誰に対しても辛辣な態度を取るために同級生たちから嫌われていた。
おまけに何故か学校中の男子生徒たちからは好意を持たれており、一部の熱狂的なファンが存在しているという噂もあるくらいだ。
そんなこともあって彼女が異性に興味を持つことは絶対にありえないと言われていたが、最近になって同じクラスの男子生徒に対してだけはなぜか積極的に話しかけるようになったらしい。