空の色が一層深い青に変わり、ミカエルとタクトの間に漂う緊張感がどんどんと高まっていく。二人の間に立つ空気そのものが、ひび割れる音を立てていた。海は波打ち、風はその強さを増して、二人の戦いを予感させるかのようだ。
ミカエルは無言でタクトを見つめ、刀を構え直す。その瞳には、戦いの中で迷いを一切感じさせない。彼はもう、戦うことしか考えていないのだ。戦いが全てであり、勝利が目的である。
タクトも視線を受け、冷静に立ち上がる。彼の体がしなやかに動き、反撃態勢に入っていた。笑みを浮かべ、警告が鳴り響く。
「さて、そろそろ本気を出させてもらうか。」
タクトの言葉と共に、その周囲の空気が一変する。彼の異能「警告」が作り出す波動が、全ての空間を圧倒的に支配し始めた。目の前に立つミカエルもその変化を感じ取り、次第にその身を引き締める。
ミカエルの眼が一瞬、輝きを増す。彼はその瞬間、完全に戦闘モードに切り替わった。まるで周囲の風と一体化するかのように、彼の動きが自然と鋭く、力強くなる。
「タクト、お前も本気で戦う覚悟ができているようだな。」
ミカエルの声に、何かしらの決意が感じられる。その言葉に、タクトは静かにうなずきながら、腕を軽く振り上げた。
「もちろんさ、だってお前、俺を倒せるって思ってるだろ?」
その瞬間、タクトの目が一瞬冷たく光る。彼の周囲に警告が広がり、時間の流れさえも少しだけ歪んだような感覚が走る。次の瞬間、タクトの動きが速すぎて、ミカエルの目では追いきれない。
タクトはまるで風のように駆け抜け、ミカエルの目前に迫る。彼の目の前で、無数の警告が発動し、そのどれもが周囲の空気を圧倒的な力で切り裂いていた。その速度は常識を超え、ミカエルは瞬時に反応を求められる。
しかし、ミカエルの刃はその反応速度も超える。彼は刀を振り、空気を切り裂いてタクトを迎え撃つ。刃がタクトの体をかすめた瞬間、すぐにその背後から風圧が襲い、タクトは一歩後退する。
「…やるな。」
タクトは額に少しだけ汗を滲ませ、次第にその表情を厳しくする。ミカエルはその反応に微かに満足したような表情を浮かべ、再度刀を構える。
「だが、それだけではまだ足りない。」
ミカエルが言ったその言葉と同時に、空気が一層冷たくなり、彼の刀から放たれる圧倒的な力がタクトを包み込む。刀が一閃し、何本もの光の刃が同時に放たれる。その光は目にも留まらぬ速さでタクトを貫こうとする。
だがタクトは、それを軽々と避ける。彼の動きはさらに速く、そして予測不可能だ。次々と現れる刃を、彼はまるで風の中を舞うように華麗に避け、さらにはその周囲に新たな警告を発動させ、ミカエルの動きを制約し始める。
「お前は…本当に強いな。」
タクトが口にしたその言葉には、讃辞を込めたような響きがあった。だが、それは決して怯えているわけではない。ただ、彼がこれから本気で戦うために相手を尊敬しているという、少しの余裕を感じさせる言葉だった。
その時、ミカエルの刀から放たれる光が一瞬強く輝き、その光の中で新たな技が現れた。刀の柄を強く握り直すと、突然その刃が無数の光の粒子となって散り、周囲の空気を爆発的に震わせる。
「終わらせる。」
ミカエルが冷たく言い放ち、タクトに対して全力で突っ込んでくる。その勢いは、もはやただの戦闘ではなく、壮絶な決着をつけるための一撃に見えた。
だが、タクトは笑みを浮かべながら、その攻撃を迎え撃つ準備を整えた。彼の目に宿るのは、戦いの終わりを見据えた覚悟――そして、最強の警告をその手に込めた。
「さあ、どう出る? これが本気だ、ミカエル。」
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