テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#工場長
パラレル・ゲーマー
2,396
パラレル・ゲーマー
650
臣桜
47,105
上野文
4,285
「すげぇな……。今、なんか……、ヒュッと消えたように思える」
「ひほふひへひっははらへふはへ(一口でいったからですかね)?」
「こういうゲームのキャラクターいたよな……」
「やめてくださいよ。ゲーム会社に怒られます」
私は両手で口元を覆い、思う存分モグモグしてから、何事もなかったかのようにパッと顔を出す。
「今のは、腹の足し的に、点数つけるならどれぐらい?」
「んー……、一……?」
真顔で答えると、尊さんは信じられないものを見る目をした。
「それが婚約者を見る目ですか」
「こういう目も含めて俺の事が全部好きなんだろ」
「わぁ……っ、ずるい……! こういうの、ずるい男って言うんだ!」
「ちょっと違うと思う」
尊さんはスンッと真顔で言ったあと、「商店街行くぞ」と歩き出した。
宮島は平家ゆかりの地である事もあり、商店街は〝清盛通り〟とも言われているそうだ。
歩いていると色んなもみじがいて、パイもみじとか、アイスサンドもみじもいる。
全員食べてあげたい……。
そんな事を思いつつ向かったのは『紅葉堂』本店さんで、揚げもみじ発祥の店らしい。
彼は列に並んでノーマルのこしあんを頼み、私は変化球で瀬戸内レモンを頼んだ。
「んン!? んー!」
棒に刺さった揚げもみじを一口囓った私は、目を見開いて尊さんを見ると、右手でサムズアップして、ぐっぐっぐっとする。
「ん」
私の「んー!」に対し、尊さんは口をモグモグさせつつ短く返事をし、ぐっとサムズアップした。
多分これ、意志疎通できていると思うんだけど、サクサクの衣の中にあるフワッとしたもみじ饅頭と、クリームが絶妙に美味しい。
二口で終わってしまった私は、「別の味も食べたいな……」と思い、お店を見る。
「一箇所で三、四を消費するか、別の店で消費するか」
「別のお店行きます!」
「……の、前に、そろそろ神社行ってみるか」
「アイアイサー!」
小腹を満たした私たちは、途中でどでかいしゃもじの前で記念撮影をしてから、神社に向かった。
本当は杓子というのが正しいようで、日清・日露戦争の時に厳島神社に参拝した兵士たちが『敵を召し捕る』として杓子を奉納し、故郷へのお土産としたところからきているみたいだ。
今では弁財天様の御利益で、『幸せを召し捕る』として、縁起物になっている。
御笠浜を通って厳島神社に向かう途中、ミコペディアが色々教えてくれる。
「厳島って呼ばれるようになったのも、神様が『居着く』島とされたからだって。本州側から島を見ると、観音様が横たわってるように見えるんだとか。島全体が神域だから、墓もないんだ。あと、出産も禁止、神域を傷つける行為になるから、畑を作って耕すのも禁止」
「おお……。思っていた以上の縛りですね。ちなみに、この島の住人は?」
「墓はフェリーに乗った宮島口にあるらしく、妊婦さんは臨月になったら島を出て出産して、昔は百日経ってから島に戻る事になっていたそうだ」
「ちなみに秋になったら紅葉が綺麗なんでしょうけど、別の土地も綺麗だと思うんです。どうしてここまでもみじ推しに?」
「弥山に登った時、伊藤博文の話をチラッとしたけど、彼も信仰心が厚くて何度も弥山に訪れていたらしい。で、茶屋でお茶を出してくれた女の子の手が、紅葉みたいに可愛いって言ったところから始まったんだとか」
「へぇ……、ふーん……」
私は頷きながら、自分の手をパーにして開く。
「そのサイズの饅頭は売ってないぞ」
「想像しただけですって」
お見通しミコに、私は唇を尖らせる。
「あと、気づいてると思うけど、信号もないしゴミ箱もない」
「信号がないのは、コンパクトに観光できるから?」
「まぁ、多分そうだろうな。あちこち歩いて俺も分かったけど、人が大勢いるし道も狭いし、車移動には向いてない。ゴミ箱がないのは鹿が食わんようにらしい。ちなみにトイレが押して入るんじゃなくて、引いて入るようになってるのも、鹿対策」
「なるほどー……。……で、いよいよ到着ですね」
神妙な面持ちで見た先には二本の柱――|注連石《しめいし》があり、その上部には割とピーンとしめ縄が張ってある。
周囲を写真に収めたあと、昇殿料三百円を払って、いざ参拝だ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!