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34-1◆騎士たちの感謝、限りなく王に近づいた日◆
その日の昼休み。本館一階の掲示ホールから戻った俺。
俺が自分の席で、パンを食べていると次々と訪問者が現れた。
まるで、俺の元へと戦果を報告しに来る家臣のように。
最初に現れたのは、柴田隼人だった。
彼は満面の笑みで、俺の肩を叩く。
「音無、マジでお前、神だな!あの問題集、ほぼ全部出たぞ!俺、初めて試験で自信持てたぜ!」
「今度、俺の漫才ネタ見てくれよ!で評価をくれ、お前になら、見せる価値がある!」
彼は、興奮気味にまくし立てた。
次に現れたのは、斎藤律だった。
彼は、無言で缶のドリンクを俺の机に置く。
数日前と同じ海外製の高級なエナジードリンクだ。
「お前のシステム。本物だ。俺の予想を遥かに超えていた」
彼は静かに告げる。
「この投資は継続する価値がある。次のビジネスプランができたらお前にも見せてやる。相談に乗ってくれ」
彼はそれだけを言うと、自分の席へと戻っていった。
そして最後に結城莉奈が、一人でやってきた。
彼女は少し気まずそうに俺の前に立つ。
「音無くん。そのありがとう。助かったわ」
その時の彼女の声色が以前と違うのを、俺は見逃さなかった。
俺のスカウターが、その僅かな変化を捉える。
【Target: 結城 莉奈】
【対あなたへの感情:感謝(50%)、畏怖(30%)そして、未知の好意(20%)】
(未知の好意?面白いデータだ)
彼らが去った後、情報屋の山中が、興奮した様子で駆け寄ってきた。
「おい音無!お前、8位ってマジかよ!いつの間に、そんな天才になったんだ!」
そして彼は、自分のことで肩を落とす。
「それに比べて俺はまたランク外だよ。なあ、俺って実際、何位くらいなんだ?300位とかか?」
山中のその嘆き。
それが俺の脳内で新しい回路を繋げた。
(そうだ。この教室リーグの序列は、何もElysionと俺だけのものじゃない)
(山中のようなその他大勢。彼らの評価もまたこのゲームの重要なパラメータだ)
「ところで、それはそうと、音無!お前、いつの間にElysionの連中と、つるむようになったんだよ!」
「柴田も斎藤も結城さんまでお前、一体何をしたんだ!?」
俺は、ただ静かに答える。
「別に。ただのクラスメイトだろ」
その俺の言葉を、山中が信じるはずもなかった。
彼は、ただ俺のその得体のしれない変化に畏怖の念を抱いている。
俺の脳内に、ミラーの声が響いた。
ミラー:「どうだ?王様に近づいた気分は」
奏:「別に。全ては脚本通りだ」
ミラー:「しかしよく考えたら、試験の結果発表って、おまえのような特殊能力がなくても。全員が見れるわかりやすいランク付けだな」
奏:「言われてみれば、そうだな」
ミラー:「誰もが、明確にわかるランキング、ここでおまえが上位を取った影響によって、スクールカーストのランクも上がるんだな」
奏:「わかりやすくて、確実なランク上昇方法かもな」
ミラー:「ところで、本当のショーはここからだろ?」
俺は静かに頷いた。
奏:「そうだ。本当のショーはここからだ」
34-2◆女王の戦慄、そして新しい戦争◆
その日の放課後。
茶道部室『祥雲庵』にElysionの幹部たちが集められた。
重苦しい沈黙が、その場を支配している。
その沈黙を破ったのは女王、久条 亜里沙だった。
彼女は完璧な笑顔で、三人の騎士たちを称えた。
「三人とも、中間試験おめでとう。素晴らしい結果だったわ」
その言葉に最初に反応したのは柴田だった。
彼は、悪びれもなく大声で言う。
「いやーマジで音無のおかげ!あいつの予想問題集、神がかってるし!」
亜里沙「ええ、正直、私も驚いたわ。柴田くんが29位なんて」
次に斎藤が、冷静に付け加える。
「彼のシステムは本物だ。俺は、彼に投資する価値があると判断した」
亜里沙「あなたは、やればできそうだったものね」
そして最後に結城が亜里沙の顔色を窺うようにして言った。
「音無くん、私たちの悩みも、理解してくれて。とても不思議な力のある人だわ」
亜里沙「そうね、莉奈、彼はあなたたちの試験に、大きな貢献をしたわ」
三人のそのあまりにも無邪気な「報告」。
それを聞いた瞬間、亜里沙の心の中で、全てのピースが繋がった。
(音無 奏)
(私の命令を逆手にとって、私の騎士たちに恩を売り、そして懐柔した?)
(そうだ。だから私は彼らを責めることができない)
(彼らは私の「学力を上げろ」という命令に従っただけなのだから)
(ここで私が怒れば?私はただの矛盾した愚かな女王になる)
(そして私が音無 奏へ怒りを向けるのも、矛盾している。なんて恐ろしい脚本を書くの?)
(結果として、私のため、天宮くんのためにもなる。文句をつけるポイントがない)
彼女の背筋を、氷のような戦慄が駆け上がった。
彼女は初めてこの学園で、自分以外の「プレイヤー」の存在を認識した。
自分と同じように「空気」を読み「人心」を掌握し、そして「結果」を支配する人間の存在を。
観客席にいたはずのあの石ころ。
彼が自分と同じレベルの思考を持つ怪物に成長したという事実。
しかし怒る理由は何もない。
怒りの矛先がなくなった彼女の心を支配していたのは?
もっと冷たい別の感情。
(あなた一体何者なの?)という純粋な「知的好奇心」。
そしてこの男はいずれ私の最大の敵になるという冷徹な「警戒心」そして「戦慄」
久条亜里沙は、ゆっくりと立ち上がった。
彼女の瞳には、もはや奏への侮蔑の色はない。
ただ対等な好敵手ライバルを、前にした女王の光だけが宿っていた。
彼女は静かに、そして力強く宣言する。
「Elysionとは、これより音無 奏を『要注意人物』から『最重要攻略対象メインターゲット』へと変更する。白蓮会を動かす」
新しい戦争の火蓋が今、静かに切って落された。
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れいとうみかん