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屋敷内。二人はどこの部屋から挨拶に行こうかと悩んでいた。
「どの部屋にいてどの部屋にいないのか分からないな……。」
「そうだな。屋敷の部屋はまだ全部埋まっているわけではないだろうしな。」
とはいえ悩んでいても仕方がない、ということで二人は隣の部屋の扉をノックした。中から
「はーい。」
と声が聞こえた。聞き覚えのある声だった。人外屋敷に来たばかり、自分達の部屋へ案内してくれた彼の声だ。
「月弥君…!!」
「お、剣と月華じゃん。どうかした?」
にこりと優しく笑う月弥に、剣は返答する。
「俺達、屋敷内の人達に挨拶に回りたくて。」
「ついさっきギルトって奴に挨拶されてな。俺達から挨拶しないのは失礼だと思ったんだ。」
事情を説明すると、月弥はしばらく黙った後にこう言った。
「俺も手伝っていい?」
こてんと首を傾げ、二人を見る。
「うん、勿論。」
剣は笑顔で対応し、月華は無言で頷いた。
「てか俺の部屋の位置教えてなかったね。初日に教えておけば良かった…。」
そう言って苦笑した月弥は二人の手をとって引っ張る。
「さすがに屋敷内全員の挨拶は難しいだろうから、一部でいいと思うよ。」
振り返って優しく月弥は笑う。そのまま歩きだし、端の部屋まで来た。剣と月華は月弥にお礼を言って扉をノックする。
「はいはーい。」
声の主はすぐに出てきた。扉を開けて三人の姿を確認すると、
「おぉ、新入り君達と…月弥じゃん。」
と微笑んだ。この部屋の彼も獣人のようで、濃い灰色の毛色に紫色の目で、紺色の帽子とシャツ、紫色のパーカー、黒いチョーカーを身に付けていた。
「はい、新入りの剣です。それでこっちが…。」
「月華だ。よろしく。」
二人は挨拶をし、その獣人に手を差し出す。その獣人は二人の手をとるなり目を細めて笑い、
「よろしく。」
と返した。
「あ、自己紹介してなかったわ。俺、バイト。覚えておいてくれよ。まぁ覚えなくてもいいけど。」
ヘラヘラと笑って彼はそう述べる。話しやすい雰囲気のバイトを見て、剣と月華も微笑む。
「他の奴のとこにも挨拶行くのか?」
バイトに聞かれると、代わりに月弥が答える。
「うん、俺が二人を案内するんだ。さすがに全員は回れないけど。」
「そうか。行ってこい。」
バイトは笑顔で見送ってくれ、そのまま他の人のところへ挨拶に行く……はずだった。屋敷内にバンッと扉が開く音がした。驚いて三人は扉の開いた方向へ向かう。するとそこにいたのは双子だった。片方は赤い髪の毛に右腕の肘から下がない少年、もう片方は白い髪の毛に左腕の肘から下がない少年だった。赤い髪の少年は扉を見るなり
「また強く開けすぎちゃったどうしよ。」
とヘラヘラ笑っている。白い髪の少年は
「そこにいる三人が驚いてるだろ。」
と冷静に指摘している。双子は剣達に近づき
「びっくりさせちゃってごめんね??そこの新入りさんと月弥っ。」
「驚かせてすまない、新入り、月弥。」
と謝罪した。いきなりの出来事に頭が回らなかった剣と月華だが、すぐに我に返り
「全然大丈夫ですっ。」
「平気だ。」
と慌てて返事をした。
「堅いなぁ。まぁいっか。それより!!やばいこと起きたから来て!!」
「本題はここからなんだ。時間がないから今すぐ来い。」
これを聞いた月弥はため息をついてこう言った。
「いいけど後できちんとこの二人に自己紹介してあげてね。」
「はいはいっ。」
「あぁ。そのつもりだ。」
急展開に剣と月華はまた頭が回らなくなった。
「あ、もういっそそこの新入りさん達も来て!!」
「え、あ、はい…。」
「あ、あぁ。」
困惑した二人だが本気で急いでいるようだったので無視するわけにもいかない。名前も知らない双子に着いていくことになった。月弥がフォローをしてくれるだろうが、剣も月華も少し不安なまま屋敷を後にした。