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ちょっとNL(女攻め)を
桃香鼓一朗
放課後のゲーセン、音ゲーコーナー前
「ねえねえ、鼓一朗、今日こそさ、私に勝てる気ある?」
「ない。最初から諦めてる」
「はやっ!?いや、もっとこう……“今日こそは”とかないの!?」
「ない。前回のボコられ方、忘れてないし」
「ボコって言うな! ていうかさ、じゃあ賭けしよ?」
「……お前、どうせ勝つ気だろ」
「ふふふ……勝ったら、お願いひとつ聞いてもらいます!」
「わー出たよ。お前の“お願いひとつ”って、けっこう危険なんだよな」
「そーお?じゃあこいちゃんも、勝ったらお願いしていいよ?」
「……やめとく。桃香が負けた時、変な顔すんの知ってるから」
「なにそれ!変な顔ってなに!」
「すっごい悔しそうな、犬にエサ取られた柴犬みたいな顔」
「わあああ〜〜〜やめて!例えがひどい!!」
「でも、可愛いよ。そーいうとこ」
「……え、でも、柴犬みたいな顔ってほぼ可愛いって言ってるもんやん?」
「……言ってない」
「言ったよね!?今絶対言ったよね!?ホントのホントに言った!」
「いや、疑うの早すぎ。」
「はぁぁ〜〜〜!!やっぱ天才!!」
話噛み合ってない件について
「でも、ほんとにそう思ってたら、俺、たぶん言わない。言うってことは、冗談だって思ってていいよ」
「……じゃあ逆にさ、そうじゃない時は?」
「ん?」
「ガチのやつのときは……どうなるの?」
「……そんときは、ちゃんと目見て言うよ」
「…………ッ」
「はいはい、ほら、早く選曲して。後ろ詰まってんぞ」
「う、うん……ぜったい勝つから!!覚悟してよね!!」
「うん、楽しみにしてる。……負けた時の顔」
「わあああ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
音ゲー勝負、終了後──
「よしっ、終わりっ!!……スコア、出た!」
「……また負けた。ていうか、お前、手の動きヤバすぎ。高速すぎる」
「ふふふ。ふっふっふ……さて鼓一朗くん、どうしますか〜〜?」
「どうもしないよ。はいどうぞ、お願いしてください。……あーこわ」
「こわがらないで!?なんかこっちが悪者みたいじゃん!」
「お前、前回は“背中に落書きして1日過ごせ”とか言ったじゃん……」
「そんなことする訳ないじゃないですか!!」
「……で、今回は?」
「んふふ……」
「こわ」
「じゃあ……」
桃香は、両手を後ろに組んで、ちょっとだけ視線を泳がせた。
本当はさっきから考えてた。イタズラでも変な命令でもない、でも鼓一朗がちょっとだけ意識しちゃうお願い。
「今度さ、ふたりで、またここ来よ?」
「……は?」
「今日みたいに、平日でも、土日でもいいから。……“また”一緒に来たいって思ったから。
だからお願いっていうより、約束、かな」
「……」
鼓一朗は少しだけ黙って、それから小さく息をついた。
「……それ、お願いっていうより、ただの“希望”じゃん」
「ダメ?」
「……いや、いい。てか、そんなの言われたら断れねぇよ」
「やったぁ……!じゃあ、はい、手」
「手?」
「繋ぐの。次のゲーセンまでの道、覚えといてもらうための“ロック”!」
「……ガキかよ」
「は?」
そう言いながらも、鼓一朗はそっと手を出してくれた。
ゲームの勝敗よりも、ちょっとだけ温かいオチ。
手の温度が伝わるたび、
“お願い”の正解は、たぶんこれだったって思った。
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息抜きでちょっと書いた