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昼食時――。

こちらまでは来られないナディエルに変わって、彼女と同室のペトラがカイルとリリアンナの食事を運んできてくれた。


ランディリックが厩舎きゅうしゃ近くの城壁修繕を監修しているのに気が付くなり、ビシッと背筋を伸ばして緊張した様子でぺこりと頭を下げるペトラを、ランディリックは思わず呼び止めていた。


「リリーとカイルの食事かな?」

「は、はいっ。さようでございます城主様!」

いかにも付け焼刃。普段ランディリックとそれほど会話をしたことのないペトラらしいギクシャクとした様子の物言いに、思わずランディリックの頬が緩む。


「わざわざ仕事を増やして申し訳ないね」


本来ならばナディエルがになうべき仕事だ。いや、それよりもリリアンナとカイルが食事時だけでも屋敷へ戻ってくれれば二人分の食事を運ぶ手間もないだろうに。それを示唆しての言葉に、「いえ、滅相もございません!」とペトラがソワソワする。


「ああ、引き留めて悪かったね」


屋敷からここまでは結構距離がある。

熱々の食事も、歩いているうちに少し冷めてしまっているだろう。


それを気にしている様子のペトラを解放してやるとランディリックはふと思い立ったようにペトラの前を歩いた。


「旦那様?」

その様子にペトラがオロオロと声を掛けると、「両手がふさがっていては扉を開けることはおろか、ノックも出来ないだろう?」とランディリックが柔らかく微笑む。

「あ、あのっ、ですが……わざわざ侯爵様のお手をわずらわせるわけには」

「僕もリリーとカイルの顔が見たいからね。そのついでだよ」

それはある意味本音だった。

リリアンナのことが気掛かりで、結局半日中城壁の修繕現場から離れられなかったランディリックである。案外近くにいても壁に隔てられた小屋の中、リリアンナとカイルがどんな風に過ごしているのかをうかがい知ることは出来なくて、ヤキモキしていたところだ。

ペトラのためという名目で戸を叩けるのは、ある意味僥倖ぎょうこうだった。


ランディリックのノックとともに中から「はーい」と鈴を転がすような声音が聞こえてくる。リリアンナだ。

ギギィーッと蝶番ちょうつがいの軋む音を立てて扉が開かれると、中からリリアンナが顔をのぞかせた。


「ランディ?」

長身のランディリックの陰に隠れていてペトラが見えなかったらしい。キョトンとこちらを見上げてくるリリアンナに、「ペトラが昼食を運んできてくれたようだよ」と告げると、リリアンナがスッと横へ避けたランディリックの陰から出てきたペトラに満面の笑顔を浮かべる。


「有難う、ペトラ!」

礼を言うリリアンナの背後からカイルが出てきて「ランディリック様」と城主へうやうやしくこうべを垂れた。


「腕の具合はどうだね?」

ランディリックの問いに、「昨日の今日よ? そんなに変わるわけないじゃない」とリリアンナがクスクス笑う。

ヤンデレ辺境伯は年の離れた養い子に恋着する

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コメント

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ランディリックの心穏やかじゃ無い気がする

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