コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
森林の中に二人の足音だけが響く。
剣持「…もらる」
もらる「ん?どうしたの、剣持兄?」
剣持「………ほんとにこの道で合ってるか?」
もらる「うん。あの人の結界の気配が強くなってきてる。間違いないよ」
その時、かすかに後方でなにか生き物の気配がした。
剣持「…!もらる!」
もらる「…!」
二人が振り向いた瞬間その”何か”が姿を現した。その”何か”は狂い笑った顔のような不気味な仮面を被ってた。もらるはそいつが何者か知っていた。
もらる「…あの人の屍鬼だ」
剣持「屍鬼!?あいつが例の…」
『屍鬼<シキ>』というのは俗に言う下僕と言うやつで、契約を交わした人に従順な獣や妖(あやかし)などにつけられる名前だ。
もらる「ごめんけど、急いでるから」
もらるはそう言うと拳を握る動作をした。それと同時に屍鬼が苦しみ、その後に動きが止まった。
もらる「”呼応の術”」
”呼応の術”…術発生者のやりたいことを動作に応じて発生させる術式。今回は屍鬼の魂を呼応させ握り潰した。
剣持「…やったのか?」
もらる「妖の類いだから魂を壊されたぐらいじゃ死なないよ。でも、回復には結構時間かかるから…多分今日一日は動けないと思う」
もらるはそう言うと再び走り出した。剣持は離されないように急いで追いかける。
走り続けること約20分、もらるにとっては懐かしく、それと同時に二度と来ることはないと思っていた場所に到着した。
もらる「…着いた」
剣持「やっ、、とか……」
もらる「…あの位でバテたの?」
剣持「お前、速すぎ……」
もらる「ふーん…まあいいや。とりあえず、作戦始めるよ。準備はいい?」
剣持「…ああ」
もらる「…なんかこれが一番早い気がする」
剣持「?なにが?」
もらる「剣持兄、僕の周りから離れないでね。」
剣持「あ、ああ…何するつもりだ?」
もらる「まあ、見たら分かるよ」
もらるはそう言うと、手を広げて呪文を唱えた。
もらる「毒霧魔法”睡魔の霧”」
睡魔の霧…霧を吸った者は無条件で強制的に睡眠してしまう。
もらるは魔法詠唱を終えると何かを探るように目をつむり数秒間黙った。
もらる「…よしっ!うまく行った。」
もらるはそう言うと何も警戒ぜずに草むらから飛び出した。
剣持「はっ?!おい、ばか!!…って」
剣持「ね、寝てる…?」
もらる「さっきの魔法は強制睡眠魔法だからね〜。地下の警備の人たちも寝てるから、もう戦闘は起こらないよ〜」
剣持はもらるの桁外れの魔法に気づいて呆然と立つことしかできなかった。その剣持に気付いたもらるが「早く行くよ〜」と言ってやっと我に返りもらるの後を追う。
もらる「…居た。」
剣持「…小雪!!」
小雪「…ん〜…お兄、ちゃん…?」
もらる「ありゃ〜、小雪ちゃんも霧吸っちゃってたか〜…まあ、小雪ちゃんはマナが強いし、大丈夫でしょ。」
もらる「…じゃあ、お二人共帰ろっか。」
剣持「ごめんな、もらる。巻き込んじまって…」
剣持兄はそう言いながら眠たげな小雪ちゃんをおぶった。
もらる「何を今更…ほら、時空の狭間【ワープホール】創ったからここ通って早く帰ったら?」
剣持「じゃあ、言葉に甘えて…」
もらる「じゃ、またね。剣持兄、小雪ちゃん」
剣持「ああ、今度飯奢るわ。」
もらる「ん。覚えとく」
ゲート越しに二人を見送り、自分もお姉ちゃんのいるいつもの我が家に帰る。
…その後お姉ちゃんに泣きながら一時間みっちり怒られて、一緒に寝たのはまた別の話。