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ねこ
98
吾輩は世界の害虫
20
ひさしぶりに城での自分の部屋での昼を迎えたヲノ。
ふかふかの柔らかいベッドに、日々の疲れなどもあり、すごく深い眠りで
ヲノの専属執事、ルノーに呼びかけられても起きず、お昼になって自ら目を覚ました。
「お目覚めですか」
「…んん…。おはよう」
「おはようございます。ま、もう昼ですが」
「…うそ…」
「朝食の際にお声がけしたのですが」
「あぁ…。全然起きなかった?」
「はい。ま、それもひさしぶりな感じがしましたが」
「あぁ〜…」
なんて寝起きのボーっとした頭でルノーと会話を交わし
ひさしぶりに家族とお昼ご飯を食べるために、食卓を囲んだ。
「ヲノなんか変わったわよね」
と母が言う。
「…そお?」
「そおよ」
「ま、たしかに変わった気がするよね」
とヲノの兄、カヲが言う。
「そうよね?」
「ま…。変わった、よね?」
意味あり気にヲノを見るカヲ。
「…ま」
その間、父も、もう1人の兄キリは静かに黙々とご飯を食べていた。
ヲノにはもう1人姉がいるのだが、姉は自由人でほぼ家にいない。
なのでほぼ毎日のように1席だけ空席がある。
食卓も相変わらずって感じか
と思うヲノ。お昼ご飯を食べ終わったヲノは城を出て行こうとする。
というかダインたちの元へ戻ろうとする。すると
「あら。お出かけ?」
と母が気づく。
「あぁ」
大きくて高い玄関のドアの前の広間で母と話す。
「珍しいじゃない」
「珍しい?」
「うん」
…つい昨日まで家空けてたのに?ルノーから聞いてるはず…だよな?
と思うヲノ。
「どこ行くの?」
「いや…。ちょっとぉ〜…散歩?」
「散歩」
「そう…」
と不思議がる母に、なかなか出て行けずにいると
「ヲノ様」
と声が聞こえる。ルノーだった。
「あら、ルノー」
「奥様」
と頭を下げるルノー。
「ヲノ様とのお散歩、同行するはずだったのですが、少し遅れてしまいました。申し訳ございません」
と言うルノー。
「あらそうだったのね?ルノーが一緒なら安心だわ」
と笑顔になる母。しかしヲノは
ルノーが一緒だとダインのとこ戻れねぇ…
と思っていた。ルノーが玄関の大きく高いドアを開け、ヲノが先に外に出る。
「ではいってきます」
とヲノの母に言うルノー。
「はーい。いってらっしゃーい」
と手を振る母。ドアが閉まり、母の姿が城の中にしまい込まれた。ルノーと一緒に長い階段を下るヲノ。
その間ルノーに、どう言って離れてもらうか。ということを考えていた。するとルノーが
「今日もお友達のお家に行かれるんですよね?」
と言ってきた。
「え?」
まさかルノーから、離れる提案をしてくるとは思わず一瞬面食らった。しかし好機を逃すまいと
「あ、そうそうそうそう」
必要以上に乗っかった。
「ですよね。奥様には私から言っておきますので」
「ありがとう。助かる」
と話していると階段が終わり、門の前に来た。門番のヒトが門を開いてくれる。
「では。くれぐれもお気をつけて」
と言うルノー。
「うん。じゃ、また」
と言って門から外に出ようとするヲノを
「あ」
と引き留めるルノー。そして
「ちょっと失礼します」
と言いながらヲノの服装を整える。整えられながら
いや、どうせぐっちゃぐちゃになるけど…
と思うヲノ。
「これでよし。一応メモトゲのニンゲンですからね。
しっかりしないと私が旦那様や奥様に怒られてしまいますから」
「ん。ありがとう」
「では、くれぐれもお気をつけて」
「はいはい」
と言って門から外に出ていくヲノ。さすがに門から出てくると
「ヲノさんだ」
「メモトゲの坊ちゃんだ」
となるので、木陰に入ってフード付きの服を着てフードを髪が隠れ
顔も影で目元が隠れるほど深く被り、町に戻る。すると髪色が派手なヒトとすれ違う。思わず振り返るヲノ。
左右でピンクと黄色に分かれた髪を三つ編みのツインテールにして
左耳には小さな提灯をぶら下げ、右耳からは小さな風鈴をぶら下げ
赤い字で「祭」と書かれた黄色い法被羽織り、ダボッっとしたパンツに下駄を履いていた。
派手すぎる…
そう思い、もう慣れた道を歩き、ダインの家へと行った。ドアを開け、「ただいまー」と言おうとした。
もはや無意識に「お邪魔します」ではなく「ただいま」と言う意識に変わっていた。
しかしドアは開かなかった。
「あれ?」
ドアノブをガチャガチャしてノックし
「ダイーン。帰ったー。…」
名前を大声で言うわけにもいかないしな…
と思い
「オレー」
と誰でも言えることを言った。しかし反応はない。
仕方がないので大通りに出て、おっちゃんの武器屋へ向かった。
「おっちゃん」
「おぉ〜!戻ったか」
「あぁ。で、今ダインとこ行ったら鍵かかっててさ」
「あぁ。あいつなら浄めに行ったぞ」
「あぁ、そうか」
「柊さんも一緒に行ったから、おまえさん1人だな」
「どうしよう。なんもすることない」
「まあぁ〜、今から森行って出会えるとも思えないしな」
「だよな」
「んん〜…」
と太い腕を組みながら悩むおっちゃん。すると
「ヲノ様?」
と声をかけられる。そちらを見るとルノーが立っていた。
ヤバッ
っと思い、フードをさらに深く被り
「誰ですかーそれ。人違ーイジャナイデースカー」
と声色と喋り方を編に変えるヲノ。ルノーはクスッっと笑い
「何年ヲノ様に仕えてると思ってるんですか。そんな格好しててもわかりますよ」
と言う。そして続けて
「もしかして、お友達のところに行ったけど、お友達が出掛けていて、暇を持て余しているとか」
と言うルノーに
こいつはなんでこんな都合のいいときに現れるんだ?さすがはオレの専属執事ということなのか?
それにオレの都合のいい解釈ばっかり。…ま、それに関しては助かるけど…
と思うヲノ。
「じっ、実はそうなんだよね」
と全面的に乗っかることにした。
ま、嘘は言ってない、よな?
と思うヲノ。
「そうでしたか」
と話していると
「ルノー」
とおっちゃんがルノーに声をかける。するとルノーがかしこまり
「キャブさん。おひさしぶりです」
と頭を下げる。そう言われたおっちゃんは身震いしていた。
「え。知り合い?」
とおっちゃんとルノーを交互に見るヲノ。
「あぁ。こいつがまだおめぇさんより小さいときからの付き合いよ」
「そんな前から?」
とおっちゃんに言ってからルノーに視線を移すヲノ。
「はい。当時はお世話になっておりました」
「よしっ。じゃあ、昼飯がてら、ヲノの暇つぶしとして昔話でもしてやっか」
ということでおっちゃんがお昼ご飯に行き
それにルノーとヲノも付き合い、おっちゃんとルノーの昔話を聞くことにした。
「ルノーはな。今は見る影もないけど、結構なやんちゃ坊主だったんだ」
「いえいえ」
「そうだったんだ?」
「おまえさんよりよっぽどな」
というおっちゃんの言葉に「へぇ〜」と言わんばかりにルノーを見るヲノ。
「そこまでではなかったかと」
「いや?まだまだガキのくせにLimpiador(リンピアドール)なるとか騒いで、「武器くれ」なんて言ってな」
「え!?ルノーが!?リンピアドールに!?」
目を輝かせるヲノ。
「聞いてない!」
「ま、…言ってなかったですからね…」
と言うルノーの様子を見て
「なんだ。隠してたのか」
とおっちゃんが訊ねる。
「いや…そんなことはないですけど…」
「ルノーも立派になったな。敬語なんて使えるようになって」
「使ってなかったの?」
「あぁ。さっきも言った通り、リンピアドールになるから武器くれって
敬語使えないわ、Worth(ワース)も払わず武器持ってこうとするわ、ほんとめちゃくちゃだったんだ」
というおっちゃんの話に、恥ずかしい過去を言われて誤魔化すようにお茶を飲むルノー。
「へぇ〜。オレの執事になったときにはもうそんなことなかったよね?」
「覚えておられるのですか?」
「いや覚えてないけど。てか0歳のときのこと覚えてたら恐怖でしょ」
「マキナのやつらは覚えてるらしいけどな。映像として鮮明に記録されてるから、思い返すとき楽らしいぞ」
「へえぇ〜。そう聞くとマキナっていい種族だな」
「ま、他の種族がマキナになるってときは、最初は適合がなかなかしんどいらしいぞ。
体のメンテナンス、ある程度自分でできないとだからメンテナンスの仕方覚えないといけないし
機械の割合が多い場合は燃料を流し込まないとだから、それが厳しいとか聞くぞ」
「うげぇ〜…。じゃあ無理だ」
「それに目と脳に機械が繋がってないと、映像として残せないからな」
「そっか。で?ルノーは?リンピアドールになったの?」
と納得してからヲノはルノーに聞く。
「あ、はい。そのとき諸々お世話になったのが、キャブさんなんです」
とルノーが言うとドヤ顔をするおっちゃん。でも
「でもあれだな。ルノーに「キャブさん」なんて言われると、体がむずむずするな」
と眉間に皺を寄せて大きな体を震わせるおっちゃん。
「え。当時はなんて呼ばれてたの?」
と聞くヲノに
「いやそれは」
と止めようとするルノー。そんなのお構いなしに
「ジジイだな」
とおっちゃんがあっさりと言う。
「ジジイ?」
「そうだ。「おいジジイ。武器くれ」ってな具合にな」
恥ずかしそうに顔を手で覆い隠すルノー。
「へえぇ〜。意外すぎる」
「で、そっからオレが手解きしたんだ」
「そっか。おっちゃんも前は」
と言うヲノにおっちゃんが深く頷く。
「ま、といってもオレもそんときにはとっくに現役を引退してたからなぁ〜。
それに種族も違う。だから最初は渋ってたんだ」
「でも結局?」
「そう。こいつが毎日のように「ジジイ教えろ。ジジイ教えろ」ってしつこくてな?」
「そうなんだぁ〜?」
とルノーの顔を覗き込むヲノ。ルノーはお茶を一口飲み
「お恥ずかしい限りです」
と言う。
「で、オレが折れてな。ひさしぶりにオレが一肌脱いだってわけよ」
「へえぇ〜。おっちゃんが浄める姿見てみたかったな」
「いや、ま。実のところ、ルノーの飲み込みが早すぎて、オレはあんま浄めてないんだ」
「え。ルノーそんなすごかったの?」
とルノーを見るヲノ。ルノーはスンとした顔のまま
「いえ。そんなことは」
と言う。
「ま、オレたちムスコルは筋肉自慢でな」
と言いながらおっちゃんは力こぶを見せつける。
力こぶはまるでちょっとした岩のように大きく、腕はちょっとした丸太のように太い。
「ダインみたいにハンマーとかを振り回したり
でっけぇ剣、大剣っつーんだけどな?大剣でぶった斬ったりする一方
ルノーみたいなエルフは、オレらと違って筋肉は少ねぇが、生まれつき魔力が高いから魔法が使える。
だからそれと武器を併用することで、スマートに浄めができるっつー寸法よ」
「はあぁ〜。でもオレルノーの魔法見たことない」
「使わないに越したことはありませんので」
「まあな。今は護る立場なんだから、武力行使しない平和な状況に越したことはないわな」
「仰る通りです」
というルノーの言葉に身震いするおっちゃん。
「で?なんでそんな素行不良のルノーがうちの執事になったの?」
ヲノに「素行不良」と言われ、お茶を飲んでいたルノーはむせる。
「あぁそれな。ま、ルノーはな、リンピアドールとして腕が良かったんだ」
「へぇ〜?」
ルノーの顔を覗き込むヲノ。
「腕は良かったんだが、リンピアドールって職業の要(かなめ)を理解してなくてな?」
「要?」
「なんだと思う?」
「…あれ?救う気持ちのやつ?」
「正解だ。こいつにはそれが欠けててな」
「あぁ〜…」
察したようなヲノの視線に「ん“ん”っ」っと咳払いをするルノー。
「それに足元をすくわれて、あるとき大怪我をしたんだ。生死を彷徨うくらいのな」
「マジで!?」
「あぁ。オレも心配したよ。お世話させられて迷惑かけられて、いつの間にか息子みたいに思ってたからな」
と言いながらルノーを見るおっちゃんも目は優しかった。
「そんとき守ったのが、ルヲさんだ」
「母さん?」
「そうだ。もちろんルヲさんの護衛はいた。だけど、力不足だった。
んでルヲさんを襲おうとしていたマナトリアと刺し違えたのがルノーだった。
遊びな気持ちがあったからこそ、本気のマナトリアの攻撃に遅れを取ったんだろうな。
ただ持ち前の反射神経とかで相打ち、ま、ルノーは助かったがな。相打ちに持ってったってわけだ。
で、ルヲさんがルノーの腕を買って、そしてお礼も兼ねて城で雇うことにしたんだ」
「へえぇ〜。…ん?でもオレの執事やってんじゃん」
「それな。もちろん最初はルヲさんの護衛として雇われたんだ。
もちろん“素行不良”な部分は徹底的に直されたらしいけどな」
「素行不良」と言うとき、両手の人差し指と中指を立てて
クイクイと曲げるようなジェスチャーをするおっちゃん。
「で、最初はルヲさんの護衛だったんだが、おまえさんが生まれてからルヲさんが
おまえさんの専属執事にするって言ったらしくてな」
「母さんが?」
「らしいぞ。で、そっからずっとおまえさんの専属執事ってわけだ」
「へえぇ〜。随分出世したんだねぇ」
「おかげさまで」
ヲノは納得してジュースを飲んだが、ふと疑問が浮かんだ。
「ん?なんでおっちゃんはそんな詳しく知ってるわけ?」
その疑問をそのままおっちゃんにぶつける。
「あぁ。ま、オレがこいつを息子みたいに思ってるように
こいつもオレのことを親父みたいに思ってるってこった」
と説明を終えたようなおっちゃんに
「…ん?どゆこと?」
と聞くヲノ。
「あ?察し悪ぃな。ちょくちょく会って、そんときに報告してくれてるってことよ」
「あぁ。そーゆーことか」
「2人で会うときは、砕けた口調なんだけどな」
チラッっとルノーを見るおっちゃん。ルノーの涼しい顔をしながらお茶を飲み
「ヲノ様の前ですから」
と言う。
「ま、また今度2人でな」
とルノーの頭に、大きく分厚い手を置き、髪をわしゃわしゃっとして立ち上がるおっちゃん。
「随分長く休憩しちまった。店戻らねぇと」
と言うおっちゃんに
「今そんなかき入れ時でもねぇだろ」
と笑いながら呟くルノー。
「聞こえてんだよ」
とルノーにデコピンをするおっちゃん。
「いって!種族考えろって毎回言ってんだろ!」
と言うルノーに、笑いながら
「またな!」
と手を振るおっちゃん。ヲノが手を振り、ルノーも額を摩りながら、不機嫌そうな顔で手を振る。
「でも知らなかったな。ルノーの過去」
「まあ。話す機会もありませんでしたし」
「え。ちなみ武器なに使ってた?」
など2人で話して、気づいたら夕暮れになった。お店を出る2人。
「じゃ、そろそろ友達も帰ってるだろうから」
「そうですね。私も城に帰ります。これだけ長く城を空けていたら奥様に叱られてしまうかもしれません」
「あ、ごめんね。オレのせいで」
「いえいえ。ヲノ様に付き合うのが私の一番の仕事ですから。ヲノ様といたといえば叱られないはずです」
「あぁ〜。そーゆーとこが“素行不良”の名残りって感じ?」
「あ、いえ、あ」
とあたふたするルノーに
「ま、ルノーのこと知れてよかったよ。近くにいたのに全然知らなかったんだなって」
と笑顔で言うヲノ。
「…抱きしめてもいいですか」
「は?」
と笑いながら言うヲノ。
「あ、いえ。なんでもないです」
「じゃ、また城に戻ったときは、よろしく」
「はい。くれぐれもお気をつけて」
「ルノーも“素行不良”はほどほどに」
と笑顔で言いながら歩いていくヲノ。ヲノのお辞儀をして見送るルノー。
ヲノはダインの家に行き、ルノーは城に戻った。しかしダインは家には戻っておらず
そうか
と思い、いつも行く居酒屋へと向かった。すると案の定ダインと愛がいて
「おぉ!おかえり!」
「おかえりなさい」
とダインと愛が迎えてくれて嬉しくなった。愛とダインのいるテーブルに合流する。
「じゃ、3人で乾杯するか」
ということで
「「「かんぱーい!」」」
乾杯した。
「で?どうだったよ。ひさしぶりの実家は。坊ちゃん」
「ま、快適だったよ。ひさびさだったけど割といつも通りって感じ?」
「ご家族はご心配されていませんでしたか?」
「あぁ。それがなんかいつも通りって感じで」
などと話していた。
城に戻ったルノーはというと、電気をつけていない、暗いヲノの部屋の壁に寄りかかりながら
「目悪くしますよ」
と暗い部屋の中でゲームをする人物に言っていた。
コメント
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うわああああルノーの過去編きたああああ😭💕💕 「ジジイ教えろ」とか言ってたやんちゃルノーとか想像つかなすぎて笑ったんだけど!! おっちゃんとの親子みたいな関係も尊すぎるし、ヲノの母さんを守ったエピソードで一気にルノーがもっと好きになったよ…。普段の完璧執事とのギャップがえぐい!! そしてヲノが無意識に「ただいま」って言おうとしてるの、もうダインたちが本当の家族になってる証拠だよね…🥺✨ 最後の「暗い部屋でゲームする人物」の伏線も気になる〜!! 次話も楽しみにしてるよ!!