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優しい風が吹く丘で、散歩をする女性がいました。
白いワンピースが良く似合う女性でした。帽子を被っていて、翡翠色の日傘をさしていました。
僕はある日その女性を見た時胸の鼓動が早まったのを感じました。
僕はその時その丘に花の書きに来ていました。
黄色く小さい花が咲く丘の一角。しゃがんで懸命に花を書いていました。
ふと顔を上げるとその女性が居たのです。
「画家様ですか?」
そう尋ねるので、答えました。
「無名の新人画家…にもなれませんが。一応は…」
すると彼女はくすりと笑い、私を書いてほしいと言ったのです。
断る理由が見つかりません。
僕は真剣に書きました。左を向いて楽しそうに散歩をする彼女を。
すると、彼女の迎えの者が来たのです。
彼女は異国の姫でした。
絵はまた取りに来る。そう言い残して去って行くました。
12年間。12年間、その丘で絵を書き続けました。
ですが彼女は一度も来ませんでした。
彼女に会いたくてもう一枚。記憶の彼女を書きました。
右を向いて凛と立っている彼女を書きました。
彼女の絵を初めて描いた日から24年後。
彼女が丘の来ました。
声を掛けようとしますが、彼女はセーラー服を着た少年と楽しそうに歩いていました。
彼女はお母さんになっていました。
僕は24年間の虚無の恋の真実を目の当たりにしました。
あぁ、何時か叶うと思っていた恋は脆くも儚く散っていきました。
その日の夜、横目で見た彼女を書きました。此方を見て笑う、黄色い花が周りを囲む。
少年も書きました。母の後ろに此方を覗いています。
嗚呼、もう生きる希望が無いのです。
2日後 近隣の湖で水で破けた絵と共に彼の水死体が見つかりました。
モネ の 散歩、日傘をさす女性 計三枚 を 元 に 書きました 。
本当 は 妻 カミーユ と 息子 ジャン を 美しい光 と 風 に 包まれる よう に 描いた 作品 です 。