◻︎ドラマチック
とっておきの美味しい紅茶を淹れる。
部屋中にふんわりいい香りが広がって、空間から癒される気がする。
「いい匂い!で、息子はBLで娘はストーカー?なかなかドラマチックなファミリーだね」
息子と娘の話を礼子にした。
「ドラマチックねぇ。たしかに他人が見たらそうかも?ねぇ、礼子のとこも息子だったよね?県外の大学だったっけ、元気?」
クッキーに手を伸ばしていた礼子の動きが、ピタ、と止まった。
「え?」
「はぁ、忘れてたのに…」
「何を?息子ちゃん、どうかしたの?」
「この年でいきなり、二人の孫ってどう思う?それも小学生だよ?」
「ごめん、言ってる意味がわからない」
礼子の話だと。
息子は大学3年、一人暮らしで、バイトをしながら大学に通っていた。そのバイト先のファミレスである女性を好きになって、交際を始めて…。
「結婚したいって言い出したのよ、一回り以上も年が離れていて、子持ちなのよ、二人も」
「それはまた、そっちの方がドラマチックかも?」
「その上ね…」
「まだ何か?」
「妊娠したって…」
「なんと!!じゃあいきなり孫3人?」
「そうなのよ、どうしよう?ねぇ、どうしたらいい?」
「どうって…どうしようね…。ね、相手の女…の子、というか女性には会ったの?」
「近いうちに連れてくるって言ってる」
「ご主人はなんて?」
「……」
黙り込む礼子。
「礼子?」
「にぎやかになるね、だって。お気楽過ぎるでしょ?」
「え?あはは、じゃあもう決まってるようなもんじゃない?」
「えーっ、やっぱり?」
多数決をとったら、多分、礼子対その他大勢。
「色々大変だろうけどさ、頭ごなしに反対しない方がいいと思うよ」
「んー、ね、美和子も来てよ、挨拶に来るって日にさ。私一人だとオロオロしちゃうよ」
「てか、私、他人だから」
「誰より近い他人だから、お願い!」
両手を合わせて拝まれる。
「まあ…いいけど」
「やった!これで百人力、ゲット!」
次の週末、礼子の一人息子、雅史と、その恋人の成美が挨拶にやってくるその場に、私もお邪魔した。
_____私の立ち位置は…さしずめ小姑だな
なんて思った。
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