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46 - 第46話 礼子の一大事!

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2025年03月04日

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◻︎成美の嘘



とても空が青かった。

礼子の家に行く途中にある和菓子屋さんで、栗きんとんと、お煎餅を買った。


「こんにちは!礼子、来たよ」

「いらっしゃい、あと10分くらいで着くってさっき連絡があったとこ」

「そう。あ、これお茶菓子にどうぞ」

「ありがとう、上がって」


そういえば礼子の家に来たのって、ばあさんがいなくなった時以来だなと思い出した。

ばあさんの部屋はもう片付けられていて、仏間とひと続きの和室にしてある。


「こんにちは、美和子さん」

「ご主人もお元気そうですね」

「えぇ、仕事を変わってから随分と気持ちに余裕が持てるようになりましたよ。こんなことならもっと早くに転籍しとけばよかったと後悔してます。まぁ、金銭的には苦しくなりましたけどね」

「いいんじゃないですか?気持ちに余裕があるって大事なことだと思いますよ」



ピンポン♪

ピンポン♪


玄関のチャイムが鳴った。


「はぁーい」


いそいそと礼子が玄関へ向かった。

中へ招き入れて、和室に通すようだ。

私はエプロンを借りて、お茶を用意することにした。


_____こうなったら、家政婦は見ちゃったをやってやろう!


茶托を探してお茶を淹れる。

買ってきたお菓子を菓子皿に並べて持っていく。


それぞれの紹介が終わったところのようだった。


「お茶をお持ちしました」


と、まるで家政婦のように差し出す。


「あ、こちらは私の友達の美和子。身内よりも近しい関係かも?美和ちゃん、こっちが私の息子の雅史、で、こちらが松崎成美さん」


「はじめまして、礼子の友人の美和子です。今日は家政婦としてお手伝いにきました」


雅史と成美の二人に向かって頭を下げた。


「松崎成美です。よろしくお願いします」

「俺は昔、会ったことあるよね?」

「そうね、まだ小さかった。こーんなに大きくなってたんだね」


まるで、久しぶりに会う親戚のおばさんみたいな言い方をしてしまう。


「そうなのよ、大学生になったと思ったら、結婚したい人がいる、とか言うんだよ。早すぎるよー」


それは礼子の本音だと思った。


「私、あっちにいるから何かあったら呼んでね」

「ううん、ここにいてよ」

「えーっ」


じゃあ、と座布団を自分で用意して少し離れて座った。


「それで…どうするつもりなんだい?」


ご主人が穏やかに話し出す。


「俺、もう大学をやめて仕事をしようと思う」

「え、あと1年で卒業なんだよ?」

「だけど、あと半年もしたら子供が産まれるし、そうしたら生活できないよ」

「松崎さん、予定日はいつ?」


それまで俯きがちだった成美が、ハッとしたように顔を上げた。


「え、あの、えっと…」


指折り数えている。


「10月?です」

「え?まだはっきりわからないの?病院は?」

「まだ、行ってません」


消えそうな声で答える。


「どうして?もう二人もお子さんがいるなら、病院に早く行ったほうがいいと思うんだけど」

「すみません」

「母さん、成美は、つわりがひどくてなかなか病院に行くタイミングがないんだよ」


成美の肩を抱きながら、庇うように言う雅史。


「どうしても、産む、それだけは二人の同じ考えなのね?」

「うん」

「…」


うなづく二人。


「でもなぁ…。大学中退ってことは、最終学歴は高卒ってことになる。そうなると就職先も選択範囲が限られるんじゃないのか?」

「それもだけど、せっかく頑張って入った大学を全部なくすことになるよ。これはあまり言いたくないけど、学費だってバカにならないんだから」


私だったらどうするかなあ?と考えながら、冷凍庫にあった肉まんを勝手に温めた。


「ねぇ!ちょっと小腹が空かない?肉まん見つけたから、勝手にあっためちゃった」


私は人数分の肉まんを、テーブルに出した。


「もう美和子ったら!まぁいいか。どうぞ二人も食べて、せっかくだから」

「うん、俺もお腹すいてた、朝から緊張して何も食べてなかったから。ほら、成美ちゃんも食べる?」


肉まんを取って二つに割って、半分を成美に渡す雅史。受け取った成美も口へ運ぶ。

妊婦をいたわって優しいと思うけど。


「大丈夫?成美さん」


私は、肉まんを頬張る成美に声をかけた。


「え?」

「あ、ほら、肉まんってニオイだけで気持ち悪くなりそうだから、つわりは大丈夫かな?って」

「あ…」


食べる手が止まった、成美も雅史も礼子も。

つかの間、誰も動かない。


「もしかして、成美さん…?」


妊娠してないんじゃない?と言おうとした時、成美がうわっと突っ伏して泣き出した。


「す、すみません、ごめんなさい…うわぁ…」

「成美ちゃん、どうしたの?」


雅史が慌てて成美の背中をさする。礼子もご主人もその様子を見ていた。


「ちょい、あんた!妊娠は嘘か?うちの息子をだましたのか!」


どっかの姐さんみたいにドスがきいた口調になった礼子。


「母さん、嘘じゃないよ、だって検査したから。薬局のやつで」

「それ、いつ?」

「えっと、先々週?」

「で、病院はまだ?それならまだ確定じゃないよね?泣いててもわからないよ、成美さん、今からでも病院へ行ってきて、ちゃんと検査してもらって!」

「ごめんなさい、違うんです…ごめんなさい」


まぁまぁとみんなを宥めるご主人。


「母さんも、成美さんも、少し落ち着こう、ね?」

「私、お茶のお代わりを淹れてきます」


そそくさと台所へ立つ。


_____やっぱり妊娠してなかったのか、何が目的なんだろ?


熱いお茶に取り替えた。

冷たい水に浸したおしぼりを成美に渡す。


「ありがとうございます…」

「しっかり冷やさないと、目が腫れるからね」


「で?ちゃんと説明してもらわなきゃわからない、なんでそんな嘘をついたの?」

「嘘じゃないって、母さん」

「あんたは黙ってなさい、成美さんに聞いてるの。二人のお子さんもいる立派な母親でしょ?あなたのお子さんがこんなことになったら、あなたはどうしてた?」


さっきまでより、いくらか声のトーンが落ち着いた。


「すみませんでした…」


淡々と、成美が話し出した。
















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