キルロンド王国 国王 ラグナ・キルロンドに召集された魔法使いたちは、一同に整列していた。
キルロンド学寮
水属性 ガンナー リオン・キルロンド
草属性 メイジ ルーク・キルロンド
岩属性 シールダー ファイ・ソルファ
雷属性 シールダー キャンディス・ウォーカー
炎属性 メイジ シャマ・グレア
岩属性 シールダー グロス・ラドリエ
貴族院学寮
水属性 ガンナー キル・ドラゴレオ
氷属性 メイジ ニア・スロートル
氷属性 シールダー クラウド・ウォーカー
炎属性 メイジ イーシャン・ブロンド
炎属性 ヒーラー リューシェン・ブロンド
魔法学寮
炎属性 メイジ モモ・フレア
水属性 メイジ ルル・フレア
炎属性 メイジ ララ・フレア
岩属性 シールダー ゴヴ・ドウズ
雷属性 メイジ アズール・ウォール
残念ながら、戦争の背景を知った魔法学寮のラズ姉妹と、凪の勧めで参加していた剣術学寮の三人は辞退したが、計16名もの生徒たちが強い意志を胸に参加を表明した。
同伴は、キルロンド王国が国王、ラグナ自らと、生きた英雄、バーン・ブラッドが同行することとなった。
18名による大所帯での移動の為、五台の馬車が静かにエルフ王国へと走り出した。
二日間かけて着いた場所は、
「本当に……ここがエルフ王国なのか……?」
樹木で覆われ、大自然の魔力が通いやすい空が大きく見える場所を想像していたが、反面、瓦礫の中に閉じ込められた地下都市へと案内された。
「今回、私が指揮を務めさせて頂きます。エルフ王国の騎士長、シュヴルス・エルスであります」
騎士長と名乗った、エルフ族のシンボルでもある耳の長い青髪の女性は、全員の前で敬礼をした。
「それでは、キルロンド生の皆様には、これより二名ずつのバディを組んでもらいます」
四人編成でないことに全員が驚いたが、訓練の一環だと割り切り、全員でバディを編成した。
(俺は…………。本音を言えば女の子と組みたい……! だって今回の遠征は貴族院の子も魔法学寮の子もいる……! でも、話しやすさで言えば、同じキルロンド学寮で三年生のキャンディスかなぁ…………)
リオンはグルグルと頭を悩ませる中、歯を食いしばって一人の男の肩を叩いた。
「ルーク…………俺と組んでくれ」
(ヒノトくんたちもきっと頑張ってる……! きっと、この中で一番頭がキレて魔力の扱いが上手いのはコイツだ。俺はこの中で一番強い奴と張り合うんだ……!)
ルークは、表情を動かさず、リオンの目を長い間眺めた後、ニコッと笑って承諾をした。
(はぁ…………出来ることなら、美人三姉妹のフレア姉妹と組みたかったなぁ…………)
「ほら、リオン、さっさと提出。草魔法喰らわすぞ」
「ひゃい…………」
リオンは恨めしそうにフレア三姉妹を眺める。
「ねえ、ララお姉ちゃん。今回も私と組んでよ」
「ごめん……ルル。私、試合の時、モモちゃんを一人にしちゃったこと、今でも考えてしまうの……。だから、今回の遠征は、モモちゃんを支えたいと思ってる」
ルルは、プッと顔を膨らませながらも、動じずにゴヴの元へと駆けた。
「ふん! ララお姉ちゃんはそう言うと思ってたもん! いいよ! ゴヴ! 私と組んでよね!!」
「はぁ〜あ、俺はどうせ、お前らの誰かと組むと思ってたから別にいいよ」
「キャンディスお兄様、僕と組んでみない……?」
「クラウド……。お前はてっきり、俺のことを憎んでいると思っていたが……。いいだろう」
「リューシェン! 私たちの連携を見せつける時が来たわよ!!」
「そうだね!! イーシャン姉さん!!」
「残ったのは私たちのようね。キルロンド学寮のKINGSのシールダー、ファイさんだったかしら?」
「は、はい…………。えっと、あなたは…………?」
「私は、魔法学寮三年、雷属性のメイジ、アズール・ウォールよ」
こうして、中には異色のバディを組む者たちも現れ、バディ決めは滞りなく進んだ。
「それでは、エルフ族の基本的な戦い方を教えます」
シュヴルスは全員の前に立つと、水晶を手にした。
「エルフ族は、他の種族よりも魔力を多く扱える為、仲間からの “バフ” を駆使して戦闘していきます」
魔法学の授業で最初に教わる、味方の身体能力を上げる魔法、ビルアスなどを含めた支援魔法。
それらは、魔法使いであれば全員が身に付けていた。
「キルロンドの皆さんが授業で習う魔法、ビルアスは、初級支援魔法で、仲間単体の身体能力の全体を上げる魔法ですね」
全員がシュヴルスの目を見つめ、真面目に頷く。
「しかし、支援魔法、バフと言っても、身体能力だけではなく、攻撃力を上げたり、防御力を上げたり、更にはダメージを減らすものや、魔力増強、体力増強など、様々な恩恵を味方に与えることができます」
それは魔法学の授業で習うことだが、魔力が発達しているわけではないキルロンドでは、あまり何かに特化した支援魔法は、自分で身に着けた者にしか扱えなかった。
「ちなみに、ビルアス以外の魔法が使える者は……?」
そこで、数名の生徒たちが手を挙げた。
「僕は、氷支援魔法が使えて、仲間単体の速度バフが行えます……!」
最初に声を発したのは、キラ・ドラゴレオのパーティにいた貴族院一年生メイジ、ニア・スロートル。
「私も、あまり自信ないですけど……仲間全体の攻撃力を上げる炎支援魔法が使えます……」
次いで、恐る恐るララ・フレアが手を挙げる。
そして、「ふっふっふ」と、腰に手を当て、ブロンド姉弟が満足気な顔で一歩前に出た。
「私たちは、キルロンドで最も優秀なバッファーだと自負してます! ね、リューシェン!」
「言ってやってよ! 姉さん!」
「私は、サブアタッカーのメイジですが、仲間単体に攻撃力バフ、更に相手の炎デバフ魔法、魔力の消費は激しいけど、味方の炎バフにも貢献できます!」
「俺も、ヒーラーとして治癒魔法を行いながら、味方全体に強力な攻撃力バフが与えられます!」
「ほう、それは素晴らしいですね」
シュヴルスの反応に、二人はニシっと顔を合わせた。
最後に、静かにキル・ドラゴレオが手を上げた。
「僕は、ここにいる人たち、味方ではあるけど、まだまだ敵だと思ってるので伏せておきたかったのですが……。味方単体への体力増強と、相手単体への水デバフ、水デバフを与えた相手の速度を落とす魔法が使えます」
その言葉に、全員が呆然とキルを見つめた。
何故ならそれは、キルは優秀なサブアタッカーで、ガンナーであり、メイジではないという点からだった。
「そ、そうか……。だからヒノトくんとキラくんが相対した時、ヒノトくんの早い攻撃も、易々とキラくんは防ぐことが出来ていたのか……!」
デバフとは、バフが味方への上昇の恩恵ならば、相手を弱体化させる効果を持つ。
キルはそこまでを計算し、キラと共にあの編成を構築させていたのだった。
「言っときますけど、僕はこの遠征中、どこのチームよりも強くなりますので」
そう言うと、キルは全員を睨み付ける。
バディのニアは、愛想笑いを浮かべつつ身を潜めた。
しかし、そんな威圧的な言葉に反論する者がいた。
「あの……元王族のドラゴレオ……。うん、かなり強いと思ってる。でも、うちの兄さんは負けないと思う」
「ル、ルーク…………?」
言葉を返したのは、ルーク・キルロンドだった。
全員が、クールな顔で素っ気ないルークからそんな言葉が出ることに驚きを隠せずにいたが、一番動揺を隠せなかったのは、実の兄、リオンだった。
「へぇ、あの戦いじゃあ、機転が効くだけだと思っていましたけど……それは楽しみです。 “王族様” ……」
そうして、キルとルークは睨み合った。
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