テラーノベル
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私偉い!頑張って投稿してる!
続きからどうぞ!
ヤンキーちゃんは、勘違いされやすい
――最悪だ。
朝から、校内がざわついている。
「え、聞いた?」
「生徒会長とヤンキーが……?」
「やばくない?」
(……は?)
僕――ほとけは、廊下の端でその噂を耳にして、固まった。
「昨日さ、生徒会室で二人きりだったらしいよ」
「付き合ってんじゃね?」
(付き合ってないです!!!!!!)
心の中で全力否定。
声に出したら終わるので、表情はいつも通り不機嫌そうに保つ。
(なんでそうなるんだよ……
生徒会の用事だって言ってたじゃん……)
思い出すだけで、胸がきゅっとする。
昨日のいふくんの言葉。
「優しい」「ちゃんと見てる」。
(あんなこと言うから……)
勝手に期待して、勝手に苦しくなる。
「ほとけ」
その声に、びくっと肩が跳ねた。
(来た……)
振り返ると、そこには噂の中心人物――いふくん。
今日も制服がきっちりしていて、無駄に爽やかだ。
「……なに」
そっけなく返す。
「ちょっと話ええ?」
「……今?」
「今」
(今は心の準備が……!!)
でも、断れない。
断ったら、それはそれで変な噂が立つ。
「……分かった」
◇
場所は、中庭。
昼休みで人はそこそこいるけど、距離は保てる。
(この距離感……
いや近い……
近いけど離れすぎると不自然……
どっちも無理……)
心の中の僕が、忙しい。
「なあ、ほとけ」
「……なに」
「最近、変な噂流れてるの知ってる?」
(知ってるに決まってるでしょ!!!)
「……別に」
嘘だ。
完璧な嘘。
いふくんは、苦笑した。
「生徒会としてはな、
あんまり目立つ噂は困るんやけど……」
(生徒会として……)
その言葉に、少しだけ胸が痛む。
(あ、そっか……
私は“問題児側”だもんね……)
勝手に落ち込んでいると、いふくんが続けた。
「でも、ほとけが嫌な思いしてるなら、
ちゃんと否定しよ思って」
「……え」
思わず顔を上げる。
「俺は、ほとけを守りたいし」
(……は?)
一瞬、理解が追いつかなかった。
(守る……?
今、守るって言った……?
生徒会長が……私を……?)
脳内がパニックだ。
「……は?」
口から出たのは、間抜けな声。
いふくんは少し照れたように頭をかいた。
「いや、その……
誤解でほとけが悪く言われるんは、嫌やし」
(優しさが過剰すぎる……)
胸が苦しい。
嬉しいのに、怖い。
「……余計なことしなくていい」
きつい言葉が、勝手に出る。
いふくんは、少し驚いた顔をした。
「……そう?」
「そう」
(違う!!
本当はしてほしい!!
でも……)
これ以上、近づいたら。
(絶対、バレる)
この、気持ちが。
◇
その日の放課後。
生徒会主催のイベント準備が始まった。
――文化祭の企画会議。
なぜか僕も、呼ばれている。
「……なんで私」
「クラス代表、足りんかったんや」
いふくんは、悪びれもせず言う。
(絶対わざとでしょ……)
会議室には、生徒会メンバーと各クラス代表が集まっていた。
「え、ほとけ来てんの?」
「大丈夫なの……?」
ひそひそ声が刺さる。
(慣れてる……慣れてるけど……)
椅子に座ると、いふくんが隣に来た。
(なんで隣……
距離……
心臓……)
「静かにしてな。始めるで」
生徒会長モードのいふくんは、やっぱりかっこいい。
(好き……)
話し合いが進む中、意外なことが起きた。
「えーっと、装飾担当どうする?」
「人手足りなくない?」
「力仕事いるよね」
誰も手を挙げない。
(……こういうとき、だよね)
僕は、少し迷ってから手を挙げた。
「……私、やる」
一瞬、空気が止まる。
「え」
「ほとけが?」
ざわざわ。
いふくんは、少し目を見開いてから、にこっと笑った。
「助かるわ。ありがとう」
(やめて……
そんな顔で言わないで……)
会議後。
「ほとけ、ありがとうな」
いふくんが声をかけてくる。
「……別に」
いつもの返事。
「ほんまは、面倒見ええよな」
(だからやめてって!!!)
「……生徒会長は、私をどうしたいの」
気づけば、そんな言葉が出ていた。
いふくんは、一瞬考えてから言う。
「どうしたい、って……
友達として、ちゃんと知りたい」
(……友達)
胸が、少しだけ、ちくっとした。
「……ふーん」
それ以上、何も言えなかった。
◇
その夜。
ベッドに寝転び、天井を見る。
(友達……)
分かっている。
いふくんは、優しいだけ。
生徒会長として、
一人の生徒として。
(でも……)
期待してしまう自分が、嫌だ。
(私がヤンキーじゃなかったら……
もっと素直だったら……)
スマホを握りしめる。
明日も、
また顔を合わせる。
(素直になりたい)
でも、まだ――怖い。
◇
翌日。
装飾作業で、二人きりの時間が増えた。
「ほとけ、その脚立押さえといて」
「……分かった」
距離が近い。
声も近い。
(落ち着け……
私はただの作業員……)
脚立が、ぐらっと揺れた。
「わっ」
反射的に、いふくんの腕を掴む。
一瞬、静止。
目が合う。
(近……近すぎ……
無理……)
「……だ、大丈夫?」
「……うん」
心臓が、耳元で鳴っている。
そのとき。
「ほとけ」
いふくんが、真剣な顔で言った。
「無理せんでええからな」
(……優しすぎる)
胸の奥で、何かが崩れた。
(もう……
好きなの、隠せない……)
でも、まだ言えない。
――ヤンキーちゃんは、今日も素直になれない。
それでも、
確実に距離は縮んでいた。
コメント
2件
言っちゃうの!?バレちゃうの!?もう早く読みたいです笑