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ヤンキーちゃんは、ついに素直になる
――噂というものは、しつこい。
「ねえねえ、結局どうなの?」
「生徒会長とヤンキー、付き合ってる説」
「否定してないよね?」
(否定できるわけないでしょ!!!)
僕――ほとけは、教室の窓際で机に突っ伏しながら、心の中で叫んでいた。
文化祭準備が本格化してからというもの、
僕といふくんが一緒にいる時間は増え、
それに比例して噂も加速していた。
(いふくんは、
「気にしなくていい」って言うけど……)
気にするに決まってる。
だって。
(私は……
本気で、好きなんだから)
冗談でも、噂でもなく。
軽い気持ちでもなく。
誰が聞いても引くくらい、
重くて、深くて、どうしようもない恋心。
――なのに。
本人を前にすると、言えない。
「ほとけ」
その声が聞こえただけで、心臓が跳ねる。
(来た……)
顔を上げると、いふくんが立っていた。
「今日の放課後、時間ある?」
「……また生徒会?」
「ちゃう。
文化祭の最終確認や」
(最終確認……
ってことは……)
文化祭は、明日。
つまり――
この微妙な距離感も、
明日で一区切り、ということだ。
「……ある」
短く答える。
いふくんは、いつも通り優しく笑った。
「ありがとう」
(好き……)
◇
放課後の体育館裏。
最終確認、という名目だったが、
周囲に人はいなかった。
「ここ、装飾ずれてへんかな」
「……そこ、直す」
黙々と作業をする。
沈黙が、妙に落ち着かない。
(この空気……
なにか、言わなきゃ……)
でも、言葉が出ない。
いふくんの横顔を見ていると、
胸がいっぱいになってしまう。
「なあ、ほとけ」
不意に、いふくんが口を開いた。
「最近、無理してへん?」
「……してない」
即答。
でも、嘘だ。
「ほんま?」
「……」
黙る。
いふくんは、作業の手を止めて、僕の方を向いた。
「なあ」
真剣な声。
「噂のこと、
本当はどう思ってるん?」
(……聞くんだ、それ)
逃げたかった。
誤魔化したかった。
でも――
「……嫌じゃない」
小さな声で、そう言った。
自分でも驚くほど、素直だった。
いふくんは、一瞬目を丸くしてから、少し照れたように笑った。
「そっか」
(それだけ……?)
胸がざわつく。
「……でも」
続けたのは、僕だった。
「誤解されるのは、嫌」
「……うん」
「生徒会長に迷惑かかるのも、嫌」
「……」
「……だから」
ここまで言って、言葉に詰まる。
(言え……
今、言わなきゃ……)
心臓が、うるさい。
逃げたら、きっと後悔する。
「……私は」
拳をぎゅっと握る。
「私は……
生徒会長のこと……」
そこまで言った瞬間。
「ほとけ」
いふくんが、遮るように名前を呼んだ。
「ちょ、ちょっと待って」
「……は?」
思わず、睨む。
(今の流れで止める!?
勇気出したのに!?)
いふくんは、珍しく慌てた様子だった。
「いや、その……
俺も言いたいことあって……」
(……え)
いふくんは、一度深呼吸してから、真っ直ぐ僕を見た。
「ほとけのこと、
ずっと気になってた」
……一瞬、世界が止まった。
「最初はな、
怖いって言われてるの聞いて、
気になっただけや」
「……」
「でも、話してみたら、
不器用で、優しくて、
ちゃんと人のこと考えてて」
(やめて……
心臓……)
「俺はな」
少し照れた笑顔で、いふくんは言った。
「ほとけのこと、好きやで」
……え?
(え?
今、なんて……?)
脳が処理を拒否している。
「……は?」
またしても、間抜けな声。
いふくんは苦笑した。
「そんな反応されると思わんかったわ」
「……ちょっと待って」
頭を抱える。
(好き……?
生徒会長が……
私を……?)
「……からかってる?」
「本気」
即答。
胸が、ぎゅっと締め付けられる。
「……私は、ヤンキーだよ」
「知ってる」
「……態度悪いし」
「知ってる」
「……素直じゃないし」
「それも含めてや」
(ずるい……)
そんなこと言われたら。
「……私の好き、重いよ」
半分、本音。
いふくんは、少しだけ驚いてから、笑った。
「奇遇やな」
「……なにが」
「俺もや」
思わず、吹き出した。
「……生徒会長のくせに」
「ほとけの前では、ただの男や」
(……もう)
胸の奥が、じんわり温かくなる。
「……私さ」
顔が熱い。
「素直になりたいって、ずっと思ってた」
「うん」
「でも、怖くて……」
「うん」
「……今なら、言える」
深呼吸。
「……好き」
たった二文字。
でも、全力。
いふくんは、嬉しそうに笑った。
「うん。
知ってた」
「は!?」
「態度で分かりやすかったで」
「どこが!!!」
思わず叫ぶ。
「めちゃくちゃ分かりやすかった」
「……最悪」
顔を覆う。
(全部、バレてた……)
「でもな」
いふくんが、そっと言う。
「その不器用なとこ、
俺は好きや」
――完全に、負けた。
◇
翌日、文化祭当日。
「え、二人付き合ってるの!?」
「公式!?」
噂は、あっという間に事実になった。
「……見るな」
人の視線に、つい睨む。
「ほとけ、怖い怖い」
いふくんが笑う。
「うるさい」
でも、手はしっかり繋いでいる。
(……恥ずかしい)
「ほとけ」
「なに」
「素直になれたな」
「……少しだけ」
そう答えると、いふくんは満足そうに頷いた。
「それで十分や」
夕方、校舎に夕焼けが差し込む。
僕は、隣にいる生徒会長――
いや、恋人を見上げた。
(ヤンキーでも、
素直じゃなくても)
好きって気持ちは、本物だ。
――ヤンキーちゃんは、素直になれた。
少しずつ、
でも確かに。
この恋は、
ちゃんと、幸せだ。
コメント
5件
わあああああああ!! 不良と生徒会長という組み合わせと青組という物からしか得られない栄養がここにあるッッッ!!
キター!!!うわぁーまじで不器用っていいね?!好きバレしちゃってる💎くんも最高だぞ、そして、安定に🤪くんのイケメン度も最高👍えぎぃ…ツンデレ、不器用しか勝たんな