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お別れ会があった。
引越しをする子がいて出し物をしようと岡山先生が提案したのだ。
富永カナのグループは、【ひっつき虫】と言うのをやる事にしたらしい。
何が楽しいのか分からないが、当人達は楽しそうだ。
もちろん、マリもその中に入っているつもりだった。
「ひっつき虫♪ひっつき虫♪ボンドでペタ!離れない離れない〜」
富永カナに平原マリコがくっつき、砂川アヤノ、咲良ユミが続いていく。
マリは最後にユミの後ろにくっつく。
「あのさ、」
富永カナがマリを半笑いで見ていた。
「歌的に人数合わないんだよね、やめてくれる?」
あの時の富永カナの顔は忘れられない。
ユミの方へ視線を向けると、顔を背けられた。
結局マリは参加出来ず座ってみているだけだった。
この時、初めて惨めな感情を覚えた。
マリの通う小学校では、2時間目の後にあおぞらタイムがある。普通の休み時間より5分長かった。
「すべり台鬼しよう」
何かを提案するのは富永カナだ。
休み時間は遊ぶ競争率の高い、すべり台。
マリは皆の為に一番に取りに行こう、そう心に決めていた。
2時間目が終わるとすぐに走り出し、誰よりも早く玄関ホールへ着く。
勿論、富永カナや平原マリコ、砂川アヤノ、咲良ユミも後に続いていた。
これなら皆で遊べそうだ、マリは嬉しくなりながら下駄箱から靴を取り出した。
置いた瞬間、突然、富永カナがマリの靴を蹴っ飛ばした。
靴はホールから飛び出て学校の外へ。
マリは富永カナが笑っていたので、同じように笑っていた。遊びだと思った。
上履きで外に出て拾おうとしたら再び蹴られる靴。
「や、やめてよ〜」
ヘラヘラと笑うマリ。
「パース!」
富永カナは砂川アヤノへ靴を投げた。
上手くキャッチするアヤノの方へマリは駆けて追いかける。さすがに返して欲しかった。
「パスパス!」
ずんぐりしたアヤノは平原マリコに靴を投げる。
マリは小さいがすばしっこい。平原マリコに渡った靴を取ろうと走った。
まずいと思ったのか平原マリコは後ろ向きに高く靴を投げた。
その靴は屋根の上にぽつりと乗ってしまった。
「あーあ、乗っちゃったね」
三人は笑っていた。マリはさすがに焦って男の先生に頼み取ってもらった。
長いハシゴを登って、マリの靴を取ってくれたのは隣のクラスの優しい先生だった。
勿論この事は担任に話される。
戻ると眉間に皺を寄せた岡山先生が教室の真ん中で待っていた。
「何やってんだ!!あんな所に靴を乗せるなんて!!!!」
私は今となれば冷静に言い返せていたかもしれない。
しかし、マリは子供なのだ。
マリは悪くない。オロオロして富永カナ達を探す。
教室の出入口に富永カナ、平原マリコ、砂川アヤノ、そして咲良ユミが苦笑いして立っていた。
誰も「私がやりました」「白野さんが乗せたんじゃありません」とは言わない。言うわけない。
「先生が話してる時はこっちを見なさい!!!」
ドンと小突かれる。
痛いし、惨め。大人の人からの間近の怒鳴り声、クラスの人達の視線の恥ずかしさ。
マリには耐えられなかった。
先生から解放された後、走って自分の席に突っ伏すと声を上げて泣きじゃくった。