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「潤――ッッ!! なんで先生に余計なこと言うのっ! 初夜なんか済ませていないのに変なこと言わないでよッッ!!!!」
僕は怒り狂った。しかしヤツはどこふく風。
「彼女の首筋にキスマーク付いてた。睦月が付けたんだろ?」
「そうだよ。でも、それだけだから。今日の夜、僕のライバルが店(おりがみ)に来るんだ。だから牽制用に付けただけで、まだ初夜終わってない」
「これ見よがしにキスマークが付いていたら、普通ヤったって思うだろ」
「僕は普通じゃないんだから、潤と一緒にしないでよ!! 昨日、頑張ったけれどなんかダメだったというか…。だから先生に添い寝してもらってそれで我慢して余計に辛かったというか…」
「添い寝? アハハハッ……お前バカ?」
「バカって言うな!!」
「わかった。なら、どうしてそうなったか検証しなきゃいけない。詳しく聞かせてみろ」
「言いたくない」
「じゃ、お前を大学に送り届けたら、店(おりがみ)に戻って奥様から聞き出すから別にいいけど」
「ぜったいやめて」
「ん、話せ?」
この男に口では勝てない。仕方なく昨日、自宅に戻った所から遡って話すことになった。
水島敬――…先生の同級生のえくぼ男は侮れない。あいつ、ぜったい先生狙いで店に来たんだ。でも、残念だったね。タッチ差で僕が佑里香先生との距離を詰めることに成功したんだ。諦めの悪さは僕の方が上だ。あんなヤツに先生は渡さない!
先生が偽装婚だと思っている間に、僕のことを好きになってもらわなきゃいけないんだ。
さっき潤に先生の護衛や折り紙に嫌がらせを続けるチンピラどもの対処をするため、弁護士をつけるように頼んだ時、今日こそ先生を自分のものにしろ、とアドバイスを受けたんだ。昨日の僕とは違うぞ、早速実践だ!!
『先生、今日もいちにちお疲れ様でした』
先制攻撃でお風呂に一緒に入る打診をしろ、と潤にアドバイスを受けたので早速実行してみることに。
『お風呂わいているけれど……よ、よかったら……い、いい、いっしょに入ってみる?』
恥ずかしくて言葉に詰まったけれど、まあ、最初だからこんなものだろう。なんて言ってくれるのかな。(ドキドキ)
『いっしょ!? や、そそそれはちょっと……』
先生は目を泳がせ、困ったように断ってきた。
『ご、ご飯の用意もあるから! あのっ、し、シチュー煮込んでいる間にっ、睦月君が先にお風呂入ってきて!』
『……そっか、残念。じゃ、また明日誘うよ』
帰ってきてすぐはダメだったか。だったら明日は食事の後に頼んでみよう。
バスルームで熱いシャワーを浴び、今から先生の手料理を食べられるのだと思ったら嬉しくて、嬉しくて、堪らなくなった。夫婦としての時間を大事にして、なんとかもっと彼女と距離を詰めたい。うまくできるかな…。
いや、諦めたらそこでゲームオーバーだ。
恋愛も株と同じで実践あるのみ!(グッ)
あと、潤からのアドバイスでガウンを着るように言われた。肌がいい感じで(特に胸元辺り)が露出できるから、相手女性にセックスアピールができるとのことだったので、パジャマではなくガウンを着た。先生用にもお揃いのガウンを用意してある。
今日、このガウンを紐解くことができるのだろうか……。
よし、頑張れ! なんとか先生といい雰囲気になれるようにするんだ!
胸元を大きめに開けてリビングへ行った。すると、テーブルの上に僕の好物ばかりが並んでいた。
『先生……僕がお風呂に入っている間にこんなご馳走……しかも僕の好きなものばっかり……嬉しい、ありがとう!』
先生がはにかんでくれた。
あああ……先生のその笑顔っ……かわいいっ、好きすぎる! 尊い! 女神! 世界一!!
今すぐ抱きしめて僕の腕の中だけに閉じこめて、誰にも見せずに大事に大事に愛したい。
ああ……こんなことを考えるなんて、僕はなんて重い男なんだ。こんなクソ重たい愛を先生にぶちまけたら、ぜったい嫌われる……キモいって言われちゃうよ。もう普通がわからなくて、どうしていいのかぜんぜんわからない……!
『お腹空いたぁ。早く食べたい。いいかな?』
そう伝えてから先生をじっと見つめた。ああ、先生おいしそう。食べたい。
僕はいちばん先生が食べたい。食べたいって言ったら語弊があるけれど、先生とあんなことやそんなこと……はたまたここでは言えないような裸のお付き合いがシタい…。
『そ、そうね。食べよっか』
トースターで焼いていたフランスパンが焼ける音がしたので我に返った。ああやばい、僕の欲望は果てしない。先生と一緒にいたらおかしくなりそうだ……。
さっき焼けたフランスパンをテーブルに置いてくれた。シチューにポテトチップスにビーンズサラダとパスタ。帰ってきてすぐにこんなたくさん、おいしそうなご飯を作ってくれるなんて。
『先生、こんなにたくさん…ありがとう。嬉しい』
『昨日のような失態はNGだから、今後、アルコールはやめておくね』
『わかった。お洒落に飲めるように炭酸ジュースを用意しておいたから。気に入ったらたくさん飲んでね』
『ありがとう』
先生が喜んでくれるかと思い、生の果物を絞った炭酸ジュースを用意しておいたんだ。ノンアルコールだから今日は寝ないだろう。夜はこれからっ……!
乾杯してシチューをひとくち食べた。あまりの懐かしさに、思わずこみ上げるものがあった。
『おいしい。ありがとう、先生…』
先生の家族愛を感じながら育った幼少期を思い出した。
彼女のおかげで僕はずっと幸せだったのだ。
これからもその幸せを継続させたい。僕が幸せになるには、先生が隣にいなきゃだめだから。
僕が先生を幸せにしたい。これからはずっと、彼女を支えて生きていきたい。
『どれも懐かしい味。おいしい、ほんとにおいしい……』
『そのくらい、いくらでも作るよ』
僕があまりに感激していたからだろう。先生が嬉しいことを言ってくれた。
『毎日作ってくれる?』
『もちろん!』
『ずっと、ずっと毎日?』
『えっと……ずっと毎日っていうのはちょっと……』
先生が困ったように眉をひそめた。
毎日はだめなのかな…。落ち込むようなことを言わないでよ先生。
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