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ー五度の人生、見えない終わりー
不老不死に気がついた俺は50歳になっても70歳になっても若々しい顔のままだった。80歳になったとき、ついにとある研究所が俺を研究対象として捕らえに来た。研究者は不老不死というものが何なのか気になるのであろう。無論、俺も気にならないわけではない。だが研究と言うと人体実験などをされるのであろう、不死でも痛みがないわけではないのだ。痛め付けられるために来いと言われて行くわけがないだろう。まぁ、結果から言うと余裕で捕らわれた。不老不死の体などいないものなのだから勢力が大きすぎる。捕らわれた俺は初め美味しいご飯を食べ、運動していただけで特に変わったことは無かった。変わり出したのは1年経ってからだった。研究台のようなものの上に寝かされ麻酔を入れられた。目が覚めたとき、俺は多くの人に見られていた。
「体調は?呼吸は?」
と俺の周りで話す人の声が聞こえる。俺は肺を抜かれていた。目が覚めてまたすぐ肺は俺の体内に戻された。研究者たちも訳がわからず断念したのだろうか、俺を特別な対象として健康に過ごして貰うことを目標にし動き始めていた。戸籍上80歳だが異例の13歳として戸籍を変えて貰い中学生としてまた歩み始めた。俺はこれを二度目の人生と捉えている。
二度目の人生は勉強に力を入れた。俺自身は生意気な子供だったので真面目な優等生気分を味わいたかったのだ。お金は研究所から研究代として貰っていてそれだけで十分楽しんで過ごせた。学校に塾にスイミング、いろいろな習い事もした。努力は実らず毎度二位だった。一度目の人生で二度目の俺よりも勉強ができるやつがいた、というのがとても悔しかった。それから俺は恋愛に無関係で生きていた。と言っても高校生までだ。高校卒業するともう一度中学生からだ。それを三度目、四度目と繰り返していた。五度目の人生となり俺は恋愛に全降りした。おかげで中学生の頃から恋人的なものがいた。そんなこんなを過ごしたからこそ俺はわかる。
人生で後悔することが幸せなことを追い越すことなんてないのだ。幸せなことは覚えていないこともあるが後悔したことは忘れられない。後悔のある人生でどれだけ後悔を少ない選択をできるかが重要らしい。
俺は自分の世界に完全に入り込んでいた。だからなのか突然かけられた声にも気がつけなかった。
「君、何歳なんだ?学生は家に帰る時間だぞ?」
警察官が俺にそう話していた。俺は咄嗟に
「俺は今年で百歳なんですけど!」
と叫んでしまった。警察官はなにを言っているのだろう?という顔をしていたがその通りだと思う。俺の研究は極秘でされているため知っているものは数少なく、亡くなったものはその秘密を墓場まで持っていくようにされていた。
信じない警察を無理に説得するのも面倒なので家がすぐそこだと説明し離れた。こういうことはよくある。この見た目なのだから仕方のないことなんだけどな。
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