テラーノベル
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札幌からの列車に揺られながら、僕は手に入れた二枚目の紙片を座席のテーブルに広げた。
『霧の港町、沈まぬ錨』
車窓の景色は、広大な雪原から次第にゴツゴツとした岩肌と、暗く波立つ海へと変わっていく。
手に持ったルービックキューブが示すのは「青」と「緑」。
「青は海、緑は……山、あるいは古い銅像の青錆か」
僕は手帳を開き、三番目の人物が潜む場所について思考を巡らせた。
北海道で歴史のある有名な港町。
海から深い霧が立ち込め、歴史的な建造物や古い坂道が並ぶ場所――。
「、、、函館だ」
函館駅に到着すると、改札を出た瞬間に冷たく湿った潮風が頬を刺した。街全体が、海から這いあがってきた白い濃霧に包まれている。
「だけど、、、函館のどこに向かえばいいんだ?」
『沈まぬ錨』という言葉。
それは港にある本物の船の錨のことだろうか。
だが、観光名所の大きな錨のモニュメントをただ探すだけでは、あの人の謎解きとしては安直すぎる。
僕は手の中のルービックキューブを見つめた。
カチリ、と音を立てて揃った「青」と「緑」の面。緑は山。青は海。
そこでハッと気がついた。
「山と海……坂道だ」
函館には、港(青)に向かって一直線に伸びる有名な坂道がいくつもある。
そして、その代表的な坂の一つ『二十間坂』や『八幡坂』の上からは、まるで海に沈むことなく浮かんでいるかのように、港に係留されたかつての青函連絡船『摩周丸』が見えるのだ。
「沈まぬ錨……船そのものじゃない。何十年もあの場所に繋ぎ止められ、動くことのない『摩周丸』のことか!」
謎が解けた瞬間、ルービックキューブがカチリと音を立てて緑色の光を放ち、港の方角を指し示した。
視界を奪う白い霧の中、僕は潮の香りを頼りに旧埠頭へと向かって走り出した。
濃霧の奥に、突如として巨大な船のシルエットが浮かび上がってくる。
静まり返った甲板のタラップの下、暗闇の中にポツリとガス灯のような小さなあかりが点っていた。
その光の輪の中に、一人の影が佇んでいる。
手に持ったランタンの光で自分の足元を照らしながら、その人物は静かにこちらを振り向いた。
あの人が遺した、三番目の物語を抱える人物が、そこで僕を待っていた。
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