小学生の頃、一目惚れをした。
同じクラスになり、初めて話した。深くフードを被っており、あまり顔が見 えない彼。給食の時や運動の時だけは外すようで、その姿に惚れた。
弾けるような笑顔は周りに人を集めたから嫉妬もしたけど、その頃はどうしようもなかった。それでも足りない頭で考えた。朝は学校から逆方向のゾム 家まで行った。本人には通り道だと嘘をついた。学校に着くとこっそりと靴のサイズを確認した。たまに大きくなっていると成長を感じて嬉しくなった。緑色のランドセルはお揃いにできなかった。ゾムに出会う前に買ってしまったから。たまに服にゾムの髪の毛が落ちていた。茶髪の長い髪はとても 好きでよく集めていた。トイレに行く時は必ずついて行った。どのくらいの ペースで行くのかをメモしていた。授業中、1、2時間目のゾムはよく寝てい る。朝はやる気が出ないそう。そういいながら5、6時間目も寝ていた。起きているのは3、4時間だけ。寝顔は1人1台配られた学校のPCでこっそり写真を撮り、コピーをした。たまに寝言を言うのが尊くて言ったことを全てメモ した。PCに録音の機能があることを途中で知った。それまでは先生の声が邪 魔で邪魔で仕方がなかったがすぐに慣れた。国語、算数、理科、社会、英 語、の時間はほとんどの授業、ゾムは寝ている。唯一起きているのは音楽、 図画工作と家庭科の副教科くらいだ。音楽の時間はゾムの歌声が聞ける。小 学生の頃は録音機などを持っていなかったので音質の悪いPCで録音しなけれ ばならなかった。ゾムのリコーダーは名前が書いていなかったので、たまに こっそり交換ておいたのもいい思い出だ。鈍感なゾムは絶対に気が付かなか った。図画工作の時間、ゾムの作品はいつも芸術だ。芸術は爆発、なんて誰 しもが聞いたことのある言葉はゾムのためにあると思う。廊下に作品を飾っ た時も、一際目立っていた。参観日の時なんかはゾムの母親以外も写真を撮 っていて面白かった。家庭科では調理実習がメインだった。リュウグウノツ カイ食ってみてぇ先生料理して、クラスの男子が意味不明なことをほざいと る。そんなどうでもいいことにリュウグウノツカイって自切するらしいで、 ってドヤ顔で言っているゾム。可愛ええ。料理なんてした事の無いゾムは電子レンジを爆発させていた。4年間で3台もだ。その他の器具も合わせたら合 計8個。包丁を2本おり、まな板1枚を貫通させ、皿を2枚割った。さすがにこれ以上、学校の備品を壊されてはいけないと思った先生は、それから器具を触らせなかった。だから小4以降、ゾムは具材係だった。出来た料理を食べる時間。ゾムは大食いだったので、俺の分の料理もあげていた。幸せそうに食べているゾムの顔を見れただけで俺は幸せだ。昼休みは誰よりも先に約束を取りつけるため、授業中に手紙でやり取りをした。ゾムの返事にはいつも 変な絵が付いてくる。そういうところも愛おしいと思った。手紙は今でも金庫に保管してある。何で遊ぶかを決める時はゾムの好きなものを選んだ。普段の会話から趣味やハマっていることなどをさりげなく聞き出し、そういう時に使った。ドッヂボールは苦手だったが、ゾムと遊ぶために必死に練習し た。そのおかげか、いつかからはゾムから誘ってくれるようにもなった。給 食はできるだけおかわりをした。つぎにいった後、振り返るとゾムの顔が見 れるから。それでいて誰よりも早く食べ終わった。振り返った時にゾムの顔が見れるから。ゾムは食べるのが早いから大変だったけどその頃の俺は頑張っていた。ノートや文房具はゾムとおそろいにした。必死に手伝いを必死にして全部揃えていた。キーホルダーとかもお揃いがいいからゾムが好きそうなのを二つ買ってあげていた。これでお揃い、なんて今考えても我ながら天才的な発想だと思う。掃除の時間はゾムにはほうきしかさせなかった。ゾム の綺麗な手が傷ついてしまったら嫌だから。本人には俺は雑巾が好きだと言 っておいた。終わりの会でよく一緒に日直をやった。これはたまたまだ。出 席番号が近かったから。ゾムの綺麗な声をみんなに聞かせたくなかった。だ から朝の会とかで言うのは俺がやるよ、と半強制的に全部俺が言っていた。 黒板消しも俺がやった。先生はゾムにチョークの粉が着いたらどうするつもりなんだ。帰る時も真っ先に約束を取り付けた。人気なゾムは他の奴と帰る ときもあったが、後をつけた。何の会話をしているのか、どこか触れている か、隅々まで観察した。家に帰るとその日のゾムの様子を全て記録するのが 日課だ。今となっては数百冊のとても分厚いノートになっている。6年生の 頃に修学旅行に行った。もちろん班は同じ。部屋も同じ、バスの席も隣同士。こんなにゾムと一緒にいれる機会なんてなかなかない。小学生ながらにそう考えた俺はゾムから離れなかった。お風呂の時は全身くまなく見た。どことは言わないが、今の段階で俺のより小さい、よし。他のやつがゾムの裸 を見るのが嫌だったので、ネタのふりをしてゾムを隠して歩いた。ゾムは自分専用のリンスを持ってきている。やからいつも髪綺麗なんや。女子みたいなそんなところそゾムだったらなんでも好き。ピンクいろのロゴを見せてき たゾムはロボロの好きな色〜って笑っている。天使だ。修学旅行では水族館にも行った。2人きりになれた時間があった。こんなん水族館デートやん。 そう思いながら見たウスメバルは雰囲気はなかったかな。リュウグウノツカイって自切するらしいでなんてクラゲを見ながら言っているゾム。頭ん中どうなってるんやろ。あとその話どっかで聞いたことあるぞ。楽しかった修学旅行も終わり、早くも写真選び。ゾムが写っている写真は全部買う。ほんの少しでもいい、ぼやけていてもいい。途切れててもいい。だからゾムが居るやつ。いつもは目をつぶっている俺の母親にも、さすがにこれは気持ち悪がられた。俺からした らこんなの序の口やのに。小学生の運動会の時、ゾムはリレーのアンカーだ った。これはあとの話になるのだが、中学、高校とゾムは全部のリレーのアンカーだった。運動神経がいいのだ。6位中3位という微妙な順位の中ゾムに バトンが渡る。ゾムは問答無用で1位まで駆け上がる。その瞬間は歓声が鳴り止まなかった。そこら辺の女子は大体惚れていた。当たり前だろう。顔がかっこよくて運動神経のいい。ガキなんてこれだけで惚れる。でも俺は違う。 ゾムの全てを愛しとる。運動神経がいい所も顔も一つ一つの動作もギャップのあるくしゃみも短所の頭の悪さも全部全部全部全部愛し尽くせる自信がある。俺はこの頃から既にゾムに溺れていた。中学の頃は死ぬほど勉強をした。どこの高校に行くことになっても着いて行けるように。勿論観察も続けた。部活動は美術部に入った。ゾムの意見でだ。1番日数が少なかったから。 それだけで入った。ゾムは運動神経がいいから陸上部にでも入るものだと思 っていた。美術部ではゾムの後ろの席になった。最高やん。俺は、デッサンをしていた。ゾムの後ろ姿。これのおかげなのか、絵は地味に上手くなった。ゾムは作品を作っていた。正直何なのかよ く分からなかったので聞いたところ、ロボロとゲームしてる姿だそう。先生からは小2の作品かな、などと笑われていたが俺は胸がいっぱいになった。 少し大人に近ずき、知恵が身についた。ゾムのシャーペンを借り、家に持って帰った。同じ種類のシャーペンを買い、新品をゾムに返す。この方法でゾムの文房具は何個も手に入れた。体操服も手に入れた。幸いにもゾムは名前 の札が取れていたので同じサイズを買って交換した。ゾムの中1のころの身長 は156.3cm、体重は50.8kg。中2になると159.9cm53.1kg。中3では 162.5cm、54.0kgと成長していた。靴のサイズは27.5cmのものをずっと使っていたので細かくは分からない。中学では運が良かったのか、はたまた先生が優しかったのか、クラスが離れることは無かった。ゾムは先生のお気に入りだった。小さい頃から良かった顔と愛嬌はゾムの武器だった。中3の頃 は体力テストが意外にも思い出に残っている。いつも通りゾムについて行 く。俺はゾムの記録を全て暗記した。握力は24.2。意外と弱かったが、それ もまた可愛い。でもそれ以外の記録は群を抜いていた。上体起こしは48回。 長座体前屈は56.14cm。立ち幅跳びでは250.36cmとんでいる。50メートル 走の6.3秒はさすがに驚いたが、ハンドボール投げでは体育館の端から端まで飛んでいって記録が測りきれないという事故まで起こった。さすがとしか言いようがない。運動神経は俺も悪くは無いと思っていたが、追いつこうなん て思いもしない差だった。でも学力では俺が圧勝した。俺は気がつけば順位 はトップレベル。でもゾムは少し頭の悪い高校に行った。俺も着いていこうとしたら周りの大人にとめられた。もっと賢いところにいけ、勿体ない、ゾムくんに付きまとうのはやめなさい。腹が立った。勿論そんな言葉は聞かずにゾムについて行ってやった。ゾムにもとめられたが、この高校でやりたいことがあると言っておいた。高校ではゾムはますます人気になっていっ た。高いコミュニケーション能力と完璧な容姿、超人並の運動神経は男女問わず絶大な人気を誇った。たまに校舎裏で告白もされていたが好きな人がいると断っていた。正直気にならないわけが無い。1度聞いてみたが、適当を言 っただけとはぶらかされた。授業中の彼は小学生、中学生の頃と何一つ変わらなかった。ずっと寝ている。寝顔は勿論PCで撮って保存。家に帰るとメッ セージでノートを送ってと言ってくれるのが大好きだった。そのためにノー トは誰よりも綺麗に書いた。1年の頃は同じクラスだったが2年でクラスが離れた。その時はショックで寝込んでしまった。その年は特に変わったことはしなかった。ゾムは新しい俺のいないクラスでトモダチを増やしていった。俺はゾム以外のトモダチなんて欲しくな いから話しかけてくるやつは全員無視した。ゾムは頭は悪いが運動神経だけは抜群だった。バスケ部に入り、元々少し高めだった身長はどんどん伸びていった。184.6cm。同じバスケ部に入ったのに、俺は身長が伸びなかった。 焦った俺は死ぬ気で身長を伸ばす努力をし、やっとの思いで180cm台になった。部活でのゾムは本当にかっこいい。ほとんどの試合はゾムのためにあるのだと思った。部員数が足りなかったため大会には出れなかったが、先生には世界を目指せとも言われていた。体育の成績は常に5。それ以外は良くて 3、国語などは常に寝ているせいか1だった。そういうギャップに俺は惚れていった。ある日ゾムの家に遊びに行った。最高だった。置かれているもの全てが尊くてゾムがいない間に写真を撮りまくった。ついでに飾ってあったぬいぐるみに盗聴器を仕掛けておく。バレるかバレないかのドキドキが俺の性癖をさらに歪ませた。何食わぬ顔でゾムを待つと丁寧にお茶を持ってきてく れた。母親にも会ったが、とても綺麗で優しそうな人だった。お茶を飲むと 麦茶だった。新しくメモ帳に書いておく。家ではゲームをして遊んだ。カセットは何があるのかを確認する。俺の好みではなかったが、全て買った。練習して今度家にゾムを呼ぼうと思ったが、それはやめておこう。ゾムがいない間に部屋に落ちていた髪の毛は全て拾った。ゾムも部屋が綺麗になって嬉しいだろう。部屋を探索するとベッドの下にはエロ本があった。全てのシチュエーションを記録し、好みの女も理解した。ゾムはグイグイいくタイプのお姉さんが好みらしい。とても可愛いと思った。ゾムが戻った時は少し焦っ た。流石に友人が自分の好みのエロ本のことをメモしていたらゾムも嫌だろう。ギリギリバレずに済んだ。暗くなってきたので、ゾムと家の人に挨拶をして帰る。玄関まで見送ってくれたゾムを見て、新婚さんってこんな感じかな、なんて考えながら帰った。家に着くと早速盗聴した。盗聴器と一緒に着いてきた受信機は最初使い方がわからなかった。ようやく使えると母親との楽しそうな会話が聞こえた。何気ない会話はよく響いた。さっき来ていた友人というのは俺のことだろう。俺の知らない間に俺のことを話してくれるのはとても興奮した。感情の昂りからか、涙が出た。ゾムは小学校の頃からの親友だと言ってくれた。母親はよく話してるロボロくんね、と言っている。俺の こと話しててくれたんだ。心臓が踊った。とても嬉しかった。それと同時に、そんなに信頼している友人がこんな奴だったと知ればどうなるんだろう。そんな嬉々とした疑問も上がった。それからは本当に少しの日常会話だけだった。俺の知らないゾムはそこでは出てこなかったが、全て記録しておく。それからはほぼ毎日、盗聴、記録の生活だった。全く苦ではない。それどころか とても幸せだった。高校の3年間はあまり勉強はしなかった。ゾムより成績が良ければ大学に行くことになっても専門学校でも就職でも大丈夫だと思っ たからだ。俺はより一層ゾムについて詳しくなった。いつかの平日に2人で遊園地に行った。ジェットコースター、空中ブランコ、バイキング。ゾムはど んな絶叫マシーンでも乗れるそう。俺はゾムのことに集中しすぎて恐怖なんて感じる暇はなかった。ジェットコースターでのゾムの叫び声はこっそりと録音させていただいた。周りのヤツうるさいゾムの声聞こえにくくなるやろ。ほとんどのアトラクション、スマホなどの持ち込みは駄目なので、超小型録音機を胸ポケットに入れていた。お化け屋敷には無理やり連れ込んだ。可愛いゾムが見たい一心で心を鬼にした。出てくる時には涙目で震えているゾム。ロボロのバカァ、いやほんま可愛すぎるやろ。こっそり写真を撮った。メリーゴーランドやコーヒーカップなどの普通のアトラクションにも乗った。ゴーカートでは真隣。距離が近く興奮した。心臓の音の誤魔化し方は考えなくても大丈夫だ。ゾムの運転はやばいくらいに荒かった。こいつ将来絶対に免許取るな。俺でもそう思うレベル。こんなの乗ったら誰だって心臓バックパクだ。マリ○カート感覚でショートカットするゾムにヒヤヒヤした。でも曲がり角などでスピードを落とさずにぶつからないの はもはや才能の域だった。途中、そこら辺の警備をしている人に止められかけたが、何かを言われる前に逃げるように去る。注意されたら面倒やしまぁいっか。1分5.8秒。後に聞いた話だが、ゴールまでの時間は圧倒的に過去最高記録だったそう。平日の昼間。学校をズル休みまでして人が少ない時に来た俺たちは全部乗った。休日なんかに来たら並ぶ時間だけで1日潰れるから。 最後に2人っきりで観覧車にまで乗った。恋人みたいやなってゾムが言ってき た。狭い空間で俺の心臓の音が鳴り響いていた。焼けそうな夕日に照らされ るゾムは女神そのものだった。高校3年生、その頃になると少し不安がでて きた。ゾムが運動系に進んだらどうしよう。俺はついていけるだろうか。今 思うとちっぽけな悩みだが、その頃は本気で悩んだ。体育の成績はゾムと同じで5だが、運動神経は劣っている。昔誰かが言っていた。ゾムなら本気で世 界を目指せるんじゃないかと。そのレベルで運動面は強かった。そんな心配 を他所にゾムは普通の大学に行った。安心しつつ、俺も勿論ついて行った。 そこからは変わらない日常。迎え写真採取保管会話録音盗聴記録観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察観察。ずっとゾムのことを見ていた。授業中、昔から変わらないゾムに心底可愛いと思った。大学ではPCはやめ、スマホで写真を撮った。音がならないように改造した。少し犯罪じみた行為も当たり前だ と感じた。相変わらずゾムは人気だった。女子からの声援は当たり前、男からもよく話しかけられた。俺以外の人と喋られるのは嫌なので、ゾムに話しかけてきたやつ全員にちょーっと脅しをかけた。優しく怒ると直ぐに言うことを聞いてくれた。少しづつ減っていってるトモダチに不安を感じたゾムは俺に相談してくれた。なんか避けられている気がする、俺悪いことしたかな?嬉しかった。頼れる親友が俺しか居ないという事実は本当に嬉しかった。ゾムは なんにもしてないよ。俺がやっただけ。後に続いた言葉は飲み込んだ。ここで言っても感謝はされない。俺は賢いから分かっていた。ゾムはそうかな? と言いながらも不安を感じているようだった。ロボロはおらんならんでね、なんて笑顔で言うものだから俺の心臓はうるさいほどに鳴った。そうだ、これだその時にやっと気づけたゾムの周りのヤツを消せばいい。そこすれば自然とゾムから俺の方に来てくれる。今までなんで気が付かなかったのだろう。馬鹿だったな。俺は早速実行した。まずはゾムの悪口を影で言っていたやつら。ゾムの才能と努力に嫉妬したあの醜い肉の塊共。関わってこないならと今までは放っておいたが、ゾムのことを悪くいうあいつらが悪い。消すと言っても、実際に殺すのでは無い。社会的に殺せればそれでいい。強盗、窃盗、万引き、放火、強姦、殺人、色んな犯罪を、罪を擦り付けるのだ。次はゾムが苦手と言っていた教師。 ゾムと仲の良い人間。ゾムのストーカ一をしてくる女。これは勿論のことなのだが女、子供にも容赦なんてしない。害があるかもしれない人間は消していった。証拠は残さない。幸い俺は頭が良いから捕まることは無かった。ある日、いつものように盗聴しているとゾムの泣き声が聞こえてきた。よく聞くと、最近俺が消したトモダチの名前を呼んでいるようだ。そんなに泣いたら目が腫れるで、聞こえるはずもな いのに声をかけておく。これも最近は当たり前になってきた。次にゾムに会った時、また家に入れて貰えた。前回と何一つ変わったところはなく、盗聴器も相変わらずだった。もっと新しいゾムを知りたい。その一心で買った監視カメラ。小さく、できるだけ性能がいいものを買った。金はかかったが、どうせゾムにちょっかいをかけたクズ 共の金なので気にしない。ゾムがお茶を入れてくれるそうなのでその隙を見計らって設置した。小さいと言っても見えるレベルのものなので、どこに置くかはすごく悩んだ。部屋全体が見れ、絶対にバレない場所。俺はある方法を考えた。俺のバッグに着けていたキーホルダー。小さなクマのぬいぐるみ。おもむろにそれを取りだし、乱暴に破る。ちょうど目のところにカメラ が来るようにすれば完璧だ。絶対にバレずにさりげなくゾムを見守れるカメ ラ。即席で作ったため、少し雑な作りになってしまったがまぁいい。ちぎっ た糸で破った部分を修復する。リボン型にしとけばいい感じになるだろう。 器用でよかったとこの時ばかりは思った。終わった頃に、相変わらずの麦茶を持ってゾムが戻ってくる。ゾムにカメラ渡すととても喜んでくれた。だって傍から見ればただの可愛いくまちゃんだもん。そこにでも飾ってあげて、と部屋全体が見渡せる棚を指さした。ゾムはにこりと笑って嬉しそうにして くれている。一石二鳥だ。そこからは他愛のない会話をした。最近面白い動画があってさ~w。そんなの知ってる、盗聴器で聞いていたから。そういえばニュースで未成年と行為したやつおったな〜。それやったの実質俺。トモダチが減っとる気がして…。だっていらんやろ? 俺がおるんやもん。噛み合っているようで噛み合ってない会話を心の中でする。実際の返事では知らないふりを突き通しておく。途中でゾムが言ってくれた。もう遅いし、今日泊まっていかん? 明日休みやし…。… え? 腑抜けた声が出てしまった。嬉しかった。ゾムの生活圏内への侵入を許してくれたのが、そこまで俺を信頼してくれているのだと。勿論OKした。心做しかゾムの頬は赤く染っていた。俺の思い込みかもしれないが。そこからはずっと心臓がうるさかった。ご飯はゾムの母親が作ってくれていた。ハンバーグと米、健康そうなサラダにいつもの麦茶。すごく美味しそうだった。大学生になってから俺は一人暮らしをしていた。親には金がもったいないと言われたが、反対を押し切った。一人暮らしだと周りの目を気にせずにゾムを追いかけれる。久しぶりに食べる暖かいご飯は心に染みた。隣を見ると、大食いのゾムは俺の3倍の量を食べていた。母親はまだあるよ、遠慮しないで食べてね。などと言っていたが、食費はどうしているのかが気になった。いつか2人暮らしをした時のためにお金を手に入れないとと思った。次に風呂に入った。先に入っていいよ、と言われた。遠慮する、というよりかは後がいいと堂々と言った。ゾムは不思議そうにしながらも風呂に入っていった。そ の間、俺はゾムの家全体を探索した。ゾムの母親は寝室で寝てしまったため、比較的自由に動き回れた。もしも起きてきた時のために言い訳も考えて おいた。家全体をカメラに収め、何食わぬ顔で部屋に戻った。部屋ではゾムのエロ本を見た。前回は時間がなかったためじっくりは見れなかったが、今回は全部見た。1個目は、グイグイ系のお姉さんが夜の街でか弱い男の子を襲うというシチュエーション。2個目はおしりの大きいお姉さんが風俗店で男の 子を玩具でいじめるというもの。3個目はお姉さんがストーキングをしてい た男の子の家まで行って襲うというもの。4個目は海岸で逆ナンされた男の 子が海の中で入れられて襲われるというもの。5個目はカラオケボックスでマ イクをおしりに入れられる男の子とそれを弄ぶお姉さん。6個目はお姉ちゃ んにストレス発散として襲われる男の子のもの。エロ本はまだまだあっ、い やありすぎだろ!? 流石えろ小僧だと思った。それにしても、好みがバレバレしすぎて少し笑ってしまった。でも特に3個目とかは特に気に入った。俺もいつかやってやろうかな、なんて冗談1割で言う。残りのえろ本を読み終わると、ちょうどゾムが風呂から出てきた。32分14秒。今日の今までだけでも、メモ帳は28ページも埋まっていた。スマホとメモ、瓶を持って風呂場に行く。服はゾムが貸してくれると言っていた。流石に神すぎる。俺はまず服を着た状態で風呂場を撮る。シャンプー、リンス、ボディソープはなにを使っているのか。洗顔剤も置かれてあるが、これはゾム用かな?湯船があった。これ、ゾムがさっきまで入ってたんよね?俺も入って いいんよね? ぐるぐると目を回しながら思考を回転させる。写真を撮り終わ ると、服を脱ぎ、スマホとメモを置いて風呂に入る。いい香りのシャンプーをしながらゾムと同じ匂いだ嬉しい、なんてよく冷静にいられたものだと思う。リンスは2個あった。多分片方は母親用だろう。俺は迷うことなく片方を取った。昔にゾムがピンクのロゴのリンスを使っていると言っていたからだ。俺の好きな色なんてその頃は少し嬉しかったのを覚えていた。 ボディソープのよこには、泡立てネットがあった。これをゾムが使っていた と考えるだけで顔が赤くなる。勿論しっかりと堪能させていただいた。湯船のお湯に入る前に、持ってきておいた瓶にお湯を入れる。ゾムが入ったお湯。それだけで興奮した。母親が風呂に入っていないことは知っていたの で、とりあえず飲んでおいた。味は普通のお湯。でもゾムが入っていたと考えるだけで甘くなった。飲めるだけ飲んだところで、湯船に浸かる。ゾムに包まれている、だなんて思うのは変態だろうか。途中でゾムが服を持って来てくれた。気まずいのか、話しかけてはこなかった。俺も、自分の裸だけ見せるというのは少し嫌だ。そそくさと出ていくゾム。それから少し経つとのぼ せてきたので風呂から出る。ゾムの服がそこにはあった。薄緑の部屋着。ゾ ムの服を着れるという事実だけで勃ちそうだった。込み上げてくる喜びと興 奮を抑えながら服を着てゾムの部屋に行く。ベッドで横になりながらゲーム をしているゾム。はだけた服から除く肌はそこら辺の女より白かった。そこ からは一緒にゲームをして寝た。ゾムが布団を敷いてくれたため、そこで寝 た。途中、俺が布団で寝ると言ってくれたゾム。ゾムが風邪をひいては行け ないと思い、流石にお断りしたがその優しさにさらに惹かれた。正直ゾムが いつも使っているベッドで寝たかったが、堪えた。その夜はずっと胸がなっ た。しばらく経つと、ゾムの寝息が聞こえてくる。規則正しい呼吸はいつもは音が小さすぎて聞こえない。でも今ははっきりと聞こえる。好奇心から、 少しばかり顔を除くと誰よりも整った顔がそこにはあった油断しきってい る、誰にも見せない顔。今は見えないエメラルドグリーンのいつも俺を写し てくれる切れ長な目も外人のように高く呼吸をしている鼻も俺の大好きな声 を聞かせてくれる口も表情によって少し動く眉毛も絵に書いたような輪郭も 綺麗で白いもちもちの肌もちらっと見える鎖骨も直ぐに絞めれそうな細い首 も俺の話を聞いてくれる耳もサラサラな茶色の髪も全部全部全部全部全部全 部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部。他の奴らははっきりと見た ことがない。なんとも言えない気分に襲われた。俺は直ぐにカメラを取りだ し連写した。爆発しそうな程に顔は熱かった。そこからは寝れる気がしなか った。長いようでとても短い夜だった。9時ぐらいになると、ゾムが起き た。いつもなら昼まで寝てるのに。俺のために起きてくれたんだ。自意識過剰かもしれないが、そうとしか思えなかった。少し遅めの朝ごはんを食べる。ゾムは朝から大食いだった。流石に胃袋がどうなっているのかが気にな った。いつか見てみるか。部屋に戻るとまたゲーム。日曜日の朝から友達とゲームをするのは楽しかった。今まで互いにこんな経験はなかっただろう。 友達なんて1人しかいないから。このゲームは約3分の2の確率で負ける。今まで566回、ゾムとこのゲームをした。ゾムが勝った回数が約370回。正確な 数字を出すと377.3333… と永遠に続く。ゾムは大体のゲームが強い。とある ゲームでの勝率なんて100%だ。でも俺はゾムの動きを完全に覚えている。ここでBボタンがくる。それでもゾムには勝てない。俺が弱い訳では無い。いく ら覚えているところで追いつけないのだ。実際ゾムはゲームを仕事にできる のではないかと思う。予想外の動きは見ていて楽しい。声も良いし何より話が面白い。ちょうど誰かにゾムを自慢したくなっていたところだ。ゲーム実況者、良いかもな。そのことを直ぐにゾムに伝えた。そしたら嬉しそうにや りたいと言ってくれるゾム。ここで反対されたら流石の俺でも無理にならそうとしない。早速買い物に行った。実況者に必要なものを調べて全て買っ た。勿論俺がだ。ゾムは遠慮していたが提案したのは俺だから、と言って納 得させた。でも実際あとから金渡されたんだよな。こっそり返しといたけど。そういう優しいところが大好き。ゾムはメンバーが欲しいそう。人数は 多ければ多いほど楽しいに決まっている。ゾムはその意見を押し通した。ト モダチが減ってきているこの状況に不安を感じているのかもしれない。俺の せいかもしれないと思うと否定できなかった。グループでやろっか。ゾムに そう伝えた。とても嬉しそうで可愛かった。でも、ソムにちょっかいかけた り動画外の俺の知らんところで仲良くしたら許さへんで。俺はたとえ仲間だ ろうが容赦しないと心に決めた。ちょうどメンバーを募集しているグループ があった。○○の主役は我々だ!変な名前だがそこにソムは惹かれたそう。とりあえず1週 開後に返事が来るそうなのでその日は帰ることになった。情報量の多い2日 間だったが、忘れられない思い出になるだろう。俺はゾムの家を後にした。 最後まで手を振ってくれていたゾムが見えなくなると、満足気にスキップで 帰った。そこからの1週間は特に何も無かった。強いて言うなら監視カメラ。 あいつはすごく役に立っている。いつものようにゾムの観察をしていると、 ゾムがオナニーを始めた。おかずはえろいお姉さんのAV。ゾムも人間だもんね、えろ小僧だもんね、仕方ないよね、気持ちいい?、亀頭好きなの?、可愛いよ、なんて聞こえもしないのに話しかける。過去最高に興奮した。ゾムのそれは大きかったが、俺ほどでもない。何故か少し嬉しかった。ゾムは少し早漏だそうで、イくまでの時間は12分35秒。可愛ええな、俺のものは、いつしかゾムにしか反応しなくなっていた。こんなものを見てしまっては収まり がつかない。録画したゾムの動画とティッシュを持ってそそくさと済ませておいた。それ以外にもカメラは役に立った。流石にオナニー以上のものは見れなかったが、ゾムの全てを知ったかの気分になれた。起きる時間も寝起きが辛そうなのも朝ごはんの時間も家を出る時間も帰ってくる時間もゲームする時間もハマっていることもお風呂に入る時間も履いているパンツの色も髪を乾かす時間も爪を切る姿も宿題をする姿勢もオナニーの時間も体調が悪い 姿も様になってる姿も寝巻きも寝る時間も寝言も寝相も寝癖も一日に抜けた髪の本数もカーテンの開け閉めの回数も瞬きをした回数もネットで増えたフォロワー数も眉毛の動いた角度もあくびの回数も笑っていた動画やネタもそ の時その時の心情もゾムが聞いた音も使ったティッシュの枚数も足を組んだ 回数もスマホを起動した回数も一日に動いた角度も息を継いだ回数も秒単 位、ミリ単位で毎日、全部見た。ゾム自身も知らないゾムまで知っている。 それがなんともむず痒く、嬉しい。俺はゾムのこと、呼吸が出来なくなる程 に好きなんだよ。ちょうど1週間がたったころ、実況者グループから返信が来 た。君たちの入国を許可する。なんてふざけてるやつなんだ。第一印象はそ れだった。でもゾムはそんなところも気に入ったそう。学校終わり、ルンルン気分でスキップをしながら家に帰るゾム。可愛いな、勿論ビデオを撮って おいた。家に着くと直ぐにゾムからメッセージが来た。今から撮影始まるら しいで! なんかのゲームするらしいんやけどようわからんから頼んだ! 天使 かよ。返信上は冷静だが心は叫んでいる。ビックリマーク付ける当たりほん まに可愛ええ。俺を頼ってくれるんも天使やん。ようわからんって、可愛 い。と、こんなこと言っていたら話が終わらないので進んでいく。初めての 撮影は思ったよりも上手くいった。撮影が終わり、周りのヤツがゾムに話し かける。マジキチやろw、ゲームうますぎひん!?、あそこバリおもろい w、初日から人気者なゾムはとても幸せそうな顔をしている。でも俺、みん なに囲まれるゾム見たら嫉妬してまうな。俺もからかわれたり喋りかけられ たが程々に返事をし、ゾムから離れなかった。それから1か月ほどたった。ゲ ーム実況者と名乗れる程度には色々できるようになる。ゾムは編集がだいの 嫌いだそう。動画を撮っている時のゾムは満面の笑みだが編集中のゾムは今 にも死にそうな顔をしていた。俺がやってあげたかったが、メンバーに好意 を感ずかれそうたしやめておいた。ゲーム実況者って意外と大変なんだな。 最近はゾム以外のメンバーとのコミュニケーションもきちんととるようにし ている。その頃になると人気投票が行われた。ゾムは1位だった。ゲームも上 手くギャップがあるかっこいい新人としてファンから絶大な人気を誇った。 俺は2位だった。チビの可愛いサイコパスキャラ。コメントにはそれぞれの ことがそう書いてあったが、実際は少し違う。可愛いのは俺じゃなくてゾム。でもゾムが1位になるなんて見る目あるやん。聞こえもしないのに話しか けるのは癖になってしまった。ネットのコメントを漁っているとゾムのアンチコメが目につく。ゾムってやつウザイんだけど私の推し殺さないでくれる?、頭おかしいフリしてるだけのただの一般人、久しぶりに見たらノイズ が増えてて草、どうせブスだろ、なんでこれが人気なん?、脳溶けとかおもんな。昔の俺ならすぐに消してたんだろうなこんなネットで人の悪口書くしか脳のない底辺。でも最近は少し大人になったんや。沸点が低くなっ た。こんだけじゃ俺は消さない。自分の成長が感じられた。その余韻に浸っていると、メンバーから飲みの誘いが来た。ゾムも来るそうなので勿論行 く。俺は基本約束には時間通りに行く。昔ゾムが言っていた。俺はきちんとできんから一緒におるのはきちんとした人がいいな。ゾムからしたらさり気 ない日常会話だったのだろうが、俺にとっては今でも覚えている言葉だっ た。どんだけゾムのこと好きなんだよなんて自分でもよく考える。小説の1ペ ージを埋めるかのような文章を考えながら居酒屋の扉を開く。まだ大して集 まっていないメンバー。ゾムは5分50.6秒後に来た。1人で来ていることを見 て安心する。他の誰かときとったりしたら嫉妬で殺してもうたかもしれん。 メンバーは徐々に集合してきて、最終的に全員が集まった。お決まりの挨拶 をしてから楽しそうに飲む。ゾムは酔いやすい体質で、ビールでも3杯で限界 だ。俺はゾムの隣でゾムのことを気にかけつつ、お酒を嗜む。ゾムが2杯目に 手をかけた。もうそろそろやばそうやな。完全に酔っ払ったゾムは、周りのメンバーに好き好きと行って回った。は?間に受けているメンバーはいなかったが、腹が立つ。俺だけに言っとけや。居酒屋も営業時間がすぎ追い出されたので、それぞれ解散する。いつもならある食害が今日は大人しかった。 でもあの様子だとゾムは今から怒られるだろう。理由は知っている。エロゲーがリビングに置きっぱなしだったからだ。飲み会の前、カメラでゾムを見ているとエロゲーをもってリビングに行ったっきり手ぶらで帰ってきた。ドジだな、なんてその時は気楽に思ったけどさりげなく伝えてあげた方が良か ったかもしれないと今更ながら思う。まぁ過ぎたものは仕方がない。大人し く帰ってカメラでも見とくか。家に帰りカメラを見ると、予想通りゾムが怒られていた。エロゲーを持った母親に怒られるなんて状況に、俺は少し笑っ てしまう。先程までは赤かった顔も今では真っ青だった。怒られているゾム可愛い。アルコールが回っているゾムはフラフラで耳や首まで赤かった。ゾムは俺に任せて。いつもの台詞を吐く。俺はゾムを連れて帰る担当のようなものなの だ。メンバーも了承している。こんなに好意を抱いているが、こういう時に 襲ったりはしない。そしてきちんと送り届ける。ゾムの家にだ。自分の家に連れ込んだことも、襲ったことも、まだない。ゾムを愛しとるから。ゾムの 家に行くと母親がゾムを担いで中に入ってしまった。部屋までおくるのに。は可愛かった。また新しい表情が見れた。その喜びは記憶が薄れる前に常に記録しておく。こんなに好きなんよ。この思いに気づいてほしい。俺がゾム を思う気持ちに。そう思ったことなんてないな。ゾムがこの気持ちに気づい たところで何も変わりやしないから。俺がゾムのこと好きな気持ちも、ゾム が俺から離れられない事実も全部変わらない。変わって欲しくもないから今 日も平穏に過ごす。俺は人生において常に今が一番幸せだ。今が今までの中 で1番色んなゾムを知っている。だから一番幸せ。頭がぱんくしそうな難しい ことを考える。哲学ってちょっと苦手なんよな。よく分からへん。寝る前は いつもゾムにおやすみという。今はまだ返事が来たことはないけど、毎日幸 せだった。ある日ゾムに恋人ができた。同い年の女の人。その報告を聞いた 時、俺はどんな顔をしていたのだろう。多分酷い顔なんだろうな。ゾムのことならいつも鮮明に記憶しているのにその時のことは曖昧にしか覚えてな い。そうなんや良かったね、なんて嘘を言っていただろうか。人生で1番辛かった。帰ってから泣いた。ゾムは俺の事なんか友達としか見てないよね、そうだよね、俺の片思いだもんね、仕方ないよね、こっちを見て、少しでもい いからさ、こんなに好きなんやで?、知らんよね、気づいとらんのやもんね、カメラだってあるんよ?、盗聴もしとんよ?、ゾムのことならなんでも知りたい、ゾムはどうかな?、俺の事どう思ってんのかな?、知り合い?、 友達?、親友?、もしかして他人?、恋愛対象ではないかな、苦しいな、悲 しいな、頭がぐるぐるする、でも仕方ないよね、ゾムのことはなんでも許し たい、でも彼女は嫌や、俺をみてくれんの知っとるで、それでも諦めきれへ ん、当たり前よね、でもゾムは女の人が好きだよね、普通、だもんね、愛しとるんやで。声にならない声を出してカメラ越しのゾムに話しかける。その日ばかりは、普段の倍の量の台詞を読んでいた。次の日は大学を休んだ。な んにもやる気になれない。ゾムに会ったあの日以来、ずっと続けてきた観察でさえその日はやらなかった。ゾムがものすごく心配してくれた。小、中、 高と皆勤賞をとってた俺が休んだのだから。無理は無い。ゾムからの大丈夫?なんて心配の言葉も今は胸を抉る。叶わない恋だって知っていた。届かない存在だって。でも失恋は失恋。痛いものは痛い。寝れない苦しみが何日 も続いた。一日目以降は観察をしたし学校にも行った。立ち直った訳では無いが、ここまで来ると義務だと思う。ゾムはいつもと何一つ変わらぬ笑顔 で、風邪治ってよかったな、って。俺、風邪なんて一言も言ってないけどな。これだけで少し元気が出る。そういうおかしなところも大好きなんよ。 授業も終わり、家に帰ろうとする。横をむくとゾムが女と話をしている。厳戒態勢に隙があったか。多分これはゾムの彼女だろう。顔も性格もスタイル も何一つゾムと並ぶ価値もない平凡な奴。強いて言うなら声がいい。それだけ。なんでゾムはこいつを選んだんやろ。やっぱ声?、でも俺ならまだこい つよりはスペック高いぞ。声も俺の方がいいし。思わず声が出そうになって しまった。ここで言っては全て台無しになってまう。抑えな。彼女さんは俺の方を見て微笑む。心做しか、頬が赤くなっている。こっち見んな、吐き気 がする。今日はゾム、その女と2人で帰るんやろうか。そう思っていると、彼 女さんが一緒に3人で帰りますか、と言ってきた。俺に気を使っているの か、そうは見えないが。2人で帰られても困るのでイエスと答える。彼女はそ こからは俺に話を振ってくるばかりでゾムと会話をあまりしていないように 見える。こちらとしては好都合だが違和感満載だ。というか、何故俺は2人に挟まれながら帰っているのか。ここは普通ならカップルが並んで帰らない か。疑問に疑問を重ね家に着く。帰り道の最中にゾムに盗聴器を付けておいた。この先の会話はこれで聞ける。でも意外と会話は少なかった。というよ り、ゾムの言葉に彼女があんまり反応してなかった。明日の宿題なんやっけ?、夜ご飯ちゃーはんやったわ、このゲームがさ。もしかしてあれだろう か、会話がなくとも心で通じ合えるというやつ。俺にはよく分からない。腹が立ってくる。2人は何事もなく帰って行った。次の日から、ほぼ毎日一緒に帰った。でもやっぱり何かおかしい。いつも2人に挟まれている。もしか して、そんなに仲良くないのだろうか。それなら嬉しいが、ゾムの初めての 彼女だ。付き合うくらいだから愛し合っているのだろう。この疑問は1週間後にようやく解けた。その日は珍しくゾムが休んだ。カメラで見てみると、真 っ赤な顔で寝込んでいるゾムが写った。可愛すぎる。ダラダラと出てくる鼻血を拭いて学校に行く。休もうとも考えたが、これはチャンスだ。ゾムとあいつを別れさせるチャンスだ。俺はゾムの彼女に告白した。相手はOKとい う。こいつが元々俺に近づくためにゾムを踏み台にしていたことに途中、気 がついた。確信はなかったが、とりあえずあっていたそう。ゾムを踏み台に したと知った時は、かなり腹が立った。俺はゾム以外見えてないしそもそも ゾムの気持ちを踏みにじるやつなんて居ない方がマシだと思ってんだよ何勘 違いしてんだぶっ殺すぞ。ゾムとこいつが別れたら絶対言ってやろうと誓っ た。今だけは俺の彼女のこいつはやけにベタベタしてくる。周りのヤツはゾムとこいつが付き合っているのを知っている。浮気してるという自覚はある のだろうか。バレたら俺も最低男として噂になるだろうが、ゾム以外にどう思われてもいいのでどうて事ない。こいつはもっと気にした方がいいと思 う。その日はそのままおさらばした。途中、キスをせがまれたが完全無視を決め込んでおいた。そんなクールなところも素敵、だそう。頭沸いとんのかこのブス。次の日、ゾムの家に迎えに行く。昨日ゾムの彼女に告白されたん やけど、話聞いとったら俺に近づくためにゾムと付き合ったって言っとって、ほんま俺のせいでごめん。少し捏造しつつ、昨日の話をする。まぁ、大部分はあっているので大丈夫だろう。ゾムはあまりショックを受けていなか った。ロボロが謝らんで、俺もさすがに変やとは思っとったけど、ロボロの方にいくなんて、ごめんな。眉を下げ、申し訳なさそうな顔で謝るゾム。優しいな、お前は。その日、ゾムと俺はその女 と別れた。あいつは動揺しとったけど当然の罰やろ。あんた騙したのね!ゾム! あんた騙されてるのよ! 告白してきたのはあいつよ! ヒステリックに叫 ぶゴミ。この状況、どっちの方が信用があるんだろうね? あとゾムのこと呼び捨てにすんなぶっ殺すぞ。勿論、ゴミの言うことなんて一切信じないゾム。俺を選んでくれたんか。めっちゃ嬉しい。一部始終を周りの生徒に見られ、その上動画を取られてネットに晒されたゴミ。たったの一日で生きづらい世界になったな。ざまぁねぇ。でもそれだけじゃ気が済まなかったので、いつもの方法で消しておいた。俺が味わえない立場にあいつはおったんや。当然の結果。その日辺りから、警察がうろつき始めた。こんなに人が犯罪を犯すなんて、おかしいという捜査だそうだ。当然っちゃ当然か。俺らは1番最近消えた女と交友関係と見られていたせいで、ほんの少し事情聴取を受けた。ゾムには別れたことは内緒にしとかなめんどくさいで、と言っておく。実際犯人は被害者と別れた俺なのだから。事情聴取は何事もなく終わった。俺は賢いからな。疑われてすらないだろう。何の事件性もないと感じた警察は、直ぐに帰って行った。楽な仕事やで。この時期になると俺は考えた。俺はこのままだ と永遠にゾムに相手にされない? ゾムはまた別の人を好きになって俺はそいつを消して、ずっとこの繰り返し? 俺だってゾムに見て欲しい。一緒に居たい。誰よりも近くで感じたい。ゾムの全てを知りたい。唐突にそんな欲にま みれた。じゃあそうすればいいじゃない。悪魔の声が聞こえる。方法なんていくらでもある。ゾムのことなら俺はなんでもする。たとえ嫌われようと気味悪がられようと蔑まれようと俺は気にしない。ゾムのことを愛してるから。早速行動に移す。ゾムには俺と一緒に暮らさないか提案した。喜んでくれてこっちも嬉しい。ゾムの両親にも許可を貰う。今俺が住んでいる家は家賃の割に広いから男二人でもなんの問題もない。俺から見たゾムは実質女だがな。ゾムがやってきた。必要最低限の家具と手荷物を持ってやってくる。 その姿を見てまた興奮する。ゾムと一緒に暮らせる。もっと早くからしとけ ばよかった。そんな後悔なんてしても意味が無い。時間がもったいないだけだ。俺はゾムを監禁した。一緒に暮らすだけではダメだ。確実に俺だけのゾムにしないと。俺以外に触れないように、俺以外を感じないように。だって 俺にはゾムしか必要ないから。ゾムには俺以外必要ないから。事前にゾムの 部屋を作っていた。ベッド、トイレ、冷蔵庫、鎖、机、イス、媚薬、玩具、 ゲーム、大量の監視カメラがある部屋。ゾムが家に来たので睡眠薬入りの麦茶を渡す。ありがとうなんてコッチの台詞なのに。倒れるように眠ったゾム は無防備だった。鎖骨が服から覗いている。引っ越してそうそうにこんな展開になるなんて、誰が予想しただろうか。あぁ、幸せやな。これから、どんなゾムが見れるんやろ。たのしみ。
おしり。
またね
コメント
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待 っ て 待 っ て,,,,,ガチ で 神 です. 神 過ぎ て 何 言 っ て 良い の か 分から なく て,神 しか 言え ない ん です けど, 実際 は 神 なんて 言葉 だけ じゃ 収まら ない くらい に 神 です. も っ と 早く 見つ けた か っ た です. 書き方 全部 が 癖 に 刺さり まし たし, 何 より 行 など を 1 ミリ も 変えず に 書く ところ が rbr の zm に 対する 愛 が 表現 されて て 本当 に 刺さり ました. rbr の 行動 も 全部 癖 に 刺さり ました し, 個人的 に は zm が 入 っ た 後 の 風呂 の 水 を 飲 ん で いた の が 最高 でした. 私 は め っ ちゃ 癖 歪 ん で る ん です けど, そこ まで は 想像 して 居なく て,凄く 興奮 しました,,. なんかキモくて御免なさい,,,. も っ と 伝え たい 事 有り ます けど, 書いて いたら 次 の rbzm 見れ なく なる ので 切り ます. 長文 失礼 しました.
初コメ失礼します! 正直…めっちゃ性癖ぶっ刺さりました…