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テラーノベル(Teller Novel)
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単独行動のルティを気にすることなく、シーニャはおれの手を握って駆け出す。石畳の道もホーズのおかげで走りやすくなったようだ。


食料関係はルティに任せ、ガチャとは別に風の村で売られている武具に興味を持った。村でありながら連なる家屋は、道具屋や薬屋といった店が多く並ぶ。神族が治めているだけあって売られている物自体が違うように見える。輝くものに目が無いシーニャに勧められ、武具屋の店先に並ぶ剣を眺めることにした。


「ほぅ? これはまた……珍しいお客ですな。もしや地上の者かな?」


眺めていただけのおれたちに対し、店の主人は声をかけてきた。


「地上?」

「ウニャ?」


神族国は空にでも浮いているのだろうか?


そう思っていたが、


「あっはっは! 失礼したね。ヘリアディオスは孤島に浮かぶ国。空には浮いてもいないのだよ」


期待とは別の答えが返ってきたが、やはり大陸から離れた孤島だった。一つの国家に異なる村や町が複数存在。その時点で冒険者に伝わっていてもおかしくない話だ。


「……それはそうと、店先に置かれている剣を手にしてみても?」

「ああ、どうぞ。ここの剣は光の所から仕入れた剣でね。ついさっきも、新しく仕上がったミスリルの剣が――む……これは!」

「光の所ですか? 光の町ということでしょうか?」

「……そうじゃないが、しかしこの剣は注文したものと違うような……」


主人の顔色が優れないが、間違った剣が出来上がってきたのだろうか。


「シーニャ?」

「ウゥ、何かの気配を感じるのだ……。アック、その剣が何かするかもしれないのだ」

「……ん?」


普通の剣に混ざって魔剣でも紛れ込んだ?


神族の国だからそれは無いと思われるが。ジッと剣を見つめていると、カタカタと小刻みな動きを見せ始めている。その動きが徐々に大きくなり、次第に大気そのものをも震わせた。


ただ事じゃないし強大な力だ。


「ご主人、離れてください! この剣は普通じゃない」

「え、いや、しかしっ……」

「は、早くっ!」

「守る、ウニャ」


店の主人にはこの場から離れてもらい、シーニャに守ってもらうことにした。小刻みに震えていた剣は鳴りを潜めているのか、目立つ動きを見せない。その剣に近づこうとしたまさにその時だ。


――瞬間。


剣は太陽の陽射しよりも眩しい金色の光を発し、眩惑《げんわく》させようとしてきた。思わず目をつぶり光が収まるのを待っていたが……。


「――ちぃっ!」


視界を奪われると同時に襲って来るものだと警戒し、防御を高めた。


だが、


「……ふわぁぁぁ~。ねむねむなの」


この声……まさか、フィーサなのか?


ゆっくりと目を開けると、そこにあったのは黄金色に輝く剣姿の彼女があった。


「フィーサ? まさかフィーサで合っているか?」

「――わわっ!? イスティさまがどうしてここにいるのなの?」

「それはこっちが聞きたいぞ、全く! 人化は出来るのか?」

「はいなの!」


感じが違うが、剣から人化したフィーサを見てさらに驚く。彼女は宝剣で銀に輝くミスリルのはずだった。しかし、今見えているのはどう見ても大人な女性だ。


「ウニャニャニャ!? な、何事なのだ!!!」

「随分時間がかかってしまいましたわ。イスティさま、わたくし生まれ変わって帰ってまいりました! ですけれど、白い光沢《銀色》に変わりはありませんわ。今後もご一緒させて頂ければと――」

「それはプラチナか……?」

「ええ、そうですわ。人化したこの姿の時も両手剣の時も、プラチナとして再び輝きをお見せしたく思いますわ」


お試しだがフィーサをスキャン。


すると、


【神剣フィーサブロス プラチナソード Lv.901 人化時年齢23】


レベルに変化は無いが人化年齢が上がっているようだ。しかも宝剣ではなく神剣ということは、光の神にでも打ち直されたのか。


「お、驚いたのだ……フィーサが大きくなってしまったのだ。ウニャ」

「おれも驚いているよ。まさかこんな所で再会するとは」


店の主人は腰を抜かして近付いても来ない。武具屋の剣に神剣が混ざっていれば無理も無いだろう。それにしても、戻って来るか分からなかったフィーサが戻って来た。


――ということは、この国にもはや用は無くなったということになる。


「イスティさま、シーニャも成長をされたのですか?」

「あぁ、それは――」


その前にルティを探して合流をしてから説明をすることにする。


しかし本当に驚くばかりの変化を見せたものだ。

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