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「――そういうことでしたのね。見た目が変わったと思ったら、それがまさか闇からのちょっかいによるものだったなんて。イスティさまはどうされるのです? 闇の所にでも乗り込みますか?」
すぐにでも怒鳴り込みに行きたいところだが。
「そう思ったが、ここへはフィーサの調子を取り戻せればいいと思っていただけだからな。ここに留まる必要は薄れた」
「では、お咎めなしでここを去るのですね?」
「全てを知るには時間がかかりすぎそうだしな。また来た時にでも……」
「イスティさま。ヘリアディオスは、そう易々と人間の入国を認めない国家ですわ。自力で来られる所でも無いですの。もし気になるのであれば、闇の町に進んだ方がいいですわ!」
成長を果たしたフィーサの言葉には説得力がある。確かにシーニャに悪さをした者の正体は気になる所であり、戦わねばと思っていた。それだけにここからどうするべきか。
「シーニャ、アックの行きたい所に行くのだ!」
「闇化のことは気にしてないのか?」
「よく思い出せないのだ。でも、アックの所に戻って来られたから問題無いのだ。ウニャ」
「むぅ……」
シーニャはあまり深く考えていないようだ。そうなると、やはり無理強いをしてまでここに留まる必要は無いということになる。
「イスティさま。そろそろ彼女の所に行きたいのでは?」
「彼女?」
「もちろん、スキュラ・ミルシェのことですわ。もっとも今はスキュラではなく王女と化しているのでしょうけれど。彼女はイスティさまの助けを必要としているはずですの」
「……そうだったな」
水棲の彼女にはずいぶん助けられた。途中ではぐれることになってしまったが、必ず後で合流をと思っていた。そうなれば神族国家にこだわる必要は無い。ここからどうやって王国に行くのかが問題ではあるが。
ここならデーモン族を召喚しても問題は無いことだ。あまり頼りたくは無かったが、せっかくテイムしたことだし頼ってみよう。
「【テイム召喚、デーモン族。この地へ来い!!】」
声を張り上げただけで、彼らが上空から飛んで来るとは限らない。しかしテイムに関しては魔石ではなく、おれ自身のスキルによるもので魔石をどうこうするものじゃない。
しばらくして、
「ウニャッ!? な、何か黒いのが沢山見えるのだ!! アック、石をぶつけるのだ!」
上空に黒い集団と翼を羽ばたく音が聞こえてきた。しかし、音は聞こえてくるのにどういうわけか全く近付いて来ない。
「待った! シーニャ、ぶつけちゃ駄目だぞ!」
「ウニャ~……」
「フィーサ、デーモン族はここに来られないのか?」
「無理ですわ。たとえマスターがテイムしたものでも、デーモン族は異形の魔族。神族の国に降りることなど許されませんわ」
「やはりそうなるのか……」
あわよくばここから飛び立とうと思っていたが。そうなればまずはおれたちの方では無く、シーフェルの方にでも行ってもらうか。
「聞け! 命じの言葉は、シーフェルだ! シーフェルへ行き、水棲の王女を救え!」
「ギギ……リカイシタ」
言葉さえ理解してくれれば、あちらが危機に陥っていたとしても何とかなる。言葉を聞き入れたのか、デーモン族は即座に方向転換し、そのままいずこの空へと去って行った。
「ウニャ。アックはすごいのだ~」
「そんなことはないぞ?」
「いいえ、イスティさまは堂々としておりますわ。さすがわたくしのマスター」
ここから出るための方法は別で見つけるしかなくなった。とはいえ、シーフェルへ知らせを届けるだけでも良しとするしかない。
「それじゃ、ルティとも合流をして――」
そう思っていた時。どこかでルティの叫び声が聞こえた。
「ひぃえぇぇぇ!? ダメですってば~!! 返してくれないと困りますよぉぉ!」