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「……陽一さん」
アルコールと熱を孕んだ、白石さんの震える吐息が耳元をかすめる。
落雷、そして停電。空調の死んだエレベーター内の不快な湿度は、今はもう、皮膚にまとわりつく濃密な情熱へと変貌していた。
足元の非常灯が放つ頼りない光が、彼女の潤んだ瞳を妖しく、そして残酷なほど美しく縁取っている。
彼女の唇からこぼれる、シャンパンの香りが鼻腔をくすぐった。
その香りに、下戸ではないはずの僕の理性までが、じりじりと酔わされていく。
逃げ場のない数立方メートルの密室。僕は彼女によって「壁際」という名のデッドエンドへ追い詰められていた。
「陽一さん……いい、ですよ、ね?」
背伸びをした彼女の細い指先が、僕のネクタイ緩める。
見下ろした先――。
彼女のはだけたシャツの隙間から覗く、透き通るような鎖骨の白さと、微かに汗ばんだ肌の質感に、僕は言葉を失った。
喉仏をなぞり、唇へと強引に、しかし甘く這い上がってくる彼女の唇。
(待て、待て……! 心拍数がレッドゾーンを突破してる!!)
抗う術など、最初から持っていなかった。
僕は酸欠で思考回路が焼き切れるような、濃厚で強烈な口付けの渦へと、深く沈み込んでいった。
#ワンナイトラブ