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「実契約前に一度実物を確認した方がいいと思います。物件の方は仮押さえしておきますから。

なお手続きすれば即日お引き渡し致します。家賃はサービスで来月からでいいです」


窓口のお姉さんのアドバイスで、魔法鍵を預かって借りる予定のお家へ確認しに行く。

商業ギルドから歩いて4半スルザン7分半

商店街からもそこそこ近く、仕事場である迷宮ダンジョンもそう遠くなく、それでいて周囲は閑静な住宅街。


「場所としては文句ないよね。お店が近い分、一番安い家よりよかったんじゃないかなあ」


アリアの意見に賛成だ。


「そうだね。こっちの家の方が生活には便利そう」


「壁や屋根も問題無い」


レナードの言う通り、壁にはひび等なく、屋根下に染みなんてのも見えない。

新しくはないけれど、それなりに手入れはしっかりされているようだ。


「長屋構造でなく家が独立しているのもいいよね。家の間も狭いけれど空いているし。そうでないと奥の部屋に窓が作れないから暗くて風通し悪くなっちゃうから」


アリアの言う通り両側の家との間は半腕1mくらいの間がある。

下は焼き土舗装で雑草が生えたり手入れが面倒だったりとかは無さそうだ。

アリアの言うように明かり取りと通風の為の隙間だろう。


「それじゃ中に入ってみよう」


「そうだね」


扉から中へ。

玄関はなく、細長い焼土床の廊下が裏口まで続いている。

この廊下の右側に部屋が並んでいるという作りだ。


早速最初の扉を開けて中へ。


「ここがリビングかあ。結構広くていいね。通り沿いだから明るいし、寝るとき以外はここで生活かな」


「確かにそんな感じ」


アリアの言う通り窓が大きくて明るく、広さも結構ある。

居心地は結構良さそうだ。

テーブルと椅子、カーテンは最初からある。

それ以外の家具は自分達で揃える必要がありそうだ。


続いてキッチン、寝室、寝室、寝室、作業場、トイレと続いている。

寝室はベッドと小机付き。

しかしベッドに布団は無い。

考えてみれば当たり前だ。


「布団は買ってくる必要があるみたいだね」


「確かに。最初は寝袋を使おうか。お金無いし」


一応冒険者用の装備として寝袋は買ってある。

布団に比べれば寝心地は悪いし狭いけれど仕方ない。

お金が貯まるまで我慢だ。

なんて思ったらレナードが口を開く。


「布団は必要。保証金と最初の月の家賃を払った残りで買えば問題無い。あと他に必要な家具があれば言って」


「ありがとう。助かる」


よしよし。


作業場は床が焼土ではなく石畳で頑丈そうだ。

レナードが隅々まで点検した後、頷いた。


「換気も排水も大丈夫。これなら問題無い」


「お風呂作れそう?」


「大丈夫。明日にでも作る」


レナード、よほど風呂が欲しかった模様。


一通り裏口まで確認終了。

問題は無い、というか思った以上にいい感じ。


「この家でいいよね」


アリアの言葉に私もレナードも頷く。


「勿論!」


「問題無い」


「それじゃアルスラ亭に行って、宿を引き払ってから商業ギルドへ行こうよ。この時間ならまだ間に合うでしょ。少しは追加料金取られちゃうかもしれないけれど」


「確かに」


私達は今まで半年いた宿屋へと向かった。


◇◇◇


宿屋へ行って、商業ギルドで手続きして、更に店で布団を買って3人それぞれ自分の布団を背負って帰ってきた。


ベッドに買ってきたばかりの布団をセット。

思わず顔がにやついてしまう。


今日からここが私の部屋。

子供時代は姉と同室だったし、冒険者学校の寮は5人部屋。

だからこれが私にとって初めての個室だ。


実は個室を持つの、結構長い事、夢だった。

他の人の目を気にせず自由に出来る場所が欲しかったのだ。

ついにその夢が叶った。

うん、稼ぎを使って自分色に染めよう。

今は布団カバーだけ、お店で探して気に入った青色系の花柄だけれども。


さしあたって次はカーテン。

最初からかかっているものは生成りで素っ気ない感じ。

少しボロけているし染みもある。

これを少し可愛い柄にして。


あとは敷物も欲しい。

これも可愛い色のを探してと。


うーん、小遣い、なかなか貯まりそうにない。

カーテンだけで正銀貨5枚5万円はするだろうし、敷物はもっともっと高いし。


「エリナ、お布団のセットは終わった? 終わったならお茶にしない?」


おっと、アリアが呼んでいる。


「今行く!」


お部屋計画と予算を考えながら部屋を出て、リビングへ。

アリアとレナードがお茶をしていた。

私の分もテーブルにおいてあるので席に着く。


「どうだった、お部屋?」


「最高!」


思わずそう口から出てしまった。

私、個室が手に入った事でテンションが高い。

こんなになるとは正直思っていなかったけれど。


「やっぱりそうだよね。私も初めての個室だから嬉しくて。これから家具を頑張って揃えて自分色に染めようかなと思うの」


「同感!」


アリアも私と同じ事を考えていたようだ。


「それでね。レナードも家具や本を揃えたいから、新しい情報を作ってもう少し儲けようと考えているんだって」


「何? どんな情報?」


私、思わず身を乗り出してしまう。

カーテンや敷物の為に稼ぎたいところなのだ。

儲かる話なら喜んで。


レナードは一瞬ひくっと座ったまま後ずさり。

座ったまま椅子ごと後退するなんて何気に凄い技だと思う。

でも何故そんな事をしたのだろう。


レナードは一度目を瞑って、深呼吸してから口を開く。


「作ろうと思っているのは迷宮ダンジョン内での魔物の狩り方について。

私達のパーティ、最初は迷宮ダンジョン内を1日中走り回っていた。どんな魔物がどの辺に多いかも知らずに無駄に動いていた。魔物が出た時適切な攻撃力がわからず、威力の強い魔法を無駄に使ったりもした」


確かにそれには覚えがある。

だから同意の意味で私は頷く。


「だから今度は実況形式で魔物討伐を録音する。何処でどうやって魔物を倒すというのが、よりわかりやすいように」


またレナード語が出てきた。


「実況って何?」


「実際にやっている事をそのまま音声情報にする事だと思って欲しい。

つまり実際に魔物討伐をしながら録音する。もちろん台詞はある程度台本で書いておく。普段無言で攻撃する場合も、それではわからないから動きながら言葉で説明する。


洞窟コウモリケイブバットだ! まずは防護魔法で安全に戦えるようにするよ』

とか

洞窟コウモリケイブバットは動きが速いよ! だから槍を短く持って小さく振る! よし、羽根に当たった!』

という感じで」


なるほど。


「でも討伐にかかる時間は結構長いよね。無音の部分も多いし、聞いている方は飽きないかなあ」


迷宮ダンジョン内で録音した後、無駄な部分を省いて編集する。学校を出ていない冒険者は基本的な事すらわかっていない事が多い。需要はきっとある」


「うーん、何か途中微妙な部分があったけれど、『編集する』と『需要はきっとある』は本音かな」


あ、レナード、明らかにぎくっとした表情。

でもアリアが言う微妙な部分って何だろう。

編集すると、需要があるは本音なんだよな。

うーん、わからない。


「儲かるならいいよね。レナードも楽しんでやっているんでしょ」


そのアリアの言葉に、レナードは頷いた。


「それは間違いない。

私は元々冒険者になりたかった。だから冒険者になった。配信で稼ぐのは生活の為、そのつもりだった。

でも今は配信、売る情報を作るのも楽しい。台本を書くのも、自分で演じるのも」


「ならいいかな」


うーん、今のアリアとレナードのやりとり、私には意味がよくわからない。

でも元々レナードはよくわからない人物なのだ。

だからアリアがいいと言うのなら、そして儲かるなら問題無い。

多分きっと。


「なら私もやりたい。でも台本を書くの、大変?」


「大丈夫。今日中に明日やる分は書く」


よしよし。


「なら明日も頑張ろう」


「そうだね」


◇◇◇


そんな感じで、私達は情報を売りながら冒険者を続けている。

週刊の情報も、階層別や魔物別の情報も売れ行き好調。


そして新シリーズ、

『実況! アドストリジェン迷宮ダンジョン攻略』

も絶好調だ。

現在は

○ 最初の一歩 第1階層の探索編

○ 初心者編1 第4階層ベーススライム&ノルマルトード

○ 初心者編2 第10階層までのデミゴブリン

の3つが製作済で販売中。


こんな超初心者用の内容でも結構売れているようだ。

という事は皆、基本的な事を知らないのだろうか。

その辺りがちょっと気になる。


あと少しばかり心配な事もある。

売店のおばちゃんにこんな注意を受けたのだ。


「何か最近『青い薔薇《ブルーローズ》ちゃん探し』をやっている男性冒険者が多くてね。私のところもしつこく聞かれたよ。何処に住んでいるかとか、何処へ行けば会えるかなんて。


勿論私もギルドも教えていないけれどね。そちらもバレないよう、充分注意するんだよ」


探してどうする気なのだろう。

今ひとつわからないけれど、注意するようには心がけるつもりだ。

情報内での私達は声色も声調も変えているし、多分大丈夫だとは思う。


ただ最近、どうもあの情報での喋り方、気を抜くと出てしまうのだ。

これはアリアも同じ。


「次の洞窟コウモリケイブバットさん、5匹だよっ! 場所は2番目の曲がり角右先20腕40m。いっくよ~!」


「わかった! 頑張るぞい」


こんな感じで。


これは『実況! アドストリジェン迷宮ダンジョン攻略』の録音でこんな喋り方をしてしまったせいだ。

決して私達の思考回路がレナード語の世界に染まってしまったからではない。


絶対、多分、きっと。


(EOF)

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