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「レオ王国の小さな太陽ルイス・レオ王太子殿下に、イザベラ・バーグがお目にかかります。ルイ王子、会いたかったです。色々とサポートありがとうございます」
カルロスと私がバーグ公爵邸に到着すると、兄ルイスとルイ王子が待っていた。
14歳になった兄ルイスは淫猥な雰囲気を纏っている、最近はこういう男子が流行りなのだろうか。
私はこの世界が物語で、重要人物だけが物語が正常に機能するための強制力を受け不自然な行動をすると考えた。
その重要人物が兄ルイスなのだが、私がお色気より正統派を好むので作家の趣味が分からない。
兄ルイスは私が彼に王族向けの挨拶をしたので驚いている。
ここは、屋外だ常に360度見られていることを意識しなければならない。
これより私は兄ルイスをルイ王子の希望通りルイス王太子として扱う。
ルイ王子は順調に正統派王子の道を歩んでいることがわかった、背も伸びで太陽の光で反射する金髪がキラキラと光っている。
彼は、外見も中身も私が求め続けた理想の相手にこれからも成長していくだろう。
「これからの作戦会議をします。カルロスも仲間に加わりました。さあ、移動しますよ」
私が仕切ることに文句はあるだろうが、私は彼らよりずっと年上だ。
まずは、私を信じてついてきて欲しい。
私は、人払いをして個室に移動した。
「まずは婚活パーティーを投げ出したことと、突然逃亡したことを謝罪させてください。全て私の本物のイザベラに対する妬みが原因です。そして、王太子殿下とルイ王子は私の中身が異世界の39歳だということをいくら言っても信じていませんね。イザベラが周囲から無視され、現実逃避でもしてると思われてましたか?ここは1年8ヶ月私と寝食を共にしたカルロスが、私の正体を異世界の39歳珠子だと確信してくれているので彼からご説明を頂いてください」
私は謝罪と共に最初から正体をバラしているにも関わらず、いつまでも信じようとしない兄ルイスとルイ王子をカルロスに託した。
ルイ王子が私を長期に渡り託すくらい信用している、カルロスの証言なら信じてもらえると思ったのだ。
「珠子様、最初から正直に教えて頂いていたのに信用せず申し訳ございませんでした」
謝罪してくるルイ王子に、私は彼が本物のイザベラを愛していないことを悟った。
本当にイザベラを愛していたら、イザベラを返して欲しいと泣き崩れるはずだ。
「ルイ王子、39歳珠子はあなたを愛しています。私は39年間、男性の心を掴んだことがないので、どうしたらルイ王子の心を得られるか分かりません。これから1年、私はルイ王子と距離を置く予定です。これはイザベラの状況を好転させる為に必ず必要なことです。距離を置きますが、私があなたを想っていることは忘れないでください」
ルイ王子がイザベラの側にいることは、周りから嫉妬を受けかねない。
彼に相応しいと周りがイザベラを見るようになるまでは接近は避けた方が良い。
「突然、異世界から転生して一番傷ついているのは珠子様ですよね。僕は珠子様の心を守ることが一番大切です」
やはり弱者に寄り添う姿勢を崩さないのがルイ王子だ。
「ルイ王子、一番傷ついているのはルイス王太子殿下です。私はこの世界を物語の世界だと思っていています。その物語の強制力を受けて、苦しんでいるのが殿下です。なぜ私がそんな結論に至ったかはカルロスから説明を頂いてください。そしてルイ王子、私はあなたが私を真夜中に山奥に捨ててもポラリスを頼りに淡々と下山してくるメンタルを持っています。そのため守られたいような繊細な心は持ち合わせていません。突然、逃亡して心の弱さを見せたように思われていますが、あの逃亡は私の強い妬みがさせたものです」
カルロスに私がなぜこの世界を物語だと思ったかを説明してもらうと、ルイ王子は私に憐れむような目で見てきた。
私が自分を脇役だと思って生きてきたことが、主人公属性の彼にはショックだったのだろうか。
「珠子の言うとおりだ。なぜだか俺は7歳くらいから、どれだけ気をつけても乱暴な言葉遣いしかできない。ルイの婚約者だと分かっているのに、イザベラへの恋心も抑えられなくなるんだ。この抑えられないような衝動が恋ではなく、強制力というものなのか?」
突然、堰を切ったように話し出す兄ルイスは苦しそうだった。
私の予想通りこの世界は物語で兄ルイスは物語が正常に進むために強制力を受けている。
私は、主人公になりたいと思っていたけれど、主人公が一番苦しそうだ。
王宮に住んでいた時、しょっちゅう兄ルイスは部屋にこもっていた。
きっとあれは、イザベラに対する恋心を必死に抑えようとしていたのだ。