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#歳の差
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はあーっと大きくため息をついてから、類は拘束していた結衣の手首から手を離した。
結衣が恐る恐る起き上がると、類は少し距離を置いて項垂れる。それから、顔を両手で覆った。
「……そんな事言われたらどうしようもなくなるだろ。類に、俺に幻滅するなんてそんな事言われたら……幻滅なんてされたくない。ルシエルが推し変されなくても、類が幻滅されること自体嫌だ」
「類くん……」
類は顔をあげて結衣を見る。その顔は今にも泣きそうなほど悲しげだ。
「あんなことして、本当にごめん。いくら我を忘れるくらいだったからって、あんなことするのは確かに間違ってる。最低だ、どうしよう、どうしたら結衣さんは許してくれる?俺、他の人たちにはどんなに嫌われても何ともおもわないけど、結衣さんにだけは嫌われたくない」
懇願するように言う類に、結衣は静かに首を振った。
「確かに類くんがしたことは酷いと思った。でも、こうしてちゃんと謝ってくれてるし、私も、木田さんと二人きりってわかった時点で類くんに言うべきだった。もっと類くんの気持ちを考えるべきだったよね。ごめん」
結衣がそう言った瞬間、類は結衣をきつく抱きしめる。
「本当に、どうにかなりそうだった。あいつと……木田さんと二人きりでいるなんて。ルシエルも類もどっちも本当に心の底からどうしようもない、どうしていいかわからない感情が渦巻いておかしくなりそう」
ぎゅうっと類は結衣を抱きしめる力を強くする。それから、少し体を離して結衣の顔を覗き込むと、スリ、と頬を摺り寄せた。
「そういえば、類くんはいつから木田さんがエイルの生まれ変わりだってわかってたの?」
結衣がふと疑問をぶつけた。木田がエイルの生まれ変わりだということも、ルシエルの怒りの原因のひとつだ。結衣の疑問に、類は頬を離して心底嫌そうな顔をする。
「ああ、それは顔合わせした瞬間だよ。はっきりとエイルだとわかった。何を根拠にと言われると難しいけど、たぶん向こうも同じだと思う」
(そういう、ものなんだ?それじゃ木田さんもあの時もう類くんがルシエル様だってわかってたんだ)
「ルシエルがエイルをそもそも嫌いだからエイルが結衣さんに近づいたことに怒っているけど、それだけじゃない。俺は……類は結衣さんと木田さんの仲がよさそうなことが気になって仕方ないんだ」
類はムッとしながら言葉を続ける。
「木田さんは結衣さんが新人の頃の教育係だし、二人が親しいのは当然だと思う。木田さんが結衣さんを可愛がるのもわかる。……わかるけど、やっぱりなんかむかむかするというか、気に食わないというか……こんな気持ち、大人げないってわかってるけど」
「焼きもち、妬いてくれたんだ?」
類の言葉に、結衣の心はなんだかこそばゆくなる。あんなに他人、特に女性にはかなりの塩対応な類が、自分にはこんなにも心を寄せて嫉妬してくれている。その事実に、結衣は胸がきゅんとして愛おしさが溢れ出るのが止められない。
「結衣さんは感じない気持ちかもしれないけど……」
「え?どうしてそう思うの?」
意外な言葉に、結衣が首をかたむけると、類は不服そうな顔でぼそりと呟く。
「だって、俺が他の女性社員と話をしてても別に妬かないでしょ?嫉妬されたことないし」
(ええ?嫉妬されたいの?そういうの、嫌がりそうなタイプだと思ってたのに)
類の意外な一面に、結衣は目をおっことしそうなほど丸くしてから、フフッと嬉しそうに笑う。
「だって、類くん他の女性社員さんたちにはものすごい塩対応でしょ?類くんが女性苦手なの知ってるし。でも、私だって嫉妬しないわけじゃないよ。類くん、めちゃめちゃモテるからいつも気が気じゃないし、私なんかより魅力的な人にあっという間に獲られちゃうんじゃないかっていつも不安になる」
眉を下げて、結衣は少し悲し気に微笑んだ。それを見た類は両目を大きく見開く。
「でも、そんなこと思ってもどうにもならないし、獲られないように私は私を頑張らなきゃって思ってるよ。それに、類くんは重いの苦手だろうなって思ってたから、そういうの口にしちゃいけないと思ってた」
結衣の言葉に、類は両手で顔を覆ってううーっとうめいた。
「だめだ、結衣さんが可愛すぎる、どうして俺の最愛の人はこんなにいじらしいんだよ」
「る、類くん?」
はあーっと大きく息を吐くと、類は顔を覆っていた両手で結衣の両肩を掴む。
「結衣さんもちゃんと嫉妬して不安になってくれてたんだね。俺だけの気持ちが重いわけじゃなかったんだ。よかった」
心底嬉しいといわんばかりの顔で類は微笑む。
(類くん、いつもはあんなにかっこいいのに、なんだか可愛い)
そんな風に思っていると、急に類は可愛い微笑みを無くして真剣な顔になる。その瞳にはなにかメラメラと燃えるような熱さがあり、急に男の顔になる類に結衣の心臓は大きく跳ね上がった。
「ねえ、木田さんに本当にあれ以上変なことされてない?」
「う、うん。本当にあれだけだよ」
結衣がドキドキしながらそう答えると、類は結衣の片手を取って唇を寄せた。
「だったら、上書きさせて。木田さんにされたことなんか全部忘れて俺だけのことを感じてほしい。木田さんにされたこと以上のことももちろんするよ。ちゃんと同意のうえで、上書きしたい」
類の瞳は熱い欲を含むようにドロリとしていて、見るだけで溶かされてしまいそうだ。結衣が顔を赤らめながら小さく頷くと、類は嬉しそうに口角を上げてから、ゆっくりと結衣をベッドへ押し倒した。