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街も見つかったことだし、これで暮らしはどうにかなるだろう。
……この二人の獣人さえいなければ。
本当に厄介な奴らだ。
歩いてる最中でもずっとこれだ。
「おい!俺が湊と一緒に住むからな!!」
「いや、当然俺だろう」
どっちもお断りしたいです。
「そういやお前、名前なんだよ!」
レオが黒狼に食いつく。
黒い狼は静かに胸に手を当て、誇らしげに言った。
「……俺はロウだ」
(名前、カッコよ……いや、関係ない!)
はぁ……この先、毎日ケンカしそうで頭が痛い。
「とりあえず俺は宿を探すから。
お前らは……ついてくんなよ。絶対だぞ」
そう念を押して歩き出した。
が、数秒で肩に重みがかかる。
「湊、一緒に行こうぜ〜!」
「俺が護衛につく。問題ない」
ほんと、問題しかないから!!
(……スキル“人外友好”。
便利じゃなくて、人生ハードモードの間違いじゃね?)
俺は深いため息をついて、空を見上げた。
雲ひとつない青空が恨めしい。
ーーその後、やっとも思いで宿を見つけた
はぁ、こいつらのせいで余計な体力使ってしまった。
「湊!疲れてる場合じゃないぞ!」
「その通りだ、早く行かなければ」
……お前らが言うセリフではない。
いつまでも呑気なこと……。
「じゃあ入るぞ…」
ドアを開けようとした瞬間、レオとロウが同時に口を開く。
「ダメダメ!!危ないよ!
襲われたらどうすんの!?」
お前のせいでな…。
「そうだ、俺たちが守らなければ…!」
ロウが真顔で前に出て、ドアに手をかける。
いやだから、お前たちが原因なんだよ……。
「わかった!俺が先に入って異常がないか確かめてくる!」
レオが胸を叩き、ドアを──
バァン!!
「いっ……!?誰だ!!」
中では、エプロン姿の女将さんが
大きなお玉 を構えていた。
「モンスターかと思ったじゃないかぁぁ!!」
(……まぁ確かに、見た目はゴツい狼……)
レオは尻尾をピタリと止めて固まる。
ロウは静かに俺の前に立ち、低く唸る。
「湊に手を出すな」
「違う違う違う!!宿の人だから!!!」
俺は大急ぎで二人の間に割り込んだ。
女将さんは俺を見て、ふと表情を緩める。
「……あら。あんた、なんだか可愛い子だねぇ」
じろり、と上から下まで舐めるような視線。
(うわっ……まただよ。絶対スキルのせいだろ)
そして──
「部屋、空いてるよ。
あんた…うちに泊まりな」
女将さんの後ろで、レオとロウが同時に立ち上がる。
「ダメだ!!」
「湊は俺たちと同室だ!」
(……ですよねぇぇぇ!!!)
どうやら、今日も平和に寝られそうにない。
とほほ……。