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柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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柘榴とAI

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「それでは、ちょっとだけ自然の中で訓練してみましょう。ちゃんと着こみましたね? マスクはしましたね? 花粉症が酷い人は居ませんね? 整えてる場所ですが、如何せんスギ林なので。それでは、行ってみましょうか」
「「「はいっ!」」」
三日目の午後、私達は森の入り口程度の場所に来ていた。
どうやら子供達の合宿は昨日までだったらしく、今日の朝には皆元気に帰っていった。
これを見送ってから、午前中は道場で稽古。
今日だけは私も向こうに参加して、近接格闘術を教えてもらえた。
皆と比べたら、凄くゆっくりレクチャーされている感じだったけど。
そんな経験をしてから、午後になったら……夏だけど結構厚着で近くの山へ。
何でもここ、10の所有している山なんだとか。
色々と、凄いよね。
田舎の人は山を持ってるーみたいな話は聞いた事があったけど、本当に土地として持ってるんだ。
都内だったら、絶対考えられない規模だよ。
そんな訳で、何だかサバイバルゲームにでも参加出来そうな格好で参上した訳だが。
「皆さんが夜、自主的にやっていた訓練内容は知っております。実に勉強熱心で、とてもとても素晴らしい。このまま本格的な暗殺術なども教えたい所なのですが……やはり、身になる物を伸ばして帰って頂きたいと思いまして。夜やっている“アレ”を、大自然の中でやってみましょうか」
「…………え?」
思わず、唖然としてしまった。
待って、待ってください。
人工物と自然の中じゃ、難易度が違い過ぎます。
“あって当然”のフィールドでさえ、風一つでイレギュラーな音を出す物が多過ぎるのだ。
何より特徴が少なすぎる、何処を見渡しても同じに見えるのが、森というもの。
周囲にはとにかく木、それだけ。
コレを視覚情報で記憶、フィールドとして頭の中で構築しろって……ちょっと、厳しくない?
などと思っている内に、楽しそうに笑う彼はズンズン進んで行き。
やがて立ち止まったかと思えば。
「では、やはりまずは5分。目で覚えてみましょうか」
ということで、いつも通り5分間見つめるだけの作業に。
とはいえ、この意味も理解している面々が集まっている訳で。
「きゅ、急に難易度高くねぇか? コレを頭に叩き込むのか?」
グレーさん、早くも弱音。
でも気持ちは分かる、私も同じ心境なので。
「ぐぬぬぬぬっ! 大丈夫だ、シロを見つけた時の感覚を思い出せぇぇぇ……まずは目で現場を覚える。5分もあるんだ、スプリンターにとっては長すぎる時間だ……」
出っ歯さん、目が充血する勢いで必死。
でも二人共凄く真剣に取り組んでいるのが分かった。
だからこそ、私だって……なんて思った所で。
反対側に居る二人が、やけに静かな事に気が付いた。
どうしても気になってしまい、チラッと視線を向けてみると。
「「…………」」
ナナさん、凄く真剣だけど苦戦しているのが分かる表情。
普段笑顔しか見せないようなイメージだったのに、今だけは真剣そのもの。
“変わりたい”って、“悔しい”って言っていた言葉が本気だったのがよく分かるくらいに。
物凄く集中していた。
だが、思わずゾッと背筋が冷えた気がしたのが……黒沢君。
いったい今何を考えているのか、どう視覚情報を取り入れているのか分からないくらいに。
とても、静かだった。
身動きどころか、呼吸すら止まっているんじゃないかって程に……音が無い。
彼はスナイパーだ、なら普段からこの様子を貫いていたのかも。
そんな想像は出来るけど、やっぱり何と言うか。
この人には、私では絶対辿り着けない何かを持っているんじゃないかって。
そう思わせる程の集中力を見せ、目の前の光景を“情報”として暗記しているみたいだった。
わ、私も頑張らないと!
今一度正面を向き直り、景色に集中していると。
「5分です。振り返って、反対側も覚えましょう」
も、もう5分経ったの!?
なんて思ってしまったが、師範からそう言われてしまえば仕方ない。
振り返ってから、再び同じ時間反対側を眺めていると。
「また5分経ちました。では皆様、目を閉じて下さい。そして……よく“聞いて”みましょう」
瞼を下ろし、視界は完全なる暗闇へと変貌した。
やがて聞こえてくるのは、背後からガサガサという何者かが動く音。
そして。
「良いですか? これから私の位置を特定して頂きます。目を瞑ったまま振り返り、ここだという所に指を差して下さい。その場で結構ですから、私の居る方向を見つけて下さい。但し、正確に。直線で、間違いなく私を捉えて下さい。皆さんがやっているゲームでは、銃を使います。弾丸は、基本的に真っすぐにしか飛びませんから」
彼の声が、聞こえて来る。
しかしながら、今は森の中。
庭でやっていた時と比べれば、ノイズが多い。
木の葉が擦れる音、木々を風が抜ける音。
おそらく10が歩いているだろう音が……二つ?
あれ? 何か変だ。
「慣れて来ている者程、混乱する筈です。しかし相手が“こういう事”をしてきた場合、一緒に攻撃は出来ませんよね? 両手に武器を持とうと、視線はどちらかを先に捉えるものです。もしもハズレを引けば、その分反応が遅れてしまう」
デコイ、という事で良いんだろう。
もしかしたら対戦中、暗闇の中で聞えて来た音の中には、こういうのも含まれていたのかもしれない。
だとしたら、本当に凄い。
相手はアレだけとんでもない動きをして、更には圧倒的な実力を見せつけて来たのに。
こんな細かい所でも、敵を混乱させようとしていたという証明なのだから。
「…………っ」
集中、集中しろ。
人間の耳って、以外と“雑”なのだ。
対象に向かって顔を向けなければ、正確に捉えられない。
むしろ視覚外の相手が、明後日の方向に向かって声を発すれば……音の反響で平気で勘違いする生物なのだ。
だからこそ、そういうミスも考慮して“本物”を探す。
簡単に思えて、凄く難しい行為だというのはここ最近で理解した。
部屋の中でスマホが鳴ったけど、何処にあるのか分からない……みたいな。
よくあると言われるその現象。
簡単に言えば、あの時点で駄目なのだ。
音がした瞬間、音の発生源に気が付けるくらいじゃないと、お話にならない。
探している僅かな時間に向こうから銃弾が飛んで来る、そういう世界を生き残ろうとしているプレイヤーなのだから。
「では、準備は良いですか? 私はここです。目を閉じたまま、指さしてみましょう。はい、どうぞ」
私の中で、一番確率が高いと思われるポイントに向かって……人差し指を向けた。
もしもコレで明後日の方向を向いていた場合、私は生き残れなかった事を意味する。
緊張しながら、ゆっくりと瞼を開けてみると。
「白川さん、黒沢君、小鳥遊さん……お見事です。残るお二人は、ちょっと囮の音に注意を引かれ過ぎましたね」
視界の先には、指先に釣り糸を引っかけたテンが……木の枝をクイクイッと軽く引っ張っている姿。
しかしその距離は、人間が二人分くらい離れた位置。
出っ歯さんとグレーさんは見事にそちらを指さしており。
「ちくしょぉぉぉ! 引っかかったぁぁ!」
「マジですかぁ! くっそ、悔しっ!」
「はっはっは。しかしこれだけ絞りこめただけでも、十分に成長してますよ? 最初の夜は、全く関係ない方向に意識が向いていましたから」
なんて、彼は二人を褒めていたが。
彼の位置を特定した私達三人の中で、ナナさんだけは悔しそうに視線を逸らしてから。
「私……ちょっとだけズレてました」
「いえいえいえ、だとしても素晴らしい進歩です。自信を持ってください」
「……はい。けど……数ミリズレても、弾は当たらないので」
此方としては、合っていて良かったぁなんてホッと胸を撫で下ろしてしまう様な状況で。
彼女だけは、本気で悔しがっている御様子。
そんなナナさんに近付いたテンは、微笑みながらポスッと頭の上に掌を置いて。
「しかし、進歩です。まずはご自分を褒める癖を付けなさい。貴女は少々、自分に厳し過ぎる」
「……でも」
「であれば代わりに私が褒めましょう、良く出来ました。貴女はたった数日で成長した、凄い人です。この言葉だけは疑問を抱かず、結果として受け入れて下さい」
「っ! ……はい、分かりました」
そんな会話をしてから、暫く俯いたナナさんは。
パッと顔を上げて、いつもの笑顔。
「よく出来ました、帰ったら美味しい物を食べましょうか」
「はいっ! “先生”!」
よかった、普段通りのナナさんだ。
というのと、その“先生”というの……本当に、同意。
この合宿に参加してから、完全にtimelimit:10が“先生”ってイメージに固定されてしまった。
もしくは、師匠。
精神科医であるsecondとはまた違った意味で、尊敬できる凄い人、先生。
何と言うか……たった数日で、凄い事を教わっている気がしてならないけど。
「そして、黒沢君……結構、吹っ切れましたか? 良いですね、その姿勢は。もっと自信を持ちなさい」
「はい……やっぱ、格好付けたいんで」
「えぇ、何よりです。男児、強くあれ。いつの時代でも、男とは無理にでも胸を張る生き物ですから」
よく分からないけど、黒沢君は一番褒められているって事だけは分かった。
私もその後一応褒めて貰ったけど……何と言うか。
他の皆と比べて、子供達と接する時みたいな対応だった気がする。
何故だ、結構頑張ったのに。
コメント
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第157話、読み終えました!森の中での訓練、すごく臨場感があって、ページをめくる手が止まらなかったです。特に「目を閉じて聞く」シーン、反響やデコイの音に惑わされる心理描写が細かくて、自分も一緒に集中している気持ちになりました。ナナさんの真剣な表情や、黒沢君の静かな集中力が対照的で、一人ひとりの成長が丁寧に描かれているのが好きです。テンさんの「先生」呼び、自然に出てきたのがぐっときました。次回も楽しみにしてますね🌷