闇いずリル

ここでならきっと、僕は僕になれる。

さあ、見せてくれ。

僕のすべてをさらけ出してくれ。……これが君の見ている景色なんだね。

どうだい？ 綺麗なものだろう。……ああ、君にも見えるかい？ いいよ、遠慮しないで。……もっと近くに来ればいいじゃないか。

ほら、手を伸ばしても届かないくらいの距離なんて、 本当は大したことじゃないんだよ。

だって君はそこにいるし、僕はここにいる。

たったそれだけのことなんだから。……ほら、こっちへおいで。

怖くなんかないってば。……そうだ！ じゃあこうしよう。

こうやって手をつないで歩けば安心だよ。

うん、これで大丈夫だね。

ふぅん……君はこういうことに興味があったんだね。

まぁ、男の子だし当然かな。……お姉さんに任せなさい。

こんなこともあろうかと思って、いろいろ準備してあるんだから。ほら、これなんてどう？ あなたにぴったりだと思うんだけど。……やっぱりダメかしら。

えぇっ！どうして！？ ちゃんとした服屋さんで買ったんだよ。……ちょっとお値段は高いけどね。

それにさぁ、 せっかくのデートなんだし、もっとオシャレしようよぉ。

ん～……そっかぁ。

じゃあ仕方ないかぁ。……うん、分かったよ。

でもさ、また来るね！ あの子にも会えるといいけど。

だって、あんな風に泣いている人を放っておくなんて出来ないもん。……えっと、あの子はどんな名前だったっけ？……ああ、思い出せないや。

まあいっか。……んーと、そうだねぇ…………よし決めた！

「キミ」って呼ぶことにする！ いいよね？ じゃあ行ってくるね、「キミ」！ 元気出していこうね！……えへへぇ、なんか照れるなぁ。

あっ、そういえば自己紹介がまだだったよね。

あたしの名前は、リリスっていうんだよ。

よろしくね。……そっちの子たちは友達かな？ みんな仲良しさんだね。

良かったら一緒に遊ばないか……？ きっと楽しいよ。

ほら、こっちへおいで！ ここはいいところだよ。

誰も傷つけたりしないし、 君を傷つけたりなんか絶対にさせない。

ずっとここにいれば良いんだよ。

さぁ……お友達になろう。

大丈夫。

僕は君の味方だよ。

君が僕を必要としてくれるなら、 いつまでも側にいるよ。

君は僕のことをどう思っているかな？ 嫌いじゃないよね？ そうだといいんだけどね。

ねぇ……お願いだから、 僕を見てくれないかな？ もっと笑って欲しいんだ。

君が笑顔を見せてくれたら、 僕はそれだけで幸せになれるから……。

ねぇ……そしたら……

僕にも見せて欲しいんだ。

君だけの幸せな顔を……。

あぁ……また泣いてるのかい？ どうして泣かないでいられる？ こんなにも悲しいことが溢れているというのに……。……それでも君は笑っているんだね。

いいんだよ、無理をしなくても。

君だって本当は泣きたいはずだ。

そうだよね、うん、わかるよ。

大丈夫だよ。……僕だけは君のそばにいるからさ。……どんなことがあっても離れることなんてしない。……ずっと一緒だよ。

約束しよう。……えっ？ そんなことを言われても困るって？……どうすればいいっていうんだい？ 僕はただ、君を守りたかっただけなんだ。……それだけだったのに。……本当に、それだけしかできなかったのかな。……ねぇ、教えてくれないか？……僕は一体何を間違えたんだい？……わからない。……わからないけど、ひとつ言えることがある。……それは、今の僕のしていることは間違っているということ。

僕はこれから先、もっと多くの間違いを犯してしまうだろう。……きっと後悔することになると思う。……だけど、それで良いと思っているんだ。……これで良かったと思ってしまう自分がいる。……結局僕は、自分の欲望のために動いているに過ぎない。……それを自覚していながら止められない。……止めるつもりもない。

これが、僕の罪であり罰でもあるのだと思うから。

たとえそれが、取り返しのつかない過ちであったとしても……。……君を不幸にするだけのものであったのだとしても……。