「……香津美が怖いのなら止めるか?」
涙を流してしまった私をみて、聖壱さんが確認したのはそれだけだった。違う、聖壱さんが怖いわけじゃない。私は自分が知らなかった体の反応と変化に戸惑っているだけなの。
「そうじゃない、怖くないから止めないで……」
私は腕を伸ばし自ら聖壱さんを求めた。私にはこれから先もこの人しかいない、結ばれるのならこうして私だけを見てくれている今が良い。
「分かった、お前が泣いてももう止めてやらない」
そう言うと聖壱さんは私から最後の一枚を剥ぎ取り、長い指で直接その場所に触れた。クチュ……という水音とともに、ぬるぬると動かされる指先。今までよりもっと強いその快感に身体が跳ねる。
「あっ……やあっ…ぁんんっ……やめっ……!」
聖壱さんの指は私も知らなかった感じる部分を探し出し執拗に攻めていく。奥に指が入れらて中を掻き回されると身体がビクビクと震え出した。
「ダメっ……へんなのっ! お願い、聖壱さん……止めてぇ……!」
身体の奥から湧き上がる不思議な感覚に、私は必死で聖壱さんを止めようとしたのだけれど……
「いいぜ、香津美。先に一回イっておけ」
イく? そう尋ねたかったけれどそんな時間も聖壱さんは与えてくれず、私の敏感な場所に触れる指の動きを早めてしまった。
「ぁ、あ、あっ……やああっ!」
私は聖壱さんの腕の中、身体を小刻みに震わせて啼いた。
それは私が初めて経験する絶頂だったのだけど……
「何で不満そうな顔をしている?」
そうね、聖壱さんはそう思うかもしれないけれど……私は一人だけ翻弄され乱されたのよ? 貴方はまだシャツも脱いでいないのに。
「私は聖壱さんを満足させれてないわ。私だけが先に気持ち良くなってしまって……」
そう言ってジッと聖壱さんを睨めば、彼は困ったように笑って乱れた髪をクシャリとかきあげてみせる。その少年のような笑顔にこれ以上の文句も言えなくて。
……本当は分かってる、さっきの行為すべてが私の為だって事は。聖壱さんは抱き合う事に慣れていない私の緊張をほぐしてくれたんだって。
だから私も何か出来る事を頑張らなきゃいけないと思った。
聖壱さんのシャツに手を伸ばすと、慣れない手つきで彼のシャツのボタンを外していく。緊張で手が震えてしまうから時間がかかってしまったけれど、私は彼から白いシャツを奪い取ることに成功したの。
私がシャツを脱がすと、今度は聖壱さんがタンクトップを自分で脱いだ。健康的な肌色、鍛えられたその肉体に思わず見惚れてしまう。
「香津美。もう覚悟、出来てるか?」
彼だって早く私を抱きたいはずなのに、まだ私の事を考えてくれる。契約結婚の話を持ち掛けて来た時は「なんて男だ」と思ったけれど、今は一番愛しい人になった。
「とっくに出来てるに決まっているでしょ。まだ私を待たせるつもりなの?」
本当は心臓がバクバク言って今にも飛び出しそうだけど、そんなの素直に教えたくない。この強気な性格は絶対に変えられないと思うわ。
「香津美のそういう強気な性格、本当に堪らない」
そう言うと聖壱さんは獲物を狩る肉食獣のように鋭い眼つきで、私の身体を動けなくしてしまうの。強気な私の発言は逆効果だったみたいね。
私の上に覆いかぶさった聖壱さんが、そっと私の脚を開かせる……想像以上に恥ずかしい体勢に、私はギュッと目を瞑ってしまったの。
聖壱さんの指が内股をなぞり、私の身体が彼の事を受け入れる準備が出来ているかどうかを確かめている。
「香津美、目を開けろ。初めてはお互いの顔を見て抱き合いたい……」
その言葉にそっと瞼を開けると、聖壱さんは満足そうに微笑むと私の奥へ自分の欲望を宛てがった。
「いっ……!」
我慢出来ると思っていたのに、彼の熱を受け入れるのは想像以上の痛みがあった。私、今きっととても酷い顔をしていると思う。それでも聖壱さんが私の奥へとゆっくり入って来ることに喜びも感じていて……
「香津美、身体は辛くないか?」
「少し辛いけど、とても嬉しいわ」
今の自分の本当の気持ち、いつもみたいに強がらず素直に言ったの。今だけ彼に甘えたかったのかもしれない、なのに聖壱さんは……
「悪い、これ以上優しく出来ない……!」
そう言うと彼は、私の返事も待たずに抽送を始めたの。初めて彼を受け入れたばかりの私には、彼の熱はまだ苦しくてすぐに気持ちいいと感じることは出来なかった。
それでも聖壱さんの私を見る熱い眼差し、肌に触れる指先を全身で受け止めれば身体の奥からだんだん熱くなっていくようで……
彼を受け入れた奥がジンジンと熱い。彼の動きに少しでも違う反応を見せれば、聖壱さんはその場所をしつこく刺激してくる。
少しずつ緊張が解れ始めると、彼を受け入れている場所もゾクンとした快感がこみあげてくるようになっていく。
ゆっくり腰を動かしたかと思えば、今度は早く。浅い場所を突いたと思えば次はずっと奥深くまで……激しく揺らされて思わず聖壱さんの背中に爪を立てる。彼の背中に傷を付けながら私は彼から与えられる快感に耐えた。
「香津美、香津美……愛してる!」
切羽詰まったような聖壱さんの声、だけどその声がたまらなく色っぽいと感じた。
彼が私の中でこれほどの快感を得ている事が、私は堪らなく嬉しかった。これは私達が愛し合っているからこそ得られる快感なのだと。
「私もっ……! 私も聖壱さんだけだから……あ、ああっ!」
聖壱さんと私の熱が何度もぶつかって……今度は私の知らない世界へと連れて行かれるような気がしていた。
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