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【長編小説/コヒルガオより】




「え、雨?」

「わ、本当だ。」


今日は珍しく仕事がミスなくスムーズに終わり、元貴とどこかでご飯でも食べに行こうと言う事になったのに、頬に雨粒を感じたと思いきや、あっという間に目の前の視界を奪う程の雨が降り、雨宿りする間もなく頭のてっぺんから足のつま先まで全身ずぶ濡れになってしまった。

こうなってしまっては、食事どころではなく、今更雨宿りしたところでずぶ濡れになった状況は変わらない。

どうしたものかと考えあぐねいていると、元貴が顔に張り付く髪の毛を鬱陶しそうにかき上げながら、口をパクパクさせた。



「……の……こ。」


雨が地面に叩きつける音で、声が全く聞こえず、僕は首を傾げながら聞き返す。

すると、元貴は僕の肩に手を掛け、少し背伸びをして、僕の耳に口を近づけた。



「ぼくの家行こ。」







「お邪魔します。」

「ちょっと待って、このまま入ると部屋濡れちゃうから…」


そう言って、元貴はそのまま玄関で着ていたYシャツのボタンを外し始めた。

雨の中では気付かなかったけど、雨で濡れたYシャツが元貴の白い肌に張り付いている様がとてもいやらしくて、僕は目が離せなくなってしまった。


元貴と恋人になってから、早くも1ヶ月が経とうとしている。

付き合い初めてから既に2回、ここには泊まりに来ているけど、実はまだ元貴とキス以上の事は出来ていない。

それは、元貴に断られたからとかそんな事ではなく、これは単純に僕の問題で、元貴の事を大事にしたい気持ちが大きすぎて一歩を踏み出す事が出来ないでいるのだ。

ただ、僕だって男な訳で、一歩を踏み出す事は出来ないにしろ、そういう欲がない訳ではなくて、ここに来る度に 自分の欲と毎回我慢を比べしていた。



「もうー、下着までグショグショなんだけど。」


元貴は張り付くYシャツに苦戦しながらも、Yシャツを脱ぎ終わると、今度はカチャカチャとベルトを外しパンツを脱ぎ始めた。

上は中に着ていたインナーまで濡れていて、 僕は元貴の胸元が目に入った瞬間、慌てて後ろを向いた。


(うわあ〜、えっちすぎるよっ。)

そう、心の中で呟きながら顔を赤くしてると、後ろからからかう様な声が聞こえてきた。



「もー、涼ちゃんは初心なんだから。」


元貴はそう言うと、濡れた僕の首筋にチュッと軽くキスをし、タオルと着替えを持ってくると言って、部屋に入っていった。



初心なのかな…

でも、元貴のあんなえっちな姿見せられたら誰だって…


僕は自分の堪え性の無さに溜息をつきながら、下を向いた。











-Continue-

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