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🛌 第二十二章:団長の隣と、絶対的独占エルヴィンの決断と、リヴァイへの報復
ハンジからの報告を受けたエルヴィンは、サクラへの「保護」を最優先事項とした。リヴァイの行動は、もはや指導者間の対立ではなく、サクラの安全を脅かす**「暴走」**だと判断した。
その日の夕刻。エルヴィンはサクラを執務室に呼び出した。リヴァイ兵士長は、エルヴィンの命令により、兵団外の遠隔地での巡回任務に就かされており、兵舎にはいなかった。
「サクラ。リヴァイ兵士長の過剰な指導は、君の精神に負担をかけている。そして、君の持つ情報の重要性は、我々が想像する以上に大きい」
エルヴィンは真剣な眼差しでサクラを見つめた。
「私は、君を一刻たりとも、私の目の届かない場所に置くことはできないと判断した。これは、人類の命運を左右する、団長としての最終決断だ」
「団長、それは…」
「今夜から、君は私の執務室に隣接する仮眠室を使う。そして、夜間は、君の安全を確保するため、私がこの部屋で執務にあたる。これは、君の持つ知識の**『戦略的隔離』**だ」
エルヴィンの提案は、公的な理由で武装されていたが、その実態は、リヴァイからサクラを完全に引き離し、自分の庇護と監視下に独占するという、明確な意図があった。
団長の仮眠室
サクラが通されたのは、執務室の奥にある小さな仮眠室だった。そこには、シンプルだが清潔なベッドが一つ置かれている。
夜が更け、エルヴィンは仮眠室の扉をわずかに開けたまま、執務室でペンを走らせていた。微かなインクの匂いと、紙の擦れる音が、サクラの部屋に届く。
サクラはベッドに入ったものの、緊張で寝付けなかった。壁一枚隔てた向こうに、人類の運命を背負うエルヴィン団長がいる。
しばらくすると、執務室から音が聞こえなくなった。エルヴィンが仮眠室に入ってきたのだ。
「サクラ。起きているのか」
「はい、団長…」
エルヴィンは、ベッドの横に立ち、サクラの顔を見下ろした。彼は、兵団の制服ではなく、白いシンプルな寝間着姿だった。彼の表情は、団長としての威厳よりも、一人の男としての疲労を滲ませていた。
「すまない。君に、このような不自由を強いてしまう。だが、君の安寧は、人類の安寧だ」
エルヴィンは、サクラの隣、ベッドのわずかな隙間に、そっと腰を下ろした。
「今夜は…私と共に寝てほしい」
サクラは驚きで体が硬直した。
「だ、団長…?」
「誤解するな、サクラ。君の体は、リヴァイが懸念するような『清潔さ』を維持しなければならない。私は、ただ**君の『存在』**を傍に感じていたいだけだ」
エルヴィンは、サクラに背を向け、ベッドに横になった。彼は、サクラに一切触れることなく、背中合わせに横たわった。
「私の耳元で、君の**『異世界の物語』**を話してくれないか。君の記憶は、私にとって、最高の鎮静剤だ」
サクラは、その孤独で重圧に苛まれた背中に、エルヴィンが抱える全ての苦悩を感じた。彼女は、静かに、自分が知る異世界の平和な物語や、未来の知識を、彼の背中に向かって語り始めた。
彼女の優しい声を聞きながら、エルヴィンは深く安堵した。サクラの体温が背中に伝わり、彼の心を満たしていく。
(リヴァイ。君は、サクラを**『身体』で独占しようとした。だが、私は、彼女を『戦略』**という名の最も深い場所で、永遠に私の傍に引きつける)
エルヴィンは、サクラの声を聞きながら、久しぶりに心の底から安らかに眠りについた。彼の夢の中には、もはや血と巨人ではなく、サクラが語る平和な異世界の光景が広がっていた。
サクラもまた、彼の大きな背中から伝わる体温と、エルヴィンの深い息遣いを感じながら、この孤独な英雄の傍で、安らかに眠りについた。
それは、人類の運命を背負う二人が、公的な理由を装って結んだ、最も親密で、最も切実な夜の契約だった。