…またここに来ると誰が予想しただろうか。
そして、なぜか明司兄妹と行動してるんだが。
「ホントに行っても何にもないぞ?」
千咒がそう言う。
「こいつが会いたいって言ってるんだ、口を挟むもんじゃねぇ。」
春千夜くんがそう言って千咒を黙らせた。
「…もうすぐ。」
俺はそう呟いて、気を入れなおした。
病室には電子音だけが鳴り響いていた。
均等な間隔で鳴り響くその音は、しばらく聞いていたら気が狂いそうだった。
そして、その機械に囲まれて、そいつは眠っていた。
俺はそっと近づく。
あの時のように、俺は髪を触った。
「…しばらく、二人で居ていいですか?」
俺は、そう明司兄妹に尋ねる。
みんなは了承してくれて、静かに部屋を出て行ってくれた。
「…ねえ、マイキー ‶ くん ” 。」
俺はそう言って、そっと彼の頬に触れる。
…触れても、起きない。
ただ、電子音が鳴り響いてるだけ。
俺は、そっと彼の鼻先にキスをした。
「東卍時代のいたずらのお返しです。」
俺はそう言って眠っている彼に笑いかけた。
…あの三人を呼びに行こう。
そう思った時だった。
服がグイっと引っ張られる。
俺は体制を崩して、マイキーのいるベッドの上に倒れた。
そして、俺が目を開けると、あの眼のマイキーがいた。
「あれで気づかないやつはいないっての。」
そう言って、マイキーは俺の頬を撫でた。
俺は目を見開く。
驚きの感情が隠せない。
キャパオーバーだって!ねえ!助けて!
「おはよう、タケミっち。」
俺は、その言葉を聞いて、久しぶりに落ち着いた。
「おはよう、マイキー。」
「よかったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
千咒がそういいながら泣く。
春千夜も、涙を堪えていた。
武臣は、心底安心した表情をしていた。
俺はと言うと…
彼を直視できない。
いや、あんなことをした後だよ?
寝てるままと思ったら起きるしさ…。
医者も「これぞ奇跡!」って言ってたし。
でも、何となく、今はいいかと思えた。
俺は彼をちらっと見る。
マイキーはこちらを見て、一回瞬きした。
…どういうこと?
とりあえず、連絡はしたからあとは人が何人来るか…。
「総長!」
…やっぱり、ココくんは来るよね。
「奇跡過ぎませんか!?」
「うん…そうだな…。」
そう言って、俺のほうを見る。
俺は、口の前に人差し指を当てて、〈黙ってて〉と合図した。
「で、どうしてんな奇跡が起きたんすか?ボス。」
「俺も分かんない。気づいたら起きた。」
「寝不足だった説。」
「「それはココ/九井。」」
「えー…。」
…息がぴったりすぎる。さすが幼少期からの付き合い(調べたからこのくらい知ってる)。
そのあとは、寝てた間の事や三天会議の結果の報告などが続いた。
「やっぱり、二人なんだね、残るのは。」
そう言って、マイキーは遠くを見つめる。
「…ねえ。」
「何?」
「あのさ…。」
そう言って、マイキーは一呼吸おいて言った。
「もう一回、マンジローって呼んで。」
「…はい?」
「二度も言わない。」
…あれは焦ってたからであって…意識はしてないのに…。
「ねえ、早く。」
マイキーはそう急かす。
俺はため息を吐いて答えた。
「…分かった…。」
「…マンジロー。」
…一気に顔が熱くなる。
こんな呼び方普段からは絶対しない。
「…じゃあ、今度はこっち来て。」
そう言って、マイキーは手招く。
俺は言われるがまま、マイキーのもとへと向かった。
ある程度距離が縮まる。もう、互いに手は届く距離だ。
彼はそれで満足するかな、と思ったが、意外な返答が返ってくる。
「…そうじゃない。」
すると、マイキーは、俺の腕を引っ張って、無理矢理距離を近づけた。
俺はベッドにダイブしてしまった。
「…全く…何するんですk…!!!!!」
顔を上げた時に、気づいた。
マイキーと…ゼロ距離…!
考えてる隙もなく、マイキーは俺の口にキスをした。
「…起こした時のお返し、な。」
そう言って、彼は俺の頭を撫でた。
「ありがとな。」
…世界一いたずらで意地悪で純粋な「ありがとう」と思った。
マイキー殺害まで あと 20日
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!