コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
北🇮🇹/幾年後
同短編集作品「迷子」から何年か経った設定です。
マァ、未成年で手を出せない存在だった(夢主)が結婚できる年齢になってニコニコしてるフェリシアーノを思い浮かべてくれれば問題ないです。
いたちゃーんがちょっと変態くさい⋯
「あの、もう少し離れてください⋯」
と。
(夢主)はいかにも困ったといった顔を浮かべた。
しかしどこか満更でもなさそうな声色なので、まだ大丈夫だな~と呑気に思ったフェリシアーノは、(夢主)の小さな手のひらを握って、軽やかなキスを送った。
するとたちまち(夢主)はほのぼのと、耳まで真っ赤に染め出して、遂には口を閉じるのだった。
「ダメかな、俺いっぱい我慢したのに⋯知ってる?未成年に手出さずに唾付けとく方法。一定の距離置きながら愛してあげるんだよ。塩っぽくて、嫌われるかも知んないのに。触れたいのに、そっちのが楽なのに、俺が耐えた意味わかる?(夢主)の未来を守る為だよ。俺のデアは俺の事助けてくれないの? 」
「でもだから、お願いを聞いてフェリシアーノさんの上に座っているのですが⋯これでは足りませんか?」
と。
今、(夢主)はどこにいるのかと言えば。
断崖絶壁の崖の上でもなければ、飛行機の中でもない。セントラルパークでも無いし、スターバックスコーヒーの窓際の席でもなかった。
彼女は、フェリシアーノの膝の上に居た。
何故こんなことになったか。これは前述の通り、〈恋人条約〉という約束事に沿った話だ。詳しくは資料の2ページに目を通して頂ければ幸いだ。
⋯マァそれは手元に無いので、要約すると
「(夢主)(以下、甲表記)が16になるまで、フェリシアーノ・ヴァルガス(以下、乙表記)は本当に我慢した。
半径1メートル以内、甲に近付かないと心に決め、誘惑を断ち切り日々を送った。乙はスキンシップが多く、パーソナルスペースが狭い男だが、児ポ禁止法とはお近付きになりたくなかったので、今まで痩せ我慢をしてきた。
その傷を癒すため、此度甲には、以下の〈恋人条約〉に則り、彼の我儘を聞いてもらうことにする。異論がなければ、以下の記名欄に氏名を記入すること。」
である。
何とも贅沢で高慢ちきな決め事だが、フェリシアーノの心労も知らずに惚れた弱みで、ベタベタ触れようとした(夢主)が悪いのだ。意味も知らぬ生娘が据え膳を披露したのが悪いのだ。
例えば3年前。思春期の色香を醸し出す(夢主)。クーラーの調節機能が壊れ、ドイツに修理を頼むが玄関先で突っぱねられ、仕方なく情で渡されたマニュアル片手に倉庫へ翻すフェリシアーノ。僅か三畳程の鉄製の箱の中。密室、男女。何も起きぬ筈がなく⋯⋯。伸びる白腕を触らず、如何に説得と脱出を試みたか。彼の苦労を、果たして貴方はわかるだろうか。
そして1年前。(夢主)に紹介され、バカンスに⋯と片田舎の温泉宿へ。小さな女将が切り盛りする寂れた山林の旅舎。誰も立ち寄らぬ離れ⋯客は彼等のみ。さて、何が起こるかは流石にもう分かっただろう。露天風呂、混浴の掟⋯⋯観光客に紛れる因習村の真実。これを一身に受けたフェリシアーノは、暫く大好きな観光を辞めた。
とマァ、大抵の呼び込みは(夢主)からだった。貞操観念が心配なら、徹底的に離れれば良いが⋯根本が優しい青年なので、彼は(夢主)から離れなかった。
そのツケが今、回ってきただけなのだ。
「そうだ、お姫様。ティラミスあるよ、俺頑張って今日のために作ったの。食べてね」
「ええ、ええ⋯頂きます。だから、降りてもよろしくて?」
「ダメ⋯⋯お前は俺の事捨てるわけ?」
「捨てない⋯被害妄想が激しい⋯」
彼女に拒否権はなかったし、提案する時間もなかった。フェリシアーノに従うことだけが、期限付きの〈恋人条約〉を守る唯一の方法なのだ。
勘違いしないで欲しいが、これはフェリシアーノが(夢主)を支配している訳では無い。(夢主)が本当に嫌なら、フェリシアーノは食い下がる。 それに元来、イタリア人は女性を敬う性質をしている。お国柄、そして化身柄で女を使いっ走ることに彼は慣れていなかった。フェリシアーノにとって、亭主関白なんぞ嘘っぱちなのだ。
だからこれは、この茶番劇は。愚かな彼女が生み出した1種の「プレイ」な訳だ。(夢主)が満更でもない態度を辞めない限り、多分このメロメロの愛は一生縛り着く枷となる。
「あーあ、俺仕合わせだ⋯今までワインとジェラート、あとピッツァかパスタソースで溺れること以外幸せってないと思ってた⋯⋯けど、(夢主)に捕まってる今だけがホントに仕合わせだ⋯⋯うん。多分そう。わかっちゃったね⋯。うーん、(夢主)ちゃんのセーノで窒息死したい⋯⋯」
「お⋯⋯気持ち悪い⋯⋯⋯⋯。」
愛を解かねば、この様だ。腐っても、呪っても愛は愛だし、純然が注がれてもそれは愛なのだ。変わらない。ただ、少し形が変わるだけなのだ⋯⋯
切