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︎︎注意⚠︎︎
・ご本人様方には一切関係がない
・捏造、妄想要素が激しい可能性あり
・特徴を捉えきれていない部分が多々あり
・恋愛要素が今後恐らくきっとほぼない
・868のBOSSたちがロスサントスに入国する以前の物語
※注意事項は今後も増えていくと思います。一旦はこれらをご了承の上、創作物をご堪能ください。
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お待たせしました、行ってらっしゃいませ〜!!
警察学校に入学したきっかけなんてもう覚えていない。人生においても特に目標なんてなかった。ただ、この先安定した収入と美味い飯、少しの娯楽さえあればいい。後、可愛い彼女がいてくれてもいいな、なんて至って普通の未来を思い描いていた。
「え、海外コース?」
「そう、卒業したら海外に派遣されるやつ。めっちゃ面白そうじゃない?」
「でも推薦されないと行けないやつやん。」
「それを2人で頑張ってみるんよ!」
「まぁ、確かにおもろそうやなぁ。」
「じゃ決まりだな!お前なら大丈夫、意外と何でも出来るし。」
「”意外と”は余計やね。」
寮の部屋が隣同士というだけなのに、半ば強引な勧誘をされる。何を血迷ったのか、俺はその誘いにまんまと乗ってしまった。これまでの平穏さに、どこか飽きが来ていたのかもしれない。でも何となく、この選択をして良かったと思った。予想の出来ない未来の選択が、ここまで俺の心をくすぐったのだから。
それからの生活に大きな変化は特になく、いつも通り真面目に、いや少し努力をした気はする。2人で頑張ろうと言った手前、自分だけダメでしたなんて、とんだ恥でしかない。毎晩反省会を開いたり、理想の未来を語り合ったり、隣人の熱意は凄かった。それに必死に食らいつけているか日々不安だったが、それはそれで毎日楽しかったし、案外気楽にやれていた。そして、待ちに待った推薦とやらは突然だった。
「音鳴、これ興味無いか。(海外コース関連の書類を貰う)」
「え、マジすか。是非やりたいです。これ他に誰が受け取りました?」
「えっと他はな……。」
俺は、やけに静かな隣人の部屋の前に立つ。当然のようにあいつは行けると思っていたため、俺だけというケースの想定をしていなかった。メンタルケアなんて慣れないことを俺がやれんのか、と思いつつ少し空いたドアを押す。
「なんで俺は─────んだ、音鳴─────取り柄がない────。(振り向いて)……え。」
「あ。」
なんて言ったのかはほとんど聞こえなかったが、とんでもないシリアスに踏み込んだことに変わりは無い。かける言葉を喉に詰まらせていると、相手の方が先に話し出す。
「俺、部屋移動するから。じゃ頑張れよ。(荷物を乱雑に抱えて出ていく)」
「ん、あぁ。」
聞こえなかった部分はそのまま放っておけばいいのに、嫌なように変換して受け取ってしまう。
(取り柄……確かになんもないよなぁ。)
自分でも痛いほど共感してしまった。気を許す程の仲だとは思っていなかったが、ついしゃがみこんでしまうほどショックを受ける。とはいえ、海外コースを今更取り下げるほどの勇気もなければ、追いかけて励ます温情も持ち合わせていない。こんな時にまで逃げを選択し、何も出来ない自分にため息をこぼす。部屋を見渡すと隣人が詰め損ねた物で溢れかえっていた。
(さっき雑に持ってってたな、こんなんじゃ次の人使えへんやん……。)
教官から教えられた他の誰かのうち、1人はこの部屋を使うと聞いていた。その彼が移動してくるまでに片付けきれるのだろうか。俺は1人現実と向き合う。
「やっとマシになったんちゃう?」
精一杯体を伸ばし、固まった筋肉と疲労を和らげる。色々な意味で整理をするのに、数日かかるとは思ってもいなかった。ここに来るであろう彼も、準備が大変だったのか今日来るらしい。運がいいのか悪いのか…とりあえず汗でへばりつくシャツを着替えようと、クローゼットへ向かう。すると、玄関の方で微かに物音がした。
(ん…誰かいるっぽい。鍵は掛けたっけか?)
そう頭で考えていても、着替える手は止まらなかった。タイミング良く空いてしまったドアの向こうで、俺を見た青髪の青年が固まっている。
「あ……、すんません間違えッ。」
「いや〜ん、変態ッッ!」
咄嗟のちょけに対応しきれなかった彼は、素早くドアを閉める。初めましてでかける言葉ではなかったか、と反省しながら俺は着替えを済ませて玄関のドアを開けた。
「冗談ですや〜ん、刃弐ランドくんよな?」
「あ、はい。刃弐ランドです。」
「俺は音鳴ミックス、隣人としてよろしく〜。」
「音鳴、隣人……?よろしくお願いします。」
「せや、前ここにおった奴が色々残しっぱなしやってん。さっき綺麗に片付け終えたから、荷解きしてもええで〜。」
「お〜ありがとうございます。」
「じゃ、またな〜。」
そう言って自室に向かいながら、手をひらひらして見せる。すると、片手に持っていた荷物が落ちそうになったので、咄嗟に持ち直す。これまで片付けた荷物と同様に、寮長室へ届けるため自室は通り過ぎた。本人に届けるのが手っ取り早いのは重々承知だが、会った時の気まづさに耐え切れるわけがない、と身の丈を考えた結果である。
(てか、刃弐くんの髪別に何も言われないんや。絶対地毛ちゃうよな、俺も早く染めとくんやった〜。)
黒い短髪をなびかせながら、逆らえない時の流れに後悔を感じた。
海外コースになったからといって、この合同演習というのは避けて通れない。何度も経験してきてこれが最後の合同演習ともなると、俺の顔つきは変わってくる。そして、いつもむさ苦しいメンバーだったのが一変、今回は女神が微笑んだ。
(いや、正しくは美女と言うべきですなァ。)
黒髪メガネという組み合わせの下に、美貌を隠くしていたのは、俺でなきゃ見逃しちゃうね。同じチームメンバーであるその”成瀬タコ”さんとは早めに合流し、軽く挨拶を交わす。
「初めまして、音鳴ミックスです。」
「あ、1番上の方っすよね。初めまして〜、成瀬タコですぅ。」
「まぁ〜そうやね!一応俺はリーダーときぃうか、経験者やひゃらねなんでお聞いへもろ…。」
「はい。本日はお日柄も良いですね、さて。」
「待て待て…俺まだ喋ってましたやん。」
「いや、一旦呂律終わってたっす。」
「ちゃいますやんちゃいますやん!」
「違くない!?ダサかった!?頼りないあまりにも。」
「ハハッ言い過ぎ言い過ぎ。」
意外と親しみやすかった成瀬さんに俺は安堵する。同時に、カッコつけようなんてらしくないことはするもんじゃないと悟った。その後も雑談を挟みつつ、ルートの確認をしていると見覚えのある青年が声をかけてきた。
「あれ、お隣さんだ。」
「おと…(ん?)え?そのイントネーションだと意味が変わってんねん。音鳴や!音鳴ミックス!!」
「あ、そこ知り合いなんだ。」
「いや、昨日会ったばっかっすね。」
「なんだ、じゃあ皆ほぼ初めましてか。私は成瀬タコって言います、よろしく〜。」
「刃弐ランドです、お願いしますっ。」
驚くほどスムーズに敵を殲滅してきた俺たちは、かなり相性がいい気がする。というか、何もかもがやりやす過ぎて逆に怖くなっている。成瀬さんのカバーは手厚く、刃弐くんは気づけば前線を張って敵を倒している。俺は、敵の位置を把握して射撃するのに精一杯だった。少しでも役に立てたらと思い、過去に得た知識を引っ張り出す。
(確か…ここの坂周辺結構キツいねんな〜。2人とも大丈夫かな。)
後ろを振り向いて声をかけてみると、成瀬さんは女の子なんでおぶってくれても…と甘えてきた。なんか大丈夫そうな気がしたので、一旦スルーして刃弐くんにも聞いてみる。集中しているのか黙って首を縦に振るだけだった。俺からすれば充分様子はおかしかったが、元々彼は大人しい。きっとこれは杞憂だろうな、と彼の返事を素直に受け取ることにした。しかし、俺は後にこの判断を後悔することになる。目的地に着いた途端、刃弐くんは倒れてしまったのだ。
幸い命に別状はなく、ただの栄養失調だった。医療室のベッドで眠る刃弐くんを前に、俺は大きなため息をこぼす。声をかけたあの時、俺はちゃんと気づいていた。虚ろな目と大量の汗、足がふらついていることから、刃弐くんが限界を迎えていることに。
(それを杞憂だとかなんとか…なにやっとんねん俺は。)
「マジで誰も悪くないっすよ。」
「うーん…、そうなんかなぁ。笑」
「はい。てか音鳴さんはもっと気楽にやるべき、別に背負わなくていいっす。」
「ハハッ励ましてくれてんのよな?ありがとう。」
「ちなみに、刃弐くんが目を覚ましたら一旦説教はしますよアタシ。」
「ェ、説教マ?」
さっきまでしていた成瀬さんとの会話を思い出す。確かに俺は、色々背負いすぎていたのかもしれないし、その〆に自分を否定することがどれほど楽なのか気づいてしまった。ちゃんと相手が悪い、と叱れる成瀬さんの強さに俺は感心する。心の底にあった気持ち悪いものが、気楽に行こうという言葉となって消化される。別に難しいことでは無い、今までもやってきたことじゃないか、と段々軽くなっていくのを感じた。
「よぉ〜〜し。どうにかなんねんこんなもん。」
小声で言ったつもりの決意は意外と大きかったようで、刃弐くんが目を覚ます。これに関しては、明らかに俺のせいだと咄嗟に手で口を覆った。