テラーノベル
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そこからは時折トニーの声を思い出すだけで、あとは曲を全身で聴きながらステップを踏んで飛び跳ね、ピタッと静止しクネクネと揺れる。
フロアを蹴り後ろへ回転したかと思えば、前へと蹴り返してターンする。
ジャンプしては足を交差させ…うん…この着地も出来るね…私……
ケガのあと関わってくれたみんな、ありがとうございます。
最後のポージングでは、感謝の気持ちで胸がいっぱいだった。
こんな気持ちが味わえるなんて…ケガが無ければ味わえなかった。
いい子ちゃん発言で誰にも言えないけれど、大音量の歓声の中で苦笑する。
第二の人生というのが本当にあるのだと感じながら、私はゆっくりと四方へ順にお辞儀をした。
「才花」「サイサイ」
ギャラリーの中から私の側まで来た兄が私を抱きしめ、緒方先生が二人を抱きしめる。
兄の方が緒方先生よりも大きいからおかしな感じだろうけど、そんなことはいいんだ。
二人が心から祝福してくれていることが伝わって来て、嬉しい。
「お兄ちゃん、先生、ありがとう。ここから始められるよ、私」
「才花…あとで…今は言葉がありません…」
「僕はサイサイを誇りに思う。期待以上の完成度だね」
「うん、ありがとうございます。で、やっぱり羅依にかなわないんだけど…もうひとつやっちゃっていい?」
「「いい」」
「結果…ダメだったら、お兄ちゃんが私の骨を拾って」
「わかりました」
「二人ともここで顔きくでしょ?10秒だけ静かにならないかな?」
「任せてください」「簡単だよ、サイサイ」
「お願いします」
二人は私を挟んで真横に立つ。
もちろん正面はあの窓の方向だ。
それから二人は…ん?
二人は……ん…?
何もしないの?
ポケットに手を突っ込んで立ってるだけだよ。
緒方さーん、小松さーんって歓声が聞こえてるでしょ?
任せてくださいって言った人と、簡単だよと言った人…ちゃんとしてよ…って……ぅおぉ…静寂が広がり始めた。
「才花、どうぞ」
「どうぞ、サイサイ」
二人が半歩下がると私は窓に向かって
「羅依、いるんでしょ?」
と普通より僅かに大きく言う。
ギャラリーの目も上へ向きざわめきが広がる中で、窓が開けられた。
キャァャァー
ィヤァー
キングー
の声が重なり合ってのすごいボリュームに、くらくらして羅依の姿がぼやけそうだ。
上半身が見えている羅依の後ろで、タクがしーっと唇に指を当てると
キャァー
何でもキャァーだね…でも何とか静かになった。
よし、10秒ね。
「羅依、フロアも曲もありがとう。気持ちは受け取った…ここまで手を貸してくれた人みんなに感謝して、私はここから始められる気がする」
「そうか」
「だから羅依、私に第二の人生の名前をちょうだい。私と結婚して」
コメント
3件
オトコマエすぎるよ才花ちゃん💕
才花ちゃん、私も言葉はないよ…👏🏻✨👏🏻✨👏🏻✨👏🏻✨👏🏻✨ お兄ちゃんのハグと、緒方先生のまたその上からハグに涙が止まりません😭 そしてそのまま無言で立ってるだけでギャラリーを静寂にさせる2人…ヤバいです✨ そしてそして才花ちゃぁ〜ん!逆プロポーズ✨カッコよ〜😭😭😭 どう?羅依!かなわないでしょ?さすが『俺好み』でしょ!!!
才花からのプロポーズ🩷🩷 第二の人生の名前をちょうだいだって😍😍