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24
あや
72
#オリキャラ
ミント
44
#創作百合
𝓐𝓴𝓪𝓻𝓲
742
…5歳の時の出来事。それは鮮明に覚えていた。
母親の耳にこびり付く甲高い怒鳴り声。
父親の理不尽な拳。暴力。
割れた酒瓶、叩き割られた鏡、引きちぎられた人形のはらわた。
全て覚えている。昨日のことのように。
「あんたなんてうまれてこなければよかった」
児童養護施設に入れられ、僕は7歳になっていた。漢字の読み書きもままならない当時の僕には難しい言葉も、今は分かる。わかってしまう。
今も昔も,地獄だと思っていた。
…あの人と会うまでは。
僕の遠い親戚の彼だけが、僕を引き取ってくれた。あまり裕福と言える暮らしではなかったが,僕には十分すぎたのだ。
…10歳ぐらいの頃。
学校が終わると,学童に行き,夕方5時ごろに帰路に着く。先生に愛想笑いを不器用に振り撒くのは疲れるし、周りの子供たちの平和ボケした、いや、平和で幸せそうな笑い声や話し声がが妙に耳にこびり付いて妬ましかった。
僕は少し暗い夕方を背に帰り道を歩く。
(北沢 202号室)
「あ、とおるさんったら、またポストに手紙入れっぱ…」
…僕は深いため息をつきながらポストに詰め込まれた手紙を取り,鍵を開け部屋に入る。
…ガチャリ
台所から包丁の音と香ばしいいい匂いが漂ってくる。とおるさんのエプロンをつけた後ろ姿が目に入る。
「…とおるさーん!ただいま」
北沢 とおる。僕の遠い親戚の26歳の社会人。
タレ目で少し目にかかる程度の前髪にタラシ顔のよわそーな男性。
とおる「おかえり!。けいちゃん!」
…南條 けいと。それが僕の名前。とおるさんからはけいちゃんって呼ばれてる。とおるさんには内緒だけど,意外と気に入ってるんだよな。
…夕飯ができた頃、僕はダイニングのテーブルの上に並べられた料理をみて目を輝かせる。とおるさんの料理は自慢したくなるほど美味しいのだ。
「「いただきまーす」」
手を合わせ箸を持ち,料理に手をつける。
ほかほかの白米と水々しい野菜、あたたかな味噌汁、素朴で深みのある焼き鮭。シンプルかつ家庭的な料理ととおるさんの明るい声が今日も僕を満たしてくれる。
とおる「けいちゃん今日も学校楽しかった?」
けいと「うん。一応。」
そっけなくスカした僕の返事にも,とおるさんは口を緩ませ安心したように笑ってくれる。その腑抜けた顔が僕は好きでたまらないのだ。
…夜も更けた頃、僕は部屋に布団を引き、とおるさんにおやすみと言って、布団の中に入る。
当たり前な幸せ。昔の僕には考え難いものだっただろう。当たり前と安心は全てとおるさんがくれた。
…照れくさいけど、僕はとおるさんが大好きで、きっととおるさんがいなければ生きていけない、というかとおるさんがいない世界で生きたくないのだ。
…ずっとこの生活が続けばいいのに、、、
けいと「あ、そういえば、上履きがもう小さいんだった…明日,言わなきゃな」
僕はとおるさんと話す口実ができて少し口を緩まして、重い瞼を閉じた。
コメント
1件
うわ、これめっちゃ胸にくる話やった……。5歳の虐待の記憶から施設暮らし、そしてとおるさんに引き取られるまでの流れ、めちゃくちゃ丁寧に描かれてる。焼き鮭と味噌汁の夕飯シーンでじわじわ温かくなったし、けいとが「とおるさんがいない世界で生きたくない」って思う気持ち、自然すぎてグッときた。この温かい日常が続きますようにって心から思うわ。続き気になる!