22 隣
『 隣…いいですか?』
自分でも分からないくらい早くその答えが口に出てしまっていた。
普通に嫌だよ
か
いや、俺もう帰るけど?
の可能性だって全然あったのに
なんでだろうね。
『 隣…いいですか?』
「いいよ」
『 え、ありがとうございます、』
普通にいいよ、って言ってくれたのは嬉しいんだけど、なんか私が納得しない。
…先生も、納得してないような顔をしてるから、
『 このあと、友達と予定あって…時間、あって…』
「あー、暇なのね」
『 …はい』
約束なんてないけど、そうやって嘘ついたら先生は納得したような顔で見てくれたから、良かったんだって、合ってるんだって思えた。
「え?座んないの?」
『 え、ほんとに?』
ちょっとあまりにもビックリしすぎてその場に立ってたらまさかの先生から「座んないの」って言ってくれた。
「別に断る理由もないし」
ニヤニヤを最大限抑えて、隣に座った。
真隣…..はさすがにちょっと気が抜けたから、1つ席を空けて座った。
あと最終章だけの例の本をだして、ページを開くと
先生がこっちを見て
「なぁ、お前その本読むの?」
って聞いてきた。だから、
『 はい、そのつもりですけど』
「絶対俺に見せないようにしろよ」
『 ふふっ、必死ですね』
「必死だろ!ふはっ」
そんなにネタバレ嫌なんだ…って思ったら、可愛く思えてくる。
「笑ってんなよ、ふふっ、生意気ー」
『 ふふっ、ごめんなさい、子供みたいだなーっと思ったらつい。』
「お前、そんな感じだっけ?もっと可愛げあった気がすんだけどー」
『 …可愛げ、、なんてないですよ。昔から』
胸がギュッて縮むけど、顔に出ないように私は、そこに必死だった。
『 飲み物買ってきますけど、先生何か欲しいですか?』
先生のコップが空になっているのに気づいて聞いてみる。
「んー、お前何飲むつもり?」
『 えっーと、いちごミルク、ですかね』
「はーー、いちごミルクはいいや、」
『 1番初めは飲んでたのに…..』
なんて、先生に聞こえないくらいの小声で言ってみた。
「やっぱいつものコーヒーでいいや」
『 はい、了解です』
「それで2つ分足りる?」
『 …..え?』
テーブルにスマホと並べて置いてある財布を手に取って、中から1000円札を私に出した。
『 いいんですか!?』
「俺の気が変わる前に早く行け」
『 はいっ!!』
先生から預かった1000円札を胸にギュウウッと抱いて、私はカフェレジに向かった。
コメント
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うわぁぁぁあ! なんかすごい情景が浮かびます!